【専門家が解説】パートナーの許可なく、コッソリDNA親子鑑定はできる?
2025.08.08
はじめに
DNA鑑定は究極の個人情報といわれる被験者のDNA情報と、家族の血縁関係に関する検査のため、依頼人のプライバシー保護がとても重要です。
被験者のDNA情報や血縁関係が他の方に知られてしまうと、取り返しのつかない大きな被害を与えてしまいます。
ここでは、検査に参加する被検者の許可を得ずに、父親と子どものDNA鑑定(DNA親子鑑定)ができるか、
もしくは奥さんに気づかれないようにお子さんがご自身の子であるか確認できるかなどDNA鑑定とプライバシーに関して説明します。
結論
父親が親権者であれば、ご自身のお子様との親子DNA鑑定を行うことは、奥さんに内緒でコッソリ検査しても法的には問題ありません。
倫理的な問題として夫婦間の信頼に関わるだけです。
しかし、母親が父親と思われる男性が、本当に子供の生物学的な父親なのかを調べるには基本的に男性の同意が必ず必要であり、
同意を得ずに行った場合、民事上の違法性が問われるリスクがあるため注意が必要です。
父親と思われる男性の検体として歯ブラシや髪の毛を使って検査する場合もありますが、
あくまでも、その「モノ」の持ち主が誰なのかが分からないという前提になります。
さらに検体として使われる 「モノ」 が盗まれたのではなく、 捨てられた 「モノ」 であれば法的な問題はないとされます。
そもそも、元の持ち主の特定ができず、許可を得ることができないケースもあります。
現時点(2025年)において、 日本には 捨てられたモノから「無断で人のDNAを採取・分析したこと」を直接処罰する刑法上の規定は存在しません。
刑事上の違法性(処罰の有無)
該当する刑事罰規定
当然のことながら、ヒトの許可なく身体組織や持ち物から勝手にDNAを抽出・解析することはできません。しかし、他人の持ち物を盗んだり、許可なく持ち出さない限り、捨てられたモノを用いてDNA解析を行うことは可能です。
例えば、父親とされる男性が捨てた割りばしや紙コップなどのゴミからDNAを勝手に取得して分析する行為自体が、直ちに窃盗罪やその他の刑事犯罪に問われることは、通常ありません。
捨てられたモノ(ゴミ)は、占有離脱物と考えられるため、物理的な「窃取」には当たらないため窃盗罪は成立しないでしょう。
また、器物損壊罪等も成立しません。
個人情報保護法上の罰則
個人情報保護法には、違反行為に対する罰則も定められていますが(同法第84条~第87条等)、
主に事業者が委員会の命令に違反した場合などに適用されるものであり、
私的行為に直接適用されるものではありません。
また、経産省ガイドライン違反もあくまで行政上の問題であって、
刑事罰ではないため、私人が個人的に捨てられたモノから他人のDNAを無断検査したことのみで刑事処罰されるケースは考えにくいのが現状です。
民法的な影響(違法性と慰謝料請求)
プライバシー権侵害と不法行為
人のDNA情報は極めてセンシティブな個人情報であるため、その取り扱いには細心の注意と本人の同意が必要となります。
たとえ、逮捕前の任意捜査では犯罪捜査で浮上した容疑者であってもDNA鑑定を強制することは難しく、遺産分割協議などに必要な法的DNA鑑定を被験者に強制することなどもできません。※1
本人(相手)の同意なくDNA鑑定のために遺伝情報を第三者(鑑定機関)へ提供する行為は、プライバシー権や人格権の侵害として不法行為(民法709条)に該当するリスクがあります。
実際に「相手に同意なくDNA鑑定を行ったのがバレて損賠請求されるなどのトラブル」が発生しています。
法律事務所に相談すると、無断で行ったDNA鑑定は違法行為とみなされ慰謝料請求などのリスクを伴うため避けるべきであるとアドバイスされます。※2
個人情報保護法との関係
最近は世界的にも個人情報保護に関する規制などがしっかりと整備されている国が多く、
国内でもDNA型などの遺伝情報は個人情報として適切に管理・保護しなければならないと法律とガイドラインなどで定められています。
経済産業省が策定した 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」でも、遺伝情報の取得・利用・第三者提供には厳格な基準が設けられ、
インフォームド・コンセント(事前の十分な説明と同意)の重要性が強調されています。
したがって、本人の同意なくパートナーの口腔上皮など身体組織を採取し、DNA情報を収集・提供する行為は許されません。
経済産業省が定めた「個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」でも、
DNA検査機関は必ず本人(検体の提供者)の同意を得ることを義務付けています。
そのためDNA鑑定機関では、被験者が誰なのかが明確に分かる身体由来の組織を用いる検査では、必ず被検者の同意書への署名を求めます。
慰謝料(損害賠償)請求の可能性
国内では父親が自分の子供とのDNA鑑定を奥さんに内緒で行うケースが多くみられますが、コッソリとDNA鑑定を行った父親に対して、
「プライバシー侵害」や「精神的苦痛」などを理由に母親が損賠賠償などの請求を行った事例はほとんどありません。
海外では、奥さんが旦那さんに内緒でお子さんとのDNA父子鑑定を行ったことがバレて、
依頼人だけではなくDNA鑑定会社に対して「母親が父親の同意なくDNA父子鑑定を行ったとして、
慰謝料・損害賠償が請求された事例がありますが、プライバシー保護をしっかりと行っている検査機関に依頼する場合は、
トラブルは発生のリスクは低いです。
ベストなのは、モノであっても解析する全ての検体の被験者を特定して、被検者本人の自筆署名を同意書にもらうことですが、
通常は家庭内で遺棄された毛髪等を利用するケースが多く、検体の取得方法による法的な問題(例えば盗難や器物損壊等)はないため、
刑事事件に発展するリスクは低いとされます。
倫理的な問題
インフォームド・コンセントと自己決定権
医療・遺伝分野では、検査の目的・方法・リスクを十分に説明し、被験者の理解と同意を得るインフォームド・コンセントが基本的倫理とされています。本人に無断でDNA鑑定を行うことは、このインフォームド・コンセントの原則違反する行為です。パートナーは自らの遺伝情報が扱われることを知らされず、自身のプライバシーや自己決定権を侵害されたことになります。倫理的観点からも、密かに相手のDNAを調べる行為は信義則に反しモラルを欠くと言えるでしょう。
家族(子ども)の福祉への配慮
無断で行う親子鑑定は、家族関係に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、慎重に行う必要があります。個人情報保護委員会のガイドラインでも「子や家族の福祉を重んじてDNA親子鑑定は行われるべき」として述べており、DNA鑑定が家族関係に与えるインパクトの大きさを踏まえ倫理的に配慮しています。
特に「父親ではない」という結論を示した場合、子どもの実父は誰なのかという問題が露呈し、子のアイデンティティや福祉にも重大な影響を与えかねません。
感情的・人間関係への影響
夫婦・パートナー関係への影響
刑事法的にも民法的にも違法性が無いことから、弁護士への法律相談においても「たとえ父親が無断でDNA鑑定を行っても、それ自体は違法とは言えないため慰謝料の支払いの必要もない」との見解が一般的です。※3
しかし、そのような確立した判例は存在しないからと言って、コッソリとDNA鑑定を行ったことがバレてしまった場合、夫婦間・カップル間の信頼関係は深刻なダメージを受けます。特に、鑑定結果が「父親ではない」ことを示した場合、その精神的衝撃は計り知れません。
長年自分の子どもと信じて愛情を注いできた相手に裏切られた形となるため、妻(パートナー女性)への信頼を失って離婚や別離を望むのは自然な感情でしょう。「妻が不貞をしていた」という事実が裏付けられた場合、不貞行為は法律上でも離婚原因になるため、夫は離婚とともに慰謝料の請求を検討することになります。※4
鑑定結果で「実子である」と確認できた場合でも、「自分に断りなくDNA鑑定を行った」という行為が重大な不信の種となります。夫(パートナー男性)としては「相手が何か後ろめたいことがあるのでは」と考え、妻(パートナー女性)は、「自分が疑われていた」と考えるかもしれません。
このように、たとえ血縁関係に問題がなかったとしても、「隠れてDNA鑑定をされた」という行為そのものに強い怒りやショックを受け、夫婦関係が悪化・破綻する可能性は十分にあります。
感情的な反応と心理的影響
男性にとって、無断でDNA鑑定を行っていたことが発覚した際の心理的影響は大きいものです。プライバシーを侵害され、裏で疑われていた事実に対する怒りや屈辱感、結果次第では、自分の子どもだと思っていた存在を失う喪失感など、複雑で深刻な感情的苦痛を味わうでしょう。女性側も、パートナーに疑われて深く傷ついた、信頼関係が崩されたなど、一度壊れてしまった絆を回復できずに離婚や別離してしまったという事例もあります。「父子関係否定」や「父子関係の肯定」といった結果に関わらず、女性は自らの不貞を疑われた、責められたと思うため、家庭崩壊の事態に直面するほど強いストレスを抱えることになります。いずれにせよ、このような出来事は夫婦間のコミュニケーションや心理的安定を著しく損ない、修復が難しい深い溝を生むことが考えられます。
おわりに
パートナーに無断でDNA親子鑑定を実施することは、法的リスクと倫理上の問題だけではなく、相手や周りの家族や親せきなどにバレてしまった場合のリスクも非常に大きいです。
日本ではこのようなトラブルを防ぐため、遺伝情報の取扱いについて厳しいプライバシー保護の枠組みが整備されており、個人情報保護のPマーク認定制度なども普及しています。
しかし、残念ながら国内ではしっかりと個人情報の保護を行っているDNA鑑定機関が少ないのが現状です。
もし親子関係に疑念が生じた場合は、相手と率直に話し合い信頼関係を保ちながら、必要であれば法的手続きを踏んで鑑定を行うことが望ましいでしょう。専門家に相談し、正当な手順で問題解決を図ることが、家族の絆を守る上で肝要です。
どうしてもコッソリとDNA鑑定を受けないといけない場合は、人生に関わる大事な検査のことが周りに漏れてしまうリスクを減らすために、検査機関の口コミだけではなく、個人情報の保護をしっかりと行っている、Pマーク認定を受けた検査機関を選定して検査を依頼しましょう。
\周りに知られずこっそり親子関係を確認/
seeDNAの安心サポート
seeDNAは、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
お腹の赤ちゃんの疾患リスクや親子の血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、遺伝子検査の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。
【専門スタッフによる無料相談】
【参考文献】
※1:刑訴法218条、225条※2:rikon.vbest.jp
※3:bengo4.com
※4:daylight-law.jp
著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発