【医師が解説】アンジェルマン症候群とは

はじめに

はじめに

出生前検査をお考えの皆様にとって、遺伝性疾患に関する正確な情報を得ることは、適切な判断をするために不可欠です。
今回はアンジェルマン症候群について基本的な知識から、症状と特徴、治療とケアまで、医師の視点から分かりやすく解説いたします。

出生前検査を検討される際の重要な情報として、ご活用ください。

基本知識

基本知識

◆アンジェルマン症候群とは何か

アンジェルマン症候群は、15番染色体の機能異常により発症する遺伝性疾患であり、難病にも指定されています。※1
重度の発達遅滞や知的障害、重度の言語障害、失調性歩行ないし四肢の振戦、頻繁な笑い・ほほ笑み・興奮等の見るからに 愉快そうな振る舞いを伴う独特の行動を特徴とします。※2

◆発症頻度と分布

アンジェルマン症候群は出生15,000人に1人程度の頻度で発生し、男女差はありません。※3
日本国内では約500~1,000人の患者さんが確認されています。※1

多くは遺伝することはありませんが、まれに家族内で発症することがあり、その場合は母親が遺伝子の保因者となるケースがあります。※3
また、同じ15番染色体領域の異常で発症するプラダー・ウィリー症候群と密接な関係がありますが、臨床症状は大きく異なります。

◆原因となる遺伝学的メカニズム

15番染色体q11-q13に位置するUBE3A遺伝子の働きが失われることで発症します※1
UBE3A遺伝子の機能喪失が起こる原因は、以下の4つの機序が知られています。※3

なお、残り10%には遺伝学的異常が同定できません※1

症状と特徴

◆神経学的症状

症状と特徴

◆行動的特徴

行動の特徴としては、容易に引き起こされる笑いがよく知られています。※1
その他に、落ち着きのなさや旺盛な好奇心、水やビニールなどキラキラしたものに対する興味がみられます。※1

◆言語・認知機能

意味のあることばを話すようになることは稀ですが、理解の発達は比較的良いとされています。※1
1〜2語であっても、それが一貫して適切な使われ方をすることは稀です。※2

◆睡眠障害

乳児期から幼児期に睡眠障害の合併が多く、夜間中途覚醒や遅い入眠と早期覚醒に悩まされることが多いとされます。※1

◆身体的特徴

平坦な後頭部、後頭部の溝、横に広い口、大きな歯間空隙(すきっ歯)、舌の突出、下顎前突といった顔貌的特徴が報告されていますが、出現頻度はいずれも80%未満です。※2

予後と生活の質

予後と生活の質

主に難治性てんかんの併存が生命予後を左右するとされています。※1 寿命に関する正確なデータはありませんが、寿命は健常人とほぼ変わらないとされています。※2 完全に自立した生活を送ることは困難です。大人になると、活動性が低下することが増えるため、肥満とともに歩行能力を失うこともあります。※2

治療とケア

◆現在の治療法

治療は対症療法となります。※1 具体的には以下のような治療が行われます。

基本知識

◆新たな治療法の開発

UBE3Aの遺伝子発現を回復させるアンチセンス核酸療法や遺伝子治療などが開発されており、期待されています。※3

まとめ

まとめ

アンジェルマン症候群は、15番染色体の異常によって発症する先天性疾患で、 知的障害・てんかん・言語発達の遅れ・特徴的な笑顔を主な症状とします。
多くは遺伝することはありません。

寿命は健常人とほぼ変わらないとされますが、重症てんかんや肥満関連の合併症により影響を受ける場合があります。
また発達や運動機能には長期的な影響が残るため、医療管理やリハビリ、教育的支援が重要です。
治療は対症療法が中心ですが、新しい遺伝子治療の研究も進められています。

まとめ

最新の治療として、GTX 102(アパズノーセン)という、Antisense Oligonucleotide(ASO)という、父由来UBE3Aの発現回復を狙った治療薬が注目されています。
この治療薬が2025年6月に米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬として指定を受けたことで、アメリカでの迅速な開発が期待されています。

この薬はUltragenyx Pharmaceutical Inc.により開発され、国際共同第3相試験(Aspire試験)が進行中です。※4
出生前検査を検討される方にとって大切なのは、正確で信頼できる情報に基づいて判断することが重要です。

本記事がアンジェルマン症候群に関する理解を深める一助となり、ご自身とご家族にとって最適な選択につながれば幸いです。

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【参考文献】

※1:(1)難病情報センター. アンジェルマン症候群(指定難病201). ※2:GRJ. Angelman症候群(アンジェルマン症候群). ※3:国立成育医療研究センター. アンジェルマン症候群. ※4:Ultragenyx, Jun., 2025.

著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。