- ■ 80-90%:父親由来の染色体異常(精子形成時の染色体切断)※1
- ■ 10-15%:両親のどちらかが持つ染色体転座が子に受け継がれた場合※1
- ■ 80-90%:染色体の端から欠失する「末端欠失」※1
- ■ 3-5%:染色体の途中部分が欠失する「間質欠失」※1
- ■ その他:モザイク(正常細胞と異常細胞の混在)、逆位、環状染色体などの稀な異常※1
- ・ 低出生体重(平均 2,614g)
- ・ 小頭
- ・ 筋緊張低下
- ・ 吸啜障害
- ・ 成長障害
- ・ 小顎症(96.7%)
- ・ 目頭のひだ(内眼角贅皮, 90.2%)
- ・ 幅広い鼻(87.2%)
- ・ 丸顔(83.5%)
- ・ 眼間開離(81.4%)
- ・ 口角下垂(81.0%)
- ・ 耳の位置が低い(69.8%)
- ・ 欠失の大きさ・位置:より大きな欠失ほど重篤な症状を示す傾向があります。※1,3
- ・ 早期診断・早期介入:適切な治療・リハビリテーションにより予後の改善が期待できます。※1,3
- ・ 合併症の有無:特に心疾患や難治性てんかんの存在が予後を左右します。※4
- ・ 母乳育児は可能であり、集中治療が必要になることは稀です。※1,3
- ・ 吸啜や嚥下が困難な新生児には、生後1週間から理学療法を開始します。※1
- ・ 理学療法、精神運動機能訓練、言語療法が推奨されます。
- ・ 聴力検査の実施:感音性難聴を併発することが多いため、全ての患児で定期的な聴力検査が必要です。※1,3
【医師が解説】5p欠失症候群(猫鳴き症候群)とは
はじめに
新型出生前診断を検討されている妊婦さんにとって、染色体異常に関する正確な情報を得ることは重要な判断材料となります。
今回は、5p欠失症候群(猫泣き症候群)について、最新の学術論文に基づいたエビデンスをもとに、医師の視点から分かりやすく解説いたします。
基本知識
5p欠失症候群(猫泣き症候群)は、5番染色体短腕(5p)の部分的な欠失によって引き起こされる遺伝性疾患です。
この症候群の名前は、新生児期に特徴的に見られる猫の鳴き声に似た甲高い泣き声に由来しており、
クリ・デュ・チャット症候群とも言われる1963年にLejeune博士らによって初めて報告された染色体数異常症候群の1つであります。※1,2
◇ 頻度・発症率
5p欠失症候群の発症頻度は、15,000〜50,000人の出生に1人とされており、染色体異常症候群の中では一般的な疾患です。※2,3
女性の発症率がわずかに高く、すべての人種で発症が確認されています。※2
精神発達の遅れを示す患者は、350人に1人の割合を占めるとされています。※4
◇ 原因・発症メカニズム
多くの場合(80-90%)、この染色体異常は新規発生(de novo)、つまり両親には異常がなく、胎児の発育過程で偶然起こる現象です。※1
具体的には、精子や卵子が作られる過程で染色体が偶然切れてしまうことが原因となります。
【染色体異常の由来】
【欠失のタイプ】
症状と特徴
◇ 新生児期の症状
5p欠失症候群の最も特徴的な症状は、新生児期から乳児期に認める甲高い啼泣です。※1,2,3
この猫の鳴き声のような泣き声は、喉頭の形態異常が原因とされており、
具体的には小さく軟らかい喉頭蓋、低形成で狭い喉頭などの解剖学的変化によるものです。※1
その他の新生児期の特徴として以下があります。※1,3
◇ 顔面・身体的特徴
5p欠失症候群では特徴的な顔貌を示します。※3
◇ 発達・行動面の特徴
重度の精神運動発達遅滞が全例で認められます。※3
しかし、早期からの教育・リハビリテーションプログラムにより改善が期待できることが報告されています。※3
イタリアの患者登録データによると50%の患者が3歳までに自立歩行を獲得し、
3歳半でスプーンを使って食事ができると報告されています。
また、4歳半で短い文章を話せるようになる割合は25%と言われています。※3
行動面では、多動性、自傷行為、反復行動、音に対する過敏性などが見られることがありますが、
多くの患者は穏やかで愛情深い性格を示すとされています。※3
予後と生活の質
◇ 生存率・予後
新生児期から乳児期の早期が最も重要な時期です。
死亡例の75%が生後1か月以内、90%が生後1年以内に起こるとされています。※1,2
しかし、この時期を乗り越えた後の生存期待値は高く、50歳を超える患者も報告されています。※3
◇ 予後に影響する因子
◇ 成長と発達
特異的な成長チャートが確立されており、出生前・出生後の成長遅延が特徴的です。
体重は生涯にわたって2〜5パーセンタイル付近を推移し、身長は体重ほど影響を受けないことが分かっています。※3
治療とケア
5p欠失症候群では、胎児期の早期に脳損傷が発生するため、根本的な治療法は現在のところ存在しません。
しかし、早期からのリハビリテーションプログラムにより患者さんの予後と社会適応の改善が実証されています。※1,3
治療は主に各症状に対する対症療法と包括的なケアが中心となります。
◇ 新生児期・乳児期の管理
◇ リハビリテーション・発達支援
まとめ
5p欠失症候群は5番染色体短腕の欠失による染色体異常症候群で、特徴的な泣き声、成長・発達遅滞、特異的な顔貌を主症状とします。
根本的治療法は存在しませんが、早期診断・早期介入により予後の改善が期待できる疾患です。
出生前検査において5p欠失が検出された場合、遺伝カウンセリングを通じて十分な情報提供を受け、
専門医療機関との連携のもとで適切な管理・支援体制を構築することが重要です。
患者の生活の質向上のためには、医療従事者、教育関係者、家族が連携した包括的なケアが不可欠となります。
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【参考文献】
※1:Cri Du Chat Syndrome (StatPearls, 2024) ※2:Cri du chat syndrome: A critical review (Medicina Oral, 2010) ※3:Cri du Chat syndrome (Orphanet Journal of Rare Diseases, 2006) ※4:5p欠失症候群 指定難病診断基準 (厚生労働省, 2015)
著者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci
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Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。