新型出生前診断で見つかる疾患④:ターナー症候群

ターナー症候群とは、1938年にアメリカの医師ヘンリー・ターナーによって報告された遺伝子性疾患です。
1959年には、原因が性染色体の数だと判明しました。
ターナー症候群は、女性のみに発生し、X染色体が一部または全体欠損することで起こります。
出生した女性の2,500~3,500人のうち1人の割合で発生し、低身長、思春期の発達不全などの疾患を引き起こします。

胎児のターナー症候群のリスクが分かる

原因

ヒトの性別を決める性染色体は通常、女性がXX、男性がXYですが、X単独(45,X)またはXの部分欠失が起きる場合があります。 ターナー症候群は、これらの性染色体レベルにおける異常によって発症します。 ターナー症候群を持つ胎児は、全体の1.5%を占めますが、その99%以上の胎児が妊娠期間中に流産してしまいます。生存して出生を迎えるのは、わずか0.1%です。 ターナー症候群は以下の3タイプに分類されます:

1. X単独染色体(45,X)
全体の40〜60%を占める最も一般的なタイプです。

2.X部分単独染色体
全体の20〜25%を占めます。
染色体の数は通常46本ですが、性染色体に部分欠失や構造異常が見られ、4〜8%の割合で、Y染色体の一部を持ち、性腺芽腫(gonadoblastoma)発生のリスクがあります。

3.モザイク型
複数の核型(45,Xや46,XX、46,XY、47,XXXなど)が混在するタイプです。
全体の15%を占め、本人に自覚症状がなく、家族も気づかないことがあり、一般的には最も軽い症状を示すタイプです。

症状

外見的特徴(頻度%)

・低身長(3歳以降の成長遅延、最終身長約140cm前後)
・リンパ浮腫(70%)
・三角形の顔、内眼角贅皮、前向きの耳、魚のような口、高く狭い口蓋(82%)、小顎
・太く短い首(80%)、首の後ろの低い毛の生え際(80%)
・盾状胸郭(75%)、離れた乳頭(78%)
・外側に向いた肘(70%)
・発育不全の爪(75%)、第4指・第4趾の短縮
・多発性の色素斑

医学的問題

性発達障害:卵巣の発達不全が原因で、思春期に乳房発達や月経が見られない。
心疾患(20〜30%):大動脈縮窄(15〜30%)、弁の狭窄・閉鎖(33%)、動脈瘤、肺動脈狭窄
中耳炎(80%):中耳の奇形により
静脈血管異常
腎奇形(33〜60%):片側または両側性無形成、異形成、馬蹄腎、位置異常、重複
甲状腺機能低下症(10%)
肥満:代謝効率が低く体重が増えやすい
糖尿病:小児では1型、成人や肥満者では2型
高血圧
骨粗しょう症:エストロゲン不足が原因
慢性大腸炎
知的・情緒的問題:知能に差はないが、身体的特徴による自尊心低下や劣等感から精神的問題が生じる可能性

診断方法

低身長や思春期の遅れ、見た目の特徴などから病気が疑われた際には、NGS(次世代シーケンス)が普及するまで、末梢血染色体検査という方法で、血液を採取し、性染色体の異常があるかどうかを調べていました。
末梢血染色体に異常が見つからない場合でも、皮膚の細胞を使って再検査が必要になることがあり、補助でホルモンの検査も行われます。

代表的な診断方法は3種類です。

1. FISH法(蛍光 in situ hybridization)

最も一般的な診断方法は、染色体の解析です。
ターナー症候群は、1本のX染色体が欠失または異常であることが大きな特徴です。
FISH法は、染色体上の特定の遺伝子や配列を蛍光プローブで特定し、染色体の異常を検出する方法です。
ターナー症候群の場合、X染色体の欠失や異常を識別するのに有効です。

2. PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)

<症状>
コロナ検査でよく使われたPCR法を用いて検査を行います。
XとY染色体の特定の領域を増幅し、Y染色体を持たないのに、 X染色体が1本のみであることで診断ができます。
特に、X染色体の遺伝子異常をチェックする際に有効です。

3. 次世代シーケンシング(NGS)

<症状>
海外では、 新型出生前診断(NIPT)で良く使われるNGSというDNA解析装置を利用した分子生物学的検査方法が増えています。最近は、国内でもNIPTで診断されるケースが増加傾向であります。
または、生まれた被験者から口腔上皮細胞を採取し、抽出したDNAをNGSで解析することも可能です。

治療

主に定期的なホルモン治療を行い、身体的異常の矯正、成長障害および性発達障害の管理を行います。

1. 身体的異常の矯正
翼状頸、眼瞼下垂などの手術

2.成長障害治療
成長ホルモン製剤、同化ステロイド製剤、女性ホルモン製剤

3.性発達治療
乳房、子宮、膣の発達を促す女性ホルモン治療