新型出生前診断で見つかる疾患⑦:XYY症候群(Jacobs syndrome)

XYY症候群とは?

XYY症候群(Jacobss yndrome、または47,XYY症候群)は、男性にY染色体が1本多く存在する遺伝的な状態です。通常、男性は46本の染色体を持ち、その性染色体はXYの組み合わせ(46,XY)です。

しかし、XYY症候群のある男性は、Y染色体が1本多く、染色体の数が47本(47,XYY)になります。

この症候群は、およそ1,000人に1人の割合で男性の出生時に見られるとされています。

胎児のXYY症候群のリスクが分かる

なぜXYY症候群は起こるのか?

XYY症候群は、精子が形成される過程で起こる染色体の不分離(nondisjunction)によって、偶発的に発生します。

通常、精子はX染色体またはY染色体のいずれかを持ちますが、エラーによりY染色体を2本持った精子が形成されることがあります。このような精子が、正常な卵子(X染色体)と受精すると、染色体数47本・XYY型の受精卵となり、XYY症候群が生じます。

XYY症候群の症状は?

XYY症候群の多くの男性は、外見や知能面に大きな異常がなく、生涯診断されないこともあります。
ただし、以下のような特徴が見られる場合があります。

    身体的特徴

  • 平均より背が高い
  • 性的発達は正常
  • 正常な精子を持ち、生殖能力も通常通り(子どもを持つことが可能)

    発達・行動面

  • 言語・会話の発達がやや遅れることがある
  • 読み書きに関する学習障害が見られる場合がある
  • 細かな動作など運動スキルに軽度の遅れ
  • ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム傾向がやや高い傾向
  • 幼少期に感情面や行動面の困難が見られることもある

    知的能力

  • 知能はほとんどの場合、正常範囲内

よくある誤解①「子どもに遺伝する?」

XYY症候群は多くの場合、遺伝しません。
一般的に「遺伝性疾患=親から子に遺伝する」と思われがちですが、XYY症候群はほとんどが偶発的に発生する染色体異常です。※1

研究によると、XYY症候群の男性は通常、正常な染色体構成(23,Xまたは23,Y)を持つ精子を作ります。
そのため、子どもがXYY症候群となる可能性は極めて低く、多くの論文では0.5%未満〜1%未満と報告されています。※2

よくある誤解②「攻撃性が高い?」

かつて「XYYの男性は攻撃性が高い」と言われていた時期がありましたが、この説には科学的根拠がなく、現在では否定されています。※3

XYY症候群の治療と支援について

XYY症候群には、根本的な治療法 (薬など) はありませんが、そもそも重症な症状が無い、または軽症に留まるため、特定の治療が必要とされません。
最近では、「病気」というよりは、遺伝的な表現型の一つと考えられることが多いです。※4
しかし、各症状に応じた支援や療育により、本人の発達や生活をしっかりサポートできます。

    幼少期の支援(早期介入)

  • 言語療法:言葉の発達を促す
  • 作業療法:手先の動きや日常生活スキルをサポート
  • 特別支援教育:読み書きのサポートや学習支援

    医療的サポート

  • 小児科や発達外来での定期モニタリング
  • 必要に応じて心理カウンセリングや行動療法

    成人期以降

  • 多くの男性が通常の自立した生活を送り、家庭を持つことも可能です。
  • 生殖能力にも問題はなく、自然なかたちで子どもを授かることもできます。