【医師が解説】NIPTを受ける前の準備|費用・遺伝カウンセリング完全解説

2026.03.20

【結論】NIPTを受ける前に必要な5つの準備
NIPTを受ける前には、以下の5点を整理しておくことが重要です。

  • 検査の基本知識と限界の理解
    スクリーニングであり確定診断ではない
  • パートナーとの事前合意
    陽性時の対応方針について話し合う
  • 遺伝カウンセリングの受検
    臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーによる
  • 家族歴・既往歴の整理
    夫婦双方の染色体異常・遺伝性疾患の確認
  • 費用と検査スケジュールの確認
    妊娠週数に応じた計画を立てる

NIPTとは何か?-定義・検査対象・検査精度

NIPTとは何か?-定義・検査対象・検査精度

NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing:非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは、妊婦の血液中に含まれる胎児由来のcfDNA(cell-free DNA)を次世代シーケンサーで解析し、胎児の染色体数的異常のリスクを調べるスクリーニング検査です。
NIPTは2013年4月より日本国内で開始されました。採血のみで完結するため、母体・胎児への身体的負担はありません。

標準的な検査対象疾患

日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会の認証施設では、以下の3疾患を標準的な検査対象としています[1]。

疾患名 染色体異常 主な症状
ダウン症候群 21トリソミー 知的発達の遅れ、特徴的な顔貌
エドワーズ症候群 18トリソミー 重篤な心奇形、多くが出産後早期に死亡
パトウ症候群 13トリソミー 脳・心臓・腎臓の重篤な奇形

NIPTの検査精度

日本で行われたNIPTコンソーシアムの研究(総検査数34,691件)によると、ダウン症候群(21トリソミー)の感度は99.7%、特異度は99.9%以上と報告されています[2]。

疾患 感度 特異度 陽性的中率(参考)
21トリソミー(ダウン症候群) 99.7% 99.9%以上 96.3%
18トリソミー(エドワーズ症候群) 99.6% 99.9%以上 86.9%
13トリソミー(パトウ症候群) 100% 99.9%以上 53.1%

※陽性的中率は妊婦の年齢・有病率によって大きく変動します。若年妊婦ほど低下します。

重要:NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性の場合は必ず羊水検査または絨毛検査(確定的検査)が別途必要になります。

NIPTを受ける前に必ず確認すべき3つのポイント

NIPTを受ける前に必ず確認すべき3つのポイント

検査前の準備が不足すると、陽性結果が出た際に冷静な判断が困難になります。以下の3点を事前に確認しましょう。

ポイント①「なぜ受けるのか」という目的を明確にする

NIPTを受ける主な動機は以下の3つに整理されます。

  • 高齢妊娠(35歳以上)による染色体異常リスクの増加への不安
  • 家族歴や過去の妊娠での染色体異常の経験
  • 妊婦健診での医師からの勧め

日本医学会の指針では、NIPTを受けるかどうかの意思決定は妊婦自身が十分に考慮したうえで行うことが重視されています[3]。動機が曖昧なまま受検すると、陽性結果時の対応が困難になります。

ポイント②「陽性だったらどうするか」をパートナーと話し合っておく

陽性結果が出た場合に検討すべき選択肢は以下の通りです。

  • 確定診断(羊水検査・絨毛検査)を受けるかどうか
  • 確定診断後の対応方針(妊娠継続・中断など)
  • 専門家(遺伝カウンセラー・小児科医)への相談

結果が出てから初めて話し合うのでは、精神的余裕がなく冷静な判断が難しくなります。事前に二人でゆっくり考える時間を確保することが重要です。

ポイント③ NIPTで「わかること」と「わからないこと」を把握する

NIPTは万能な検査ではありません。「陰性=すべての異常がない」ではないことを必ず理解しておきましょう(詳しくは次のセクションをご参照ください)。

NIPTで「わかること」と「わからないこと」の違い

NIPTで「わかること」と「わからないこと」の違い

NIPTでわかること

  • 21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーのリスク(認証施設の標準検査)
  • 施設によっては性染色体異常・微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)のリスク(非認証施設の拡張検査)

NIPTでわからないこと

以下の異常はNIPTでは検出できません。

  • 染色体の構造異常(転座・逆位など)
  • 単一遺伝子疾患(フェニルケトン尿症など)
  • 自閉スペクトラム症・知的障害
  • 心臓・口唇口蓋裂などの形態異常

形態異常の多くは胎児超音波検査(胎児ドック)で評価可能です[4]。

出生前検査の種類と比較表

検査名 検査方法 流産リスク 確定診断 受検時期 主な検出対象
NIPT 採血 なし なし(スクリーニング) 妊娠10週〜 3つのトリソミー
コンバインドテスト 採血+超音波 なし なし 妊娠11〜13週 トリソミーリスク
クアトロテスト 採血 なし なし 妊娠15〜21週 トリソミー・開放性神経管欠損
絨毛検査(CVS) 針による組織採取 0.3〜1% あり 妊娠11〜13週 染色体全般
羊水検査 針による羊水採取 0.1〜0.3% あり 妊娠15〜18週 染色体全般

遺伝カウンセリングとは?受ける目的とメリット

遺伝カウンセリングとは?受ける目的とメリット

遺伝カウンセリングとは、検査に関する正確な医学的情報を提供するとともに、クライアントが自律的な意思決定を行えるよう心理的・社会的支援を行う医療行為です(National Society of Genetic Counselors, 2006年定義)[5]。
日本医学会は、NIPTを受ける際に臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることを原則としています[3]。

遺伝カウンセリングで確認できること

  • NIPTの目的・仕組み・精度の詳細説明
  • 陽性・陰性それぞれの意味と次のステップ
  • 確定診断の流れ(羊水検査・絨毛検査)
  • 染色体異常が確定した場合の医療・福祉サポート体制
  • 妊婦本人およびパートナーの不安や疑問への回答

遺伝カウンセリングを担う専門家

資格名 認定機関 主な役割
臨床遺伝専門医 日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会 遺伝医療全般の診断・情報提供
認定遺伝カウンセラー 日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会 遺伝情報の提供・心理的サポート

2024年10月時点で、日本医学会が認証したNIPT実施医療機関は全国562施設あります[1]。

NIPTを受ける前に実際に準備しておくこと(5ステップ)

  • 遺伝カウンセリングを受ける
    認証施設では検査前後の遺伝カウンセリングが必須です。カウンセリングを最大限に活用するために、事前に自分の疑問点を整理しておくと効果的です。
  • 家族歴・既往歴を整理する
    夫婦双方の染色体異常や遺伝性疾患に関する家族歴を事前に整理しておきましょう。過去の妊娠経過(流産歴・出生児の異常など)も重要な情報です。記録が手元にない場合は、かかりつけ産婦人科にご確認ください。
  • パートナーと事前に話し合う
    確定診断を受けるかどうか・染色体異常が確定した場合の対応・専門家への相談窓口など、陽性結果が出た場合の対応方針について二人でゆっくり話し合っておきましょう。
  • 検査スケジュールを確認する
    NIPTは妊娠10週以降から受検可能で、結果は通常1〜2週間程度で得られます。陽性の場合の確定的検査のスケジュールは以下の通りです。
    確定的検査 実施可能時期 流産リスク
    絨毛検査(CVS) 妊娠11〜13週 0.3〜1%
    羊水検査 妊娠15週以降 0.1〜0.3%
  • 費用の全体像を把握する
    NIPTは自由診療のため全額自己負担です[6]。
    検査 費用の目安
    NIPT(認証施設) 10〜20万円程度
    NIPT(非認証施設) 5〜20万円程度
    羊水検査 10〜15万円程度
    絨毛検査 10〜20万円程度

検査タイミング・費用の目安

検査タイミング・費用の目安

NIPTの受検時期と確定検査までの流れ

  • 妊娠10週以降:NIPT受検
    採血のみ。医療機関により妊娠10〜13週での受検を推奨するケースがあります。
  • 1〜2週間後:結果判明
    陰性の場合は経過観察。陽性または判定保留の場合は次のステップへ。
  • 陽性の場合:確定的検査の選択
    絨毛検査(妊娠11〜13週)または羊水検査(妊娠15週以降)を選択します。
  • 1〜3週間後:確定診断
    結果を受け、遺伝カウンセリングを通じて今後の対応方針を決定します。

妊娠12〜13週ごろにNIPTを受検すると、陽性時に絨毛検査・羊水検査の両方の選択肢が残るため、スケジュール上の余裕が生まれます。

FAQ:よくある質問

Q1. NIPTは誰でも受けられますか?

A. 認証施設では、日本医学会の指針に基づき妊娠10週以降などの条件を満たした妊婦を対象としています。非認証施設では条件が緩やかな場合があります。受検前に希望施設の要件を必ずご確認ください。

Q2. NIPTが陰性でも安心できますか?

A. 陰性は「検査対象の3種類のトリソミーリスクが低い」ことを示すに過ぎず、すべての染色体異常や形態異常がないことを保証するものではありません。「陰性=完全に健康」ではないことを理解しておく必要があります。

Q3. 遺伝カウンセリングは必須ですか?

A. 認証施設ではNIPT受検前後の遺伝カウンセリングが必須要件となっています。非認証施設では任意の場合があります。日本医学会は原則として遺伝カウンセリングを受けることを推奨しています[3]。

Q4. 陽性結果が出たら必ず羊水検査を受けなければなりませんか?

A. 陽性結果が出ても確定的検査を受けるかどうかは妊婦本人の意思決定によります。遺伝カウンセリングを受けたうえで、自律的に判断することが重要です。

Q5. 認証施設と非認証施設の違いは何ですか?

A. 認証施設は日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が審査・認証した施設で、専門医の配置・遺伝カウンセリング体制・サポート体制が整っています。非認証施設は法的に禁止されてはいませんが、カウンセリングやフォロー体制は施設によって異なります[1]。

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【参考文献】

[1] 出生前検査認証制度等運営委員会(日本医学会)「NIPTとは」
[2] 厚生労働省「NIPTコンソーシアムデータ」昭和大学医学部産婦人科学講座 関沢明彦, 2019年
[3] 公益社団法人日本産科婦人科学会「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針」, 2022年10月
[4] FMF胎児クリニック東京ベイ幕張「胎児クリニックが考えるNIPT」
[5] Hiro Clinic NIPT「Genetic Counseling Explained: Prenatal Diagnosis Support」
[6] NIPT Japan「NIPTの費用を徹底比較」, 2025年12月

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著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。

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