非嫡出子の出生届

2017.09.06

リライティング日:2024年08月23日

出生届における父親欄の記載方法と胎児認知の手続きについて解説。婚姻関係にない場合の嫡出推定や認知届の流れ、出生前DNA鑑定の活用法まで詳しく説明します。

そもそも出生届とは

そもそも出生届とは出生届とは、生まれた赤ちゃんの戸籍を作るための法的手続きです。日本の戸籍制度は世界的にも独特な制度であり、国民の身分関係を公的に証明する極めて重要な役割を果たしています。出生届を提出することで、子どもは日本国民としての法的地位を取得し、住民票の作成や健康保険への加入など、社会生活に必要なさまざまな手続きの基盤が整えられます。(1)

出生届には父母を記入する欄がありますが、お母さんの欄は出産の事実から明白であるため問題になることはほとんどありません。しかし、問題となるのは父親の欄です。赤ちゃんの父親が誰かわからない場合や、婚姻関係になく、なおかつ嫡出推定されない子どもについては、父親の欄が空欄の戸籍が作成されることになります。

出生届の提出期限と届出義務者

戸籍法第49条の規定により、出生届は出生の日から14日以内に届け出なければなりません。届出義務者は原則として父または母ですが、届出ができない場合には同居者や出産に立ち会った医師・助産師が届出を行うことも認められています。届出先は、子の出生地、届出人の所在地、または届出人の本籍地の市区町村役場です。(1)

出生届には、医師または助産師が作成した出生証明書が添付される必要があります。この出生証明書には、子の氏名、出生の年月日時分、出生の場所、母の氏名などが記載されます。出生届と出生証明書は通常、同一の用紙の左右にそれぞれ印刷されており、左側が出生届、右側が出生証明書という形式になっています。

嫡出子と非嫡出子の違い

民法において、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を「嫡出子」といいます。一方、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を「非嫡出子(婚外子)」といいます。嫡出子の場合、民法第772条の「嫡出推定」により、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されるため、出生届の父親欄には自動的に夫の氏名が記載されます。(1)

しかし、非嫡出子の場合はこの嫡出推定が働きません。そのため、たとえ生物学的な父親が明確であったとしても、法律上は父親が存在しないものとして扱われ、出生届の父親欄は空欄となります。この点は非常に重要で、多くの方が誤解されやすいポイントです。

  • 婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定される(嫡出推定・民法772条)
  • 婚姻成立の日から200日以降に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定される
  • 婚姻解消後300日以内に生まれた子も婚姻中に懐胎したものと推定される
  • 非嫡出子は父の認知がなければ法律上の父子関係が成立しない
  • 2013年の民法改正により、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となった(2)

出生届を提出した後から認知をしてもらうことは可能ですが、後から認知された場合には、いつ・どこが本籍の誰が認知届を届け出たのかが戸籍に記載されます。将来、お子さまが大きくなった時に、戸籍の記載から過去の経緯を知り、揉め事があったのではないかと不安に思う可能性もあるでしょう。

たとえ出生後に認知を受ける予定であっても、また父親であることが間違いないとしても、嫡出子でない場合には出生の時点ではその人は法律上「父親」ではありません。そのため、出生届の「父」欄は空欄で提出することになります。

出生届に父親の名前を書くためにはどうしたらよいのでしょうか?

出生届に父親の名前を書くためにはどうしたらよいのでしょうか?

胎児認知と認知届

出生届に父親の名前を記載するためには、出生前に「胎児認知」を行う方法があります。子どもが胎児のときに行う認知を「胎児認知」といい、これは子どもが生まれてくることを前提とした仮の認知と位置づけられます。

胎児認知は、出産後の認知届と同様に、母親の本籍地の役所に胎児認知届を提出します。通常の認知届は父親の意思のみで行うことができますが、胎児認知の場合には父親に加えて母親の同意が必要になる点が大きな違いです(民法第783条1項)。これは、胎児の段階では母体との一体性が強く、母親の権利を保護する必要があるためです。

  1. 父親が胎児認知届を作成する
  2. 母親から胎児認知への同意を得る
  3. 母親の本籍地の市区町村役場に届出を行う
  4. 出産後、出生届を提出する
  5. 子どもの戸籍の父親欄に認知した男性の名前が記載される

胎児認知が完了した後に出産し、出生届を出すことによって、子どもの戸籍の父親欄には認知した男性の名前が記載されます。子どもは母親の戸籍に入り、父親の戸籍にも認知の事実が記録されます。胎児認知の特徴として、出生届を提出するまで胎児認知の事実は母親の戸籍の附票にのみ記録されるという点があります。

胎児認知と出生後認知の比較

胎児認知と出生後の認知では、戸籍上の記載のされ方に違いがあります。胎児認知を行った場合、出生届提出時から父親の名前が戸籍に記載されるため、戸籍上はより自然な形で親子関係が示されます。一方、出生後に認知届を提出した場合は、認知の届出日や届出地などが別途記載されるため、後から認知がなされたことが戸籍から読み取れる形になります。

また、胎児認知には注意すべき点もあります。胎児認知は出生を条件としているため、万が一死産となった場合には認知の効力は生じません。また、胎児認知後に子が出生した場合でも、父親が認知の無効を主張する訴えを起こすことは法的に可能です(民法第786条)。

認知届の種類と手続き

認知には大きく分けて以下の種類があります。

  • 任意認知:父親が自発的に認知届を提出する方法。最も一般的な形式です
  • 胎児認知:出生前に行う認知で、母親の同意が必要です
  • 遺言認知:父親が遺言書の中で認知を行う方法です
  • 強制認知(裁判認知):父親が任意に認知しない場合に、子や母親が家庭裁判所に認知の訴えを起こす方法です

出生前DNA鑑定と胎児認知の活用

将来きちんと認知してくれるか不安な場合や、さまざまな事情で話し合いが難しいときには、胎児認知を活用することが有効です。特に、出生前のDNA型鑑定で胎児との父子関係が科学的に認められれば、男性に胎児認知を求める大きな手助けとなるでしょう。

近年の出生前DNA鑑定技術は飛躍的に進歩しており、母体の血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)を利用することで、非侵襲的に父子関係を確認することが可能になっています。この方法は母体への負担が極めて少なく、羊水穿刺のような侵襲的な手技を必要としないため、安全性の面でも優れています。(3)

出生前DNA鑑定の結果は、法的な認知手続きにおいて強力な証拠となります。父親候補の男性が認知を渋っている場合でも、科学的な鑑定結果を提示することで、任意認知への合意を促すことができます。また、万が一裁判(強制認知の訴え)に至った場合にも、DNA鑑定の結果は裁判所において極めて重要な証拠として採用されます。

2022年民法改正による嫡出推定制度の見直し

2022年12月に成立し、2024年4月1日に施行された改正民法では、嫡出推定に関する規定が大幅に見直されました。従来、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定されるため、実際の父親と法律上の父親が異なるケースが「無戸籍問題」として社会問題化していました。改正法では、再婚後に生まれた子については再婚した夫の子と推定する規定が新設されるなど、より実態に即した制度へと改善が図られています。(4)

この法改正により、出生届の提出に際して従来のような困難が一部解消されることが期待されていますが、婚姻関係にないカップルの場合には依然として認知の手続きが必要です。出生届の父親欄に名前を記載するためには、胎児認知や出生後の認知届といった法的手続きを適切に行うことが求められます。

出生届提出時の注意点まとめ

出生届に関する手続きを円滑に進めるために、以下の点にご注意ください。

  • 出生届の提出期限は出生日を含めて14日以内(国外出生の場合は3か月以内)
  • 届出が遅れた場合、正当な理由がなければ過料(5万円以下)の対象となる場合がある
  • 胎児認知を行う場合は、必ず母親の本籍地の市区町村役場に届出を行う
  • 胎児認知には母親の書面による同意が必要である
  • 出生前DNA鑑定を検討する場合は、信頼できる鑑定機関に早めに相談する

お子さまの将来のために、出生届と認知に関する手続きは正確に理解し、適切なタイミングで行うことが大切です。ご不明な点がある場合は、法律の専門家や信頼できるDNA鑑定機関にご相談されることをお勧めいたします。

よくあるご質問

Q1. 出生届の父親欄を空欄で提出した場合、後から父親の名前を追加できますか?

A. はい、可能です。出生届を空欄で提出した後でも、父親が「認知届」を市区町村役場に提出することで、子どもの戸籍に父親の名前を記載することができます。ただし、出生後の認知の場合は、認知届を提出した日付や届出地が戸籍に記録されるため、胎児認知と比べて戸籍上の記載に違いが生じます。

Q2. 胎児認知はいつから手続きできますか?

A. 胎児認知には法律上の開始時期に明確な制限はなく、妊娠が確認された段階から届出を行うことが可能です。ただし、胎児認知は母親の同意が必要であり、届出先は母親の本籍地の市区町村役場に限られます。実務上は、妊娠が安定期に入った頃に手続きを行うケースが多く見られます。

Q3. 胎児認知をした後に父親が取り消すことはできますか?

A. 認知は原則として一度行うと撤回(取消し)することはできません。ただし、認知が真実に反する場合(生物学的な父子関係がない場合)には、利害関係人が認知無効の訴えを起こすことが可能です(民法第786条)。このような紛争を防ぐためにも、認知の前に出生前DNA鑑定で父子関係を確認しておくことが推奨されます。

Q4. 出生前DNA鑑定は母体や胎児に危険はありませんか?

A. 現在主流の非侵襲的な出生前DNA鑑定(NIPPT)は、母親の腕から採血した血液を使用します。母体の血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cffDNA)を分析するため、羊水穿刺のような侵襲的な手技は一切不要です。母体や胎児への危険性は極めて低く、安全に父子関係を確認することができます。

Q5. 出生届を期限内に提出しなかった場合はどうなりますか?

A. 出生届は出生日を含めて14日以内に届け出ることが戸籍法で定められています。届出が遅れた場合でも届出自体は受理されますが、届出人は「届出期間経過通知書」を作成し、届出遅延の理由を記載する必要があります。正当な理由がないと認められた場合、簡易裁判所から5万円以下の過料が科される可能性があります。お子さまの戸籍を速やかに作成するためにも、期限内の届出を心がけましょう。

Q6. 外国籍の父親でも胎児認知は可能ですか?

A. はい、外国籍の父親でも胎児認知を行うことは可能です。ただし、認知に関する法律関係は、認知する父親の本国法が適用されるケースがあるため(法の適用に関する通則法第29条)、手続きが複雑になる場合があります。外国籍の方が関わる認知の手続きについては、事前に市区町村役場の戸籍担当窓口や法律の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) e-Gov 法令検索
(2) 日本経済新聞, 2012年4月
(3) Bioinformatics, 2012年10月
(4) 法務省:民法等の一部を改正する法律について, 2022年7月
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