リライティング日:2026年04月21日
NIPTの陰性結果は対象染色体異常のリスクが極めて低いことを示し、ダウン症候群に対する陰性的中率は99.9%以上です。ただし確定診断ではなく、検出対象外の疾患や偽陰性の可能性もあるため正しい理解が重要です。
結論
NIPTの陰性結果は、対象とする染色体異常のリスクが極めて低いことを示します。ダウン症候群に対する陰性的中率は99.9%以上と非常に高精度ですが、すべての先天性疾患を否定する「確定診断」ではありません。陰性結果の正しい意味を理解し、必要に応じて追加の検査や遺伝カウンセリングを受けることが大切です。
NIPTの「陰性」が意味する医学的定義とは?

NIPTで陰性とは、特定の染色体(21番、18番、13番)に数的異常が見つかる確率が極めて低いことを意味する非確定的な判定です。この結果は「お腹の赤ちゃんに染色体異常がない」と断定するものではなく、あくまでスクリーニング検査としての「低リスク」判定であるという点を正確に理解しておく必要があります。(1)
NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)における陰性とは:検査対象となった染色体の数的異常が検出されず、リスクが基準値以下であることを指します。具体的には、母体の血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cfDNA)を分析し、対象となる染色体の量的バランスを評価した結果、異常を示す所見が認められなかったことを意味します。(2)
- 主に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)を対象とします。
- この結果は、対象疾患について「低リスク」であることを示しており、確定的な「否定」とは異なります。
- NIPTはスクリーニング検査であり、陽性の場合は羊水検査などの確定検査で最終判断を行います。陰性の場合も同様に「確定」ではないことを理解しておきましょう。
NIPTは母体から採血するだけで検査を行えるため、胎児や母体への身体的リスクがほぼない非侵襲的な検査方法です。妊娠10週以降に実施可能であり、従来の母体血清マーカー検査(クアトロテスト等)と比較して格段に早い段階でリスク評価が行える点が大きな特徴です。 このような利点から、近年では多くの妊婦さんがNIPTを選択していますが、「陰性=完全に安心」と誤って解釈してしまうケースも少なくありません。(3)
NIPTの精度:なぜ「陰性なら安心」と言われるのか?
NIPTは従来の母体血清マーカー検査よりも圧倒的に陰性的中率が高く、陰性と判定された場合に実際に病気がない確率は99%を超えます。特にダウン症候群(21トリソミー)に関しては、感度99%以上、陰性的中率99.9%以上という驚異的な精度を誇ります。(2)
この高い精度を支えているのは、次世代シーケンサー(NGS)を用いた高精度なDNA解析技術です。母体血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA断片を大量に読み取り、各染色体の量的比率を統計学的に解析することで、異常の有無を判定します。この方法は、従来のスクリーニング検査と比べて偽陽性率が格段に低いことが臨床研究によって実証されています。(4)
| 評価指標 | 統計数値(目安) | 医学的意味 |
|---|---|---|
| 感度(21トリソミー) | 99%以上 | 疾患がある人を正しく陽性と判定する確率 |
| 陰性的中率 | 99.9%以上 | 陰性と判定された際、実際に疾患がない確率 |
上記の表からも分かるように、NIPTの陰性的中率(Negative Predictive Value:NPV)は非常に高い水準にあります。これは、NIPTで陰性と判定された場合、対象となる染色体異常が実際に存在しない確率が99.9%以上であることを示しています。 このような高い陰性的中率が「NIPTで陰性なら安心」と言われる最大の理由です。(1)
ただし、陰性的中率は母体の年齢や対象疾患の有病率(事前確率)によっても変動します。一般的に、母体年齢が高くなるほど染色体異常のリスク(事前確率)が上がりますが、NIPTの陰性的中率は年齢にかかわらず極めて高い水準を維持しています。 一方で、陽性的中率は事前確率に大きく影響されるため、年齢が若い妊婦さんが陽性と判定された場合には、偽陽性の可能性が相対的に高くなることにも注意が必要です。(5)
NIPTで「低リスク」でも100%安心とは言えない理由

NIPTは染色体の数の異常(トリソミー等)を調べるものであり、構造的な異常や心疾患などの形態的異常、単一遺伝子疾患は検出できません。そのため、NIPTが陰性であっても、赤ちゃんのすべての健康状態が保証されるわけではないのです。(6)
1. 検出対象外となる疾患
NIPTの検査対象は主に13番、18番、21番の3つの常染色体のトリソミーに限定されています。以下のような疾患や異常は、NIPTの検出範囲外となります。
- 染色体の構造異常:転座(染色体の一部が別の染色体に移動)や逆位(染色体の一部が反転)など、染色体の形に関わる異常はNIPTでは検出できません。
- 単一遺伝子疾患:嚢胞性線維症や鎌状赤血球症などの代謝疾患、筋ジストロフィーといった微細な遺伝子変異に起因する疾患は対象外です。
- 形態的異常:先天性心疾患、口唇口蓋裂、四肢の形成異常などの先天奇形は、染色体の数的異常とは無関係に発生することがあり、NIPTでは発見できません。
- 多因子遺伝疾患:自閉スペクトラム症や知的障害など、複数の遺伝因子と環境因子が複雑に絡み合って発症する疾患もNIPTの対象外です。
2. 偽陰性が起こる稀な要因
胎児に実際に染色体異常があるにもかかわらず「陰性」と出る偽陰性は、非常にまれではありますが、以下のような要因で発生する可能性があります。(7)
- 限局性胎盤モザイク(Confined Placental Mosaicism:CPM):胎盤の一部の細胞のみに染色体異常があり、胎児自体の染色体は正常である(またはその逆の)状態です。NIPTは胎盤由来のDNA断片を主に解析するため、胎盤と胎児の染色体構成が異なる場合に偽陰性(または偽陽性)が生じることがあります。
- 胎児分画(Fetal Fraction:FF)の不足:母体血液中の胎児由来セルフリーDNAの割合を「胎児分画」と呼びます。この値が4%未満の場合、検査の信頼性が著しく低下し、正確な判定が困難になります。胎児分画が低くなる原因としては、採血時期が早すぎること、母体の肥満(BMIが高い場合)、多胎妊娠などが挙げられます。
- モザイク型トリソミー:胎児の体の一部の細胞のみにトリソミーが存在するモザイク型の場合、異常のある細胞の割合が低いとNIPTで検出されない可能性があります。
NIPTの陰性結果を受け取った後に知っておきたいこと
NIPTで陰性結果を受け取ると、多くの妊婦さんが安堵されることと思います。実際に、NIPTの陰性的中率は99.9%以上と非常に高く、対象とする染色体異常のリスクは極めて低いと判断できます。 しかし、以下の点を理解しておくことで、より安心して妊娠期間を過ごすことができるでしょう。(1)
- NIPTの陰性結果はスクリーニング検査の結果であることを理解する — 確定診断ではなく、あくまで対象疾患に対する「低リスク」判定です。不安がある場合は、かかりつけの産婦人科医や遺伝カウンセラーに相談しましょう。
- 定期的な妊婦健診を継続する — NIPTが陰性であっても、妊婦健診は赤ちゃんの発育状態や母体の健康を総合的に管理するために不可欠です。超音波検査で形態的な異常が確認されることもあります。
- NIPTの対象外の疾患について理解を深める — NIPTは主に3つのトリソミーを対象としており、すべての先天性疾患をカバーするものではありません。出生後に判明する疾患もあるという認識を持つことが大切です。
- 遺伝カウンセリングの活用を検討する — 検査結果の解釈に不安がある場合や、家族歴に遺伝性疾患がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることで、より正確な情報に基づいた意思決定が可能になります。(3)
- 精神的なサポートを大切にする — 出生前検査は妊婦さんにとって心理的な負担を伴うことがあります。パートナーや家族と検査結果について共有し、必要に応じて専門家のカウンセリングを受けることも検討してください。
NIPT陰性後の妊婦健診と超音波検査の重要性
NIPTで陰性結果を得た後も、通常の妊婦健診を継続することは非常に重要です。妊婦健診では超音波検査(エコー検査)を定期的に実施し、赤ちゃんの発育状態や形態的な異常の有無を確認します。NIPTでは検出できない先天性心疾患や四肢の形成異常などは、超音波検査で発見されることがあります。
特に、妊娠中期(18~20週頃)に行われる胎児スクリーニング超音波検査は、赤ちゃんの心臓や脳、脊椎、腎臓などの主要臓器の構造を詳しく観察する重要な検査です。NIPTが陰性であっても、この中期超音波検査を受けることが日本産科婦人科学会をはじめとする各国の医学ガイドラインでも推奨されています。(3)
また、妊娠後期においても胎児の成長曲線の確認や羊水量の評価、胎盤の位置確認などが行われます。これらの検査を総合的に活用することで、NIPTだけではカバーしきれない健康リスクについても早期に対応することが可能となります。妊婦健診は赤ちゃんと母体の両方の健康を守るための基本であり、NIPTの結果にかかわらず確実に受診するようにしましょう。
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よくあるご質問
Q1. NIPTで陰性なら、子供に障害がないと断定できますか?
A. いいえ、断定はできません。NIPTは特定の染色体異常(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)を高精度で調べるスクリーニング検査です。自閉スペクトラム症、知的障害、先天性心疾患、単一遺伝子疾患などは検出対象外であるため、陰性であってもすべての障害や疾患がないことを保証するものではありません。(6)
Q2. NIPTの陰性的中率99.9%とは具体的にどういう意味ですか?
A. 陰性的中率99.9%とは、NIPTで「陰性(低リスク)」と判定された方1,000人のうち、実際に対象の染色体異常がない方が999人以上であることを意味します。つまり、陰性結果を受け取った場合、対象疾患が存在する可能性は極めて低いといえます。ただし、0.1%未満の確率で偽陰性が生じる可能性はゼロではありません。(2)
Q3. NIPTが陰性でも羊水検査を受けるべきですか?
A. 通常、NIPTが陰性で超音波検査にも異常所見がなければ、羊水検査を追加で受ける医学的な必要性は低いと考えられています。ただし、超音波検査で気になる所見が見つかった場合や、家族歴に特定の遺伝性疾患がある場合には、担当医と相談のうえ羊水検査の実施を検討することがあります。
Q4. NIPTの偽陰性はどのくらいの確率で起こりますか?
A. NIPTの偽陰性率は対象疾患によって異なりますが、21トリソミー(ダウン症候群)に対しては0.1%未満とされています。18トリソミーや13トリソミーに対しても高い検出率を示しますが、21トリソミーと比較するとわずかに偽陰性率が高くなる傾向があります。偽陰性の主な要因としては、限局性胎盤モザイクや胎児分画の不足などが挙げられます。(4)
Q5. NIPTの陰性結果を受け取った後、特に注意すべきことはありますか?
A. NIPTが陰性であっても、定期的な妊婦健診は必ず継続してください。特に妊娠中期(18~20週頃)の胎児スクリーニング超音波検査は、NIPTでは検出できない形態的異常(先天性心疾患や脊椎の異常など)を確認するために非常に重要です。また、検査結果に不安がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。(3)
Q6. 胎児分画(FF)が低いと言われた場合、どうすればよいですか?
A. 胎児分画が4%未満と低い場合、検査結果の信頼性が低下するため、多くの場合は再採血・再検査が推奨されます。胎児分画は妊娠週数が進むにつれて増加する傾向があるため、1~2週間後に再度採血することで十分な胎児分画が得られるケースが多いです。再検査でも胎児分画が不足する場合には、羊水検査などの代替手段について担当医と相談してください。
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著者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。
【参考文献】
(1) 遺伝子検査・DNA鑑定のseeDNA, 2025年10月(2) Redirecting, 2011年11月
(3) 東京・ミネルバクリニック, 2026年3月
(4) 遺伝子検査・DNA鑑定のseeDNA, 2026年5月
(5) 東京・ミネルバクリニック, 2026年4月
(6) 厚生労働省, 2022年2月
(7) ヒロクリニック, 2021年9月