【医師が解説】NIPTは出生前診断の最終的な答えですか?

2026.04.19

▶ 結論

NIPTは出生前診断の最終的な答えではありません。NIPTは高精度なスクリーニング検査ですが、確定診断ではないため、「高リスク」と判定された場合は羊水検査または絨毛検査による確定診断が必要です。「低リスク」の結果もすべての染色体異常を否定するものではありません (1)。

NIPTとは何か?—高精度スクリーニング検査の定義

NIPTとは何か?—高精度スクリーニング検査の定義

NIPTとは、母体血液中に存在する胎盤由来の微量なDNA断片(cell-free fetal DNA:cffDNA)を解析し、胎児の染色体異常リスクを評価するスクリーニング検査です。採血のみで実施でき、妊娠10週前後から受検が可能です (1)。

NIPTの主な検査対象疾患

  • 21トリソミー(ダウン症候群)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • 13トリソミー(パトウ症候群)
  • 性染色体異常(ターナー症候群・クラインフェルター症候群など)※施設による
  • 微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)※施設による

NIPTの精度データ

28万件超の大規模研究(2018〜2021年)による結果は以下の通りです (1)。

疾患 感度 特異度 陽性的中率(PPV)
ダウン症候群(21トリソミー) 99.25% 99.98% 86.81%
エドワーズ症候群(18トリソミー) 98.33% 99.98% 56.81%
パトウ症候群(13トリソミー) 100.00% 99.97% 18.18%

出典:Heliyon, 2024年6月(n=282,911)

重要:高い感度・特異度にもかかわらず、PPVは疾患によって大きく異なります。NIPTは「リスク評価の検査」であり、「診断の検査」ではありません。

NIPTが確定診断にならない理由—偽陽性と陽性的中率(PPV)

NIPTが確定診断にならない理由—偽陽性と陽性的中率(PPV)

NIPTが確定診断にならない最大の理由は「偽陽性」の存在です。

偽陽性・陽性的中率(PPV)とは

● 偽陽性:実際には染色体異常のリスクが低いにもかかわらず、NIPTで「高リスク(異常あり)」と判定されるケース。
● PPV(陽性的中率):検査で「高リスク」と判定された人のうち、実際に疾患がある人の割合。PPVが低いほど偽陽性が多い。

具体的な解釈例(パトウ症候群・PPV 18.18%の場合)

  • NIPTで「高リスク」と判定された5人のうち、実際にパトウ症候群であるのは約1人
  • 残りの約4人は実際には染色体異常がない(偽陽性)

ダウン症候群とパトウ症候群のPPVが大きく異なる背景には、各染色体異常の発生頻度(有病率)の違いがあります。疾患の有病率が低いほど、PPVは低くなる傾向があります (1)。

偽陽性の主な原因:限局性胎盤モザイク(CPM)とは

偽陽性の主な原因:限局性胎盤モザイク(CPM)とは

NIPTの偽陽性の最大原因は「限局性胎盤モザイク(Confined Placental Mosaicism:CPM)」です (2)。

CPMとは:胎盤の染色体構成が異常であるにもかかわらず、胎児の染色体は正常である状態。NIPTはcffDNAの大部分が胎盤由来のため、胎盤のみの異常を「胎児の異常」として誤検出します。

CPMが偽陽性に関与する割合(染色体別)

染色体異常(疾患) CPMが偽陽性に関与する割合
21トリソミー(ダウン症候群) 約2%
18トリソミー(エドワーズ症候群) 約4%
13トリソミー(パトウ症候群) 約22%
45,X(ターナー症候群) 偽陽性例の最大59%

出典:The Obstetrician & Gynaecologist, 2023年(参考文献2)

特に性染色体異常(ターナー症候群など)では、偽陽性例の最大59%にCPMが関与していると報告されており、性染色体に関するNIPT結果の解釈には特別な注意が必要です (2)。

NIPTで検出できない異常:検査の範囲と限界

NIPTは染色体の数的異常のスクリーニングに特化した検査です。以下の異常は原則として検出対象外です。

  • 単一遺伝子疾患(フェニルケトン尿症、嚢胞性線維症など)
  • 多くの構造的な染色体異常(微小欠失・重複の一部)
  • 偽陰性(実際には異常があるのに低リスクと判定されるケース)も完全にゼロではない

NIPTがカバーできるのは先天性異常全体のごく一部です。「低リスク」の結果はすべての先天性疾患の否定を意味しません。

確定診断に必要な検査:絨毛検査と羊水検査の比較

確定診断に必要な検査:絨毛検査と羊水検査の比較

胎児の染色体を確定的に診断するには、以下の侵襲的検査が必要です。

絨毛検査(CVS)

妊娠11〜13週頃に腹部から細針を刺して絨毛(主に胎盤組織)を採取し、染色体を直接解析する検査。早期に結果が得られる利点がありますが、CPMの影響を完全には排除できない場合があります。

羊水検査

妊娠16週以降に羊水中の胎児由来細胞を採取・解析する検査。胎児細胞由来のためCPMによる偽陽性の影響を受けにくく、より正確に胎児の染色体を反映します。超音波異常を伴わない高リスクNIPT結果では推奨されるケースが多い。

流産リスクの比較

検査 実施時期 流産リスク(手技関連) CPM影響
絨毛検査(CVS) 妊娠11〜13週 約0.22%(95%CI: -0.71〜1.16%) あり(可能性)
羊水検査 妊娠16週以降 約0.11%(95%CI: -0.04〜0.26%) 受けにくい

出典:Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2015年1月(参考文献3)

熟練した医師による実施では、流産リスクは以前より低くなっています。担当医師と十分に相談の上で判断することが重要です (3)。

NIPTと確定診断の違い:比較表

項目 NIPT 絨毛検査(CVS) 羊水検査
検査の種類 スクリーニング(リスク評価) 確定診断 確定診断
実施時期 妊娠10週〜 妊娠11〜13週 妊娠16週〜
侵襲性 なし(採血のみ) あり(腹部穿刺) あり(腹部穿刺)
流産リスク なし 約0.22% 約0.11%
CPM影響 あり(偽陽性の原因) あり(可能性) 受けにくい
検出対象 染色体数的異常(限定的) 染色体全般 染色体全般
結果の確実性 リスク値(確率) 確定診断 確定診断

FAQ(よくある質問)

Q1. NIPTで「低リスク」が出れば、赤ちゃんは健康と考えてよいですか?

A. NIPTの「低リスク」は、検査対象となった染色体異常(主に21・18・13トリソミーなど)のリスクが低いことを示すに過ぎません。単一遺伝子疾患、多くの構造的染色体異常、形態異常などはNIPTの検出対象外です。また、偽陰性(実際には異常があるのに低リスクと出る)の可能性もゼロではありません。

Q2. NIPTで「高リスク」が出た場合、すぐに中絶を考えなければなりませんか?

A. 「高リスク」はあくまで可能性が高いことを示す結果であり、確定ではありません。まず絨毛検査または羊水検査による確定診断を受けることが推奨されます。確定診断の結果と医師・遺伝カウンセラーの説明を十分に聞いた上で判断することが重要です。

Q3. パトウ症候群のPPVが低いのはなぜですか?

A. PPVは検査の精度だけでなく、疾患の有病率(実際の発症頻度)にも大きく影響されます。パトウ症候群はダウン症候群より発生頻度が低いため、「高リスク」と判定された場合でも実際には異常がないケースの割合が高くなります。加えて、CPMの関与割合もパトウ症候群では約22%と高く、偽陽性率を押し上げています (1)(2)。

Q4. 羊水検査と絨毛検査はどちらを選ぶべきですか?

A. NIPTで高リスク結果が出て超音波で異常が見当たらない場合、羊水検査が推奨されるケースが多いです。これはCPMの影響を受けにくいためです。一方、絨毛検査は妊娠初期に実施できる利点があります。いずれの選択も担当医師と十分に相談してください (2)。

Q5. NIPTを受ける前に知っておくべき最も重要なことは何ですか?

A. NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではないという点が最も重要です。「高リスク」でも確定ではなく、「低リスク」でもすべての異常を否定できません。検査前に医師または遺伝カウンセラーによるカウンセリングを受け、結果の解釈方法と次のステップを理解した上で受検することが推奨されます。

まとめ:NIPTは「最初の一歩」であり「最終的な答え」ではない

NIPTは高精度な出生前スクリーニング検査ですが、確定診断ではありません。以下の3点を正確に理解することが、適切な意思決定につながります。

① 「高リスク」=確定ではない。疾患によってPPVは大きく異なる(例:パトウ症候群のPPV 18.18%)
② 「低リスク」でもすべての先天性異常が否定されるわけではない
③ 確定診断が必要な場合は、絨毛検査または羊水検査を受ける

出生前検査は複数の情報を組み合わせながら段階的に進めるプロセスです。医師・遺伝カウンセラーと十分に相談し、正確な情報に基づいた意思決定をすることが重要です。

\妊娠中にダウン症や性染色体のリスクがわかる/

【参考文献】

(1) Heliyon, 2024年6月
(2) The Obstetrician & Gynaecologist, 2023年
(3) Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2015年1月

seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート

seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
お腹の赤ちゃん疾患リスクの不安や血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、DNA鑑定の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。

【専門スタッフによる無料相談】

seeDNA遺伝医療研究所のお客様サポート

ご不明点などございましたら
弊社フリーダイヤルへお気軽にご連絡ください。


\土日も休まず営業中/
営業時間:月~日 9:00-18:00
(祝日を除く)

著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。

電話で無料相談0120-919-097 メール・お問い合わせ
各検査の費用と期間 メール/Webからお問い合わせ