リライティング日:2026年04月06日
NIPTの陽性率を正しく理解するために、検出感度と陽性的中率(PPV)の違い、疾患別・年齢別の精度差、偽陽性が生じるメカニズム、陽性結果が出た場合の具体的な対処法を専門医の視点から詳しく解説します。
「NIPTを受けたら、どのくらいの確率で陽性になるのだろう?」
出生前検査をご検討中の妊婦さんから、このようなご質問をよくいただきます。NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing:非侵襲的出生前遺伝学的検査)は、母体の血液中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cfDNA)を解析することで、胎児の染色体異常のリスクを評価する検査です。精度の高い検査として知られていますが、「陽性=病気が確定」というわけではありません。
NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、陽性結果が出たとしても、それは「リスクが高い」ことを示すに過ぎません。確定診断には、羊水検査や絨毛検査といった侵襲的な検査が必要です。この点を十分に理解しておくことが、検査結果に対する冷静な判断につながります。
この記事では、専門医の視点から疾患ごとの実際の陽性率や、検査結果の数字の本当の意味、そして陽性になった場合の考え方について分かりやすく解説します。NIPTの陽性率に関する正確な知識を得ることで、不安に振り回されることなく、冷静に次のステップを検討できるようになります。なお、日本では2022年に出生前検査認証制度等運営委員会が設立され、NIPTの適切な実施体制の整備が進められています。こうした制度面の動向を知っておくことも、安心して検査を受けるための一助となるでしょう。(1)
NIPTの「陽性率」を理解するための2つの重要キーワード
NIPTの陽性率を正しく理解するためには、以下の2つの視点を区別することが非常に重要です。この2つの概念は医学的な検査全般に通じる基本ですが、特にNIPTにおいては結果の解釈に大きく影響します。医療統計学の基礎を理解することで、検査結果に対して過度に不安を感じることなく、適切な判断ができるようになります。
- 検出感度(感度/Sensitivity):実際に疾患がある赤ちゃんのなかで、検査結果が正しく「陽性」となる割合です。感度が高いほど、疾患を見逃す確率が低いことを意味します。NIPTの主要な検査対象である21トリソミーでは、感度が99%以上と非常に高い水準にあります。しかし、感度が高い=陽性が全て正しいわけではないことに留意が必要です。
- 陽性的中率(PPV:Positive Predictive Value):検査で「陽性」と判定された人のなかで、本当に赤ちゃんに疾患がある確率です。PPVは疾患の有病率(どのくらいの頻度で起こるか)に大きく左右されます。有病率が低い疾患ほど、感度が高くてもPPVは低下するという統計的特性があります。
この二つを混同すると、結果の意味を大きく誤解してしまう可能性があります。例えば、NIPTの検出感度が99%と聞くと、「陽性と出たら99%の確率で赤ちゃんに異常がある」と思いがちですが、それは正しくありません。実際の「陽性的中率(PPV)」は、妊婦さんの年齢や対象となる疾患によって大きく異なります。疾患の発生頻度が低い場合、感度が非常に高くてもPPVは大幅に低下するという統計的な特性があるのです。この現象はベイズの定理として知られる確率論の基本原理に基づいており、NIPTに限らずあらゆるスクリーニング検査に共通する性質です。(2)
感度とPPVの違いを身近な例で理解する
例えば、1,000人の妊婦さんのうち実際に疾患をもつ赤ちゃんが1人しかいない場合を考えてみましょう。検査の感度が99%であれば、その1人はほぼ確実に「陽性」と判定されます。しかし同時に、残りの999人のなかからも偽陽性(本当は陰性なのに陽性と出てしまうケース)が数名出る可能性があります。仮に検査の偽陽性率(特異度の裏返し)が0.5%だとすると、999人中約5人が偽陽性となります。結果として、陽性と判定された6人(真陽性1人+偽陽性5人)のうち、実際に疾患をもつ赤ちゃんは1人だけ。つまりPPVは約17%にしかなりません。感度99%の検査であっても、有病率が低ければPPVはここまで下がり得るのです。この原理を理解しておくことが、NIPTの結果を正しく解釈するための第一歩となります。
さらに補足すると、NIPTの特異度(疾患がない赤ちゃんを正しく「陰性」と判定する割合)は99.9%以上と報告されています。特異度が極めて高いおかげで偽陽性の発生率は低く抑えられていますが、それでも有病率の低い疾患に対しては偽陽性が一定数生じることを避けられません。検査精度の高さと、結果の解釈における注意点の両方を理解しておくことが重要です。(3)
【疾患別】NIPTの陽性率と精度の違い
NIPTで検査可能な疾患にはいくつかの種類があり、それぞれ検出感度と陽性的中率に差があります。疾患ごとの陽性率(検出感度と陽性的中率)の目安を詳しく見ていきましょう。NIPTの検査対象は大きく分けて、常染色体トリソミー(21・18・13トリソミー)、性染色体異常、微小欠失症候群の3つのカテゴリに分類されます。それぞれの精度特性を正確に把握することが、検査結果の適切な解釈につながります。
1. 最も対象となることが多い「21・18・13トリソミー」
NIPTで最も頻繁に検査されるのが、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)です。これら3つの常染色体トリソミーは、NIPTの主要な検査対象であり、最も多くの研究データが蓄積されています。世界各国で大規模な臨床試験が実施されており、その検査精度に関するエビデンスは豊富です。
| 疾患名 | 検出感度 | 陽性的中率(PPV) |
|---|---|---|
| 21トリソミー | 99.3% | 82% |
| 18トリソミー | 97%台 | 37% |
| 13トリソミー | 97%台 | 49% |
※数値は一般的な報告に基づく目安です。
NIPTはこれらの疾患に対する検出感度は非常に高い(97〜99%以上)ものの、陽性的中率は疾患の発生頻度によって異なります。発生頻度が低い18トリソミーや13トリソミーでは、21トリソミーに比べて陽性的中率が相対的に低くなる(偽陽性が増える)傾向があります。
21トリソミー(ダウン症候群)は出生時の染色体異常のなかで最も発生頻度が高く、約700〜800出生に1人の割合で発生するとされています。そのため、NIPTにおいてもPPVが82%と比較的高い値を示します。一方、18トリソミー(エドワーズ症候群)は約3,500〜8,500出生に1人、13トリソミー(パトウ症候群)は約10,000〜20,000出生に1人と発生頻度が低く、PPVも相対的に低い数値となります。
なお、18トリソミーと13トリソミーは重篤な合併症を伴うことが多く、出生後の予後も21トリソミーとは大きく異なります。18トリソミーの場合、生後1年の生存率は約5〜10%程度とされ、13トリソミーではさらに低いとされています。そのため、これらの疾患が疑われた場合は、出生後の医療体制やケアの準備を含めた包括的な相談が必要となります。(2)(4)
2. 年齢によって「陽性が本当に当たる確率」は変わる
さらに重要なポイントとして、陽性的中率(PPV)は母体年齢などの事前確率に大きく依存します。例えば、21トリソミーの発生頻度は母体年齢とともに上昇するため、若い妊婦さんでは陽性と出てもPPVは低く、高齢の妊婦さんではPPVが高くなります。これはベイズの定理に基づく統計的な必然であり、検査そのものの精度が年齢によって変わるわけではありません。
具体的には、25歳の妊婦さんの場合、21トリソミーの有病率は約1/1,300程度と低いため、NIPTで陽性が出てもPPVは50%程度にとどまるケースがあります。一方、40歳以上の妊婦さんでは有病率が約1/100程度まで上昇するため、PPVは90%以上に達することもあります。同じ検査性能でも、妊婦さんの背景によって結果の解釈が変わる点に注意が必要です。
年齢ごとのリスクの違いを理解するために、以下の目安をご参照ください。
- 20代前半:21トリソミーの有病率は約1/1,500〜1/1,300。NIPTで陽性が出てもPPVは40〜50%程度の可能性があります。
- 30代前半:有病率は約1/900〜1/600程度に上昇。PPVも60〜70%台に向上する傾向があります。
- 35歳以上:有病率は約1/350〜1/250。PPVは80%前後に達し、検査の信頼性が高まります。
- 40歳以上:有病率は約1/100以上に上昇。PPVは90%以上となり、陽性結果の信頼度が非常に高くなります。
ACOG(米国産科婦人科学会)のガイドラインでも、NIPTの結果を解釈する際には母体年齢やその他のリスク因子を考慮することの重要性が強調されています。特に若い妊婦さんがNIPTで陽性と判定された場合は、偽陽性の可能性がより高いため、確定的検査による確認がより一層重要となります。ACOGは2020年のPractice Bulletinにおいて、すべての妊婦にNIPTを含む出生前スクリーニングのオプションを提示すべきとしつつも、陽性結果の解釈には個別のリスク評価が不可欠であると明記しています。(5)
3. 意外と多いが解釈が難しい「性染色体異常」
性染色体異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)は、NIPTの検出感度としては常染色体トリソミーと同等(約100%)です。しかし、陽性的中率については疾患によってばらつきがあります。
- 性染色体トリソミー(クラインフェルター症候群:47,XXYなど):PPVは57.5〜100%と比較的高値を示します。クラインフェルター症候群は約500〜1,000人に1人の割合で発生し、比較的頻度が高い性染色体異常です。
- ターナー症候群(45,X):PPVは14.5〜32%と偽陽性の割合が高くなります。これは胎盤限局性モザイク(CPM)の影響が大きいためです。
- トリプルX症候群(47,XXX)やXYY症候群(47,XYY):PPVは疾患によって異なりますが、概ね50〜80%の範囲で報告されています。
ターナー症候群などで偽陽性が多くなる背景には、胎盤の細胞だけに異常がある「胎盤限局性モザイク(CPM:Confined Placental Mosaicism)」や、お母さん自身の細胞の変化などが影響していると考えられています。NIPTは母体血中に浮遊する胎児由来のcfDNA(セルフリーDNA)を解析する検査ですが、このcfDNAの大部分は実際には胎盤の栄養膜細胞に由来しています。そのため、胎盤にだけ染色体異常がある場合(CPM)には、胎児自体は正常であっても検査結果が陽性となってしまうことがあります。
また、母体の加齢に伴うX染色体の喪失(加齢性モザイク)も、ターナー症候群の偽陽性に寄与する要因の一つです。女性は加齢とともに一部の血液細胞でX染色体が失われることがあり、これがNIPTの解析結果に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、性染色体異常は症状の幅が広く、出生後まで気づかれないケースもあるため、「陽性とわかった後にどう対応するか」という倫理的・心理的な難しさがあります。クラインフェルター症候群(47,XXY)の場合、多くの方は通常の生活を送り、成人期になるまで診断されないことも珍しくありません。そのため、NIPTで性染色体異常の陽性判定が出た場合の対応は、ご本人やパートナーの価値観に大きく関わる問題となります。遺伝カウンセリングにおいて、各疾患の臨床像や予後について十分な情報提供を受けることが不可欠です。(3)
4. 慎重な判断が必要な「微小欠失症候群」
近年、追加オプションとして微小欠失症候群(染色体のごく一部が欠ける疾患)を検査できる施設も増えています。代表的な22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群とも呼ばれる)などがありますが、これらは有病率が非常に低い(稀な疾患である)ため、注意が必要です。
微小欠失症候群の検査精度:検出感度 約20〜100%、陽性的中率 約3〜100%と非常にばらつきが大きい。
有病率が低い疾患では、検査自体の感度が高くても、統計学的に陽性的中率が極端に低くなりやすい特徴があります。つまり、微小欠失症候群のNIPTは「陽性=病気が確定」とは言えない領域であり、常染色体トリソミーよりもさらに慎重な解釈が求められます。微小欠失の領域は非常に小さく、検査技術的にも解析の難易度が高いため、偽陽性のリスクも増大します。
22q11.2欠失症候群は約4,000出生に1人の頻度とされ、微小欠失症候群のなかでは比較的頻度が高いものの、NIPTのPPVは施設や解析手法によって大きく異なります。ある大規模研究では、22q11.2欠失に対するNIPTのPPVはわずか5〜20%程度にとどまったと報告されています。このように、微小欠失症候群のスクリーニングは技術的にまだ発展途上の段階にあり、陽性結果が出た場合には染色体マイクロアレイ解析やFISH法などの精密検査で確認することが強く推奨されます。
微小欠失症候群の検査を希望される場合は、検査の限界を十分に理解した上で、遺伝カウンセラーや専門医と相談されることを強くお勧めします。(6)
NIPTの「偽陽性」が起こるメカニズムとは
NIPTで偽陽性が生じる原因を理解しておくと、陽性結果を受け取った際に冷静に対処できるようになります。偽陽性とは、赤ちゃん自体には染色体異常がないにもかかわらず、検査結果が「陽性(高リスク)」と判定されてしまうことを指します。偽陽性の主な原因には以下のようなものがあります。
- 胎盤限局性モザイク(CPM):胎盤の一部にのみ染色体異常があり、胎児自体は正常である状態です。NIPTが解析するcfDNAの大部分が胎盤由来であるため、これがもっとも頻度の高い偽陽性の原因となります。CPMは全妊娠の1〜2%程度で発生するとされており、特に13トリソミーや性染色体異常のスクリーニングにおいて影響が大きいことが知られています。
- 母体の染色体異常:母体自身にモザイク型の染色体異常がある場合や、加齢に伴う体細胞のX染色体の喪失(加齢性モザイク)などが検査結果に影響を与えることがあります。これは特に性染色体異常の偽陽性に関連しています。高齢の妊婦さんほど、加齢性モザイクの影響を受けやすいとされています。
- 双胎の一方の消失(バニシングツイン):初期の双胎妊娠で一方の胎児が消失した場合、消失した胎児のcfDNAが残存し、偽陽性を引き起こすことがあります。バニシングツインは全妊娠の約20〜30%で起こるとする報告もあり、特に体外受精(IVF)による妊娠では頻度が高いとされています。(7)
- 母体の腫瘍:非常にまれですが、母体に腫瘍(良性・悪性を問わず)がある場合、腫瘍由来の異常なcfDNAが検査結果に干渉することが報告されています。実際に、NIPTの異常結果をきっかけに母体の悪性腫瘍が発見されたケースも文献上に報告されています。(8)
- 技術的要因:cfDNAの胎児分画(fetal fraction)が低い場合や、解析アルゴリズムの限界により、正確な判定が困難になることがあります。胎児分画が4%未満の場合、検査の信頼性が低下するため、再検査や他の検査法を検討する必要があります。
これらの原因を踏まえると、NIPTの陽性結果を受け取った際に「確定ではない」ことを理解し、次のステップとして確定的検査を検討することの重要性がより明確になります。偽陽性のメカニズムは複雑ですが、いずれの場合も確定的検査(羊水検査や絨毛検査)によって正確な診断が可能です。
NIPTの「偽陰性」にも注意が必要
NIPTの偽陽性について理解することは重要ですが、偽陰性(本当は疾患があるのに「陰性」と判定されるケース)の可能性についても知っておく必要があります。NIPTの陰性的中率(NPV:Negative Predictive Value)は99.9%以上と極めて高く、陰性結果が出た場合に赤ちゃんが健康である確率は非常に高いと言えます。
しかし、100%ではないことも事実です。偽陰性が生じる原因としては、以下のようなものが考えられます。(5)
- 胎児分画の低さ:母体血中の胎児由来cfDNAの割合(胎児分画)が低い場合、染色体異常のシグナルが十分に検出されないことがあります。胎児分画は妊娠週数や母体のBMIなどに影響されます。
- モザイク型の染色体異常:胎児の一部の細胞にのみ染色体異常がある「モザイク型」の場合、異常のシグナルが弱く、検出されにくいことがあります。
- 技術的限界:特に微小欠失症候群や稀な染色体異常では、解析技術の限界により偽陰性が生じる可能性があります。
偽陰性のリスクは非常に低いものの、NIPTの陰性結果がすべての染色体異常や遺伝的疾患を否定するものではないことを理解しておくことが大切です。NIPTで検査できるのは特定の染色体異常のみであり、すべての遺伝的疾患をカバーしているわけではありません。通常の妊婦健診やエコー検査を引き続き受けることが推奨されます。
大切なのは「陽性率」よりも結果との向き合い方
ここまでの内容を整理すると、対象疾患が広がるにつれて陽性的中率(PPV)は段階的に低下していく傾向があります。常染色体トリソミーのPPVが比較的高いのに対し、性染色体異常ではばらつきが大きくなり、微小欠失症候群ではさらに不安定な数値となります。
最も心に留めておいていただきたいのは、「NIPTは確定診断ではなく、あくまでスクリーニング(ふるい分け)検査である」という事実です。万が一「陽性(高リスク)」と判定された場合でも、羊水検査などの確定的検査を経て、初めて診断が確定します。
NIPTの最大の利点は、非侵襲的(お母さんの血液を採取するだけ)であるため、流産のリスクがないことです。一方で、確定的検査である羊水検査や絨毛検査には、わずかではありますが流産のリスク(約0.1〜0.3%程度)が伴います。NIPTはこの侵襲的な検査を受けるべきかどうかを判断するための「第一段階のスクリーニング」として位置づけられています。
数字だけで一喜一憂するのではなく、結果が意味するところを正しく理解することが何より大切です。NIPTで陰性(低リスク)と判定された場合も、100%疾患がないことを保証するものではありません(偽陰性の可能性もわずかに存在します)。しかし、NIPTの高い陰性的中率(NPV:99.9%以上)を考慮すると、陰性結果は非常に高い確度で赤ちゃんが健康であることを示しています。
NIPTを受けるかどうか、またどの検査項目を選択するかは、妊婦さんご自身とパートナーの意思決定に委ねられます。検査前に十分な情報提供と遺伝カウンセリングを受けることで、ご自身にとって最善の選択ができるようになります。日本においても、出生前検査認証制度のもとで適切な検査体制の整備が進められており、認証施設では検査前後の遺伝カウンセリングが義務づけられています。(1)(5)
NIPTで陽性判定が出た後の具体的なステップ
万が一NIPTで陽性判定を受けた場合、以下のステップに沿って対応することが推奨されます。焦りや不安を感じるのは自然なことですが、一つひとつのステップを丁寧に踏むことが、最善の判断につながります。
- まずは冷静に受け止める:NIPTの陽性はあくまでスクリーニング結果であり、確定診断ではありません。特に18トリソミー、13トリソミー、性染色体異常、微小欠失症候群では偽陽性の可能性が一定程度あることを思い出しましょう。陽性結果=赤ちゃんに疾患があるということではないのです。
- 遺伝カウンセリングを受ける:検査結果の意味や今後の選択肢について、遺伝カウンセラーや専門医から詳しい説明を受けましょう。結果の数値が具体的にどのような意味をもつのか、ご自身の年齢やリスク因子を踏まえた個別の解釈を聞くことができます。遺伝カウンセリングでは、疾患の臨床像や予後、利用可能なサポート体制についても情報を得ることができます。
- 確定的検査の検討:羊水検査や絨毛検査を受けるかどうかを検討します。確定的検査によって、NIPTの結果が真陽性か偽陽性かを判断できます。確定的検査にはわずかなリスクが伴うため、メリット・デメリットを十分に理解した上で決断することが重要です。羊水検査は通常妊娠15〜20週頃に行われ、染色体の核型分析により確定診断を得ることができます。(5)
- パートナーや家族と話し合う:検査結果や今後の方針について、パートナーやご家族と十分に話し合いましょう。心理的なサポートを得ることは、精神的な負担を軽減する上で非常に重要です。一人で抱え込まず、信頼できる方と気持ちを共有することが大切です。
- 専門家のサポートを活用する:必要に応じて、心理カウンセラーやサポートグループの利用も検討しましょう。NIPTの結果に対する不安やストレスを専門家と共有することで、より落ち着いた判断ができるようになります。多くの地域で、出生前診断に関するピアサポートグループや相談窓口が設けられています。
確定的検査を受けるかどうかの判断ポイント
確定的検査(羊水検査・絨毛検査)を受けるかどうかは、非常に個人的な判断です。判断にあたっては、①NIPTで陽性となった疾患の種類とそのPPV、②ご自身の年齢や家族歴に基づく事前リスク、③確定的検査のリスク(約0.1〜0.3%の流産リスク)、④検査結果を知ることで得られる準備や安心感、⑤ご自身とパートナーの価値観や希望、これらを総合的に考慮することが推奨されます。遺伝カウンセラーは、これらの要素を整理し、ご自身にとって最善の選択ができるようサポートしてくれます。
まとめ:検査を受ける前にパートナーと話し合いを
NIPTを受ける前に、「もし陽性という結果が出たらどうするか」を事前にパートナーと話し合っておくことは、精神的な準備として非常に有効です。
本記事で解説したように、NIPTの陽性率は疾患の種類や妊婦さんの年齢によって大きく異なります。21トリソミーのPPVは約82%と比較的高い値を示しますが、18トリソミーでは37%、性染色体異常のターナー症候群では14.5〜32%、微小欠失症候群では3〜100%と、検査対象が広がるほどPPVは不安定になります。
検査前に知っておくべきポイントを改めて整理します。
- NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではない
- 検出感度が高くても、陽性的中率(PPV)は疾患や年齢によって大きく異なる
- 陽性結果が出ても、偽陽性の可能性が常にある
- 確定診断には羊水検査や絨毛検査が必要
- 陰性結果も100%の保証ではないが、陰性的中率は99.9%以上と極めて高い
- 検査の解釈には遺伝カウンセリングが不可欠
NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではないことを常に念頭に置いてください。陽性結果が出た場合でも、遺伝カウンセリングや確定的検査を経ることで、正確な診断に到達することができます。
数字の意味や限界をしっかりと理解したうえで、安心して検査に臨んでください。seeDNA遺伝医療研究所では、検査前後のご不安やご質問に対して、専門スタッフが丁寧に対応いたします。検査についてのご不明点や、結果の解釈に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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よくあるご質問
Q1. NIPTで21トリソミーが陽性だった場合、本当にダウン症である確率は?
A. 21トリソミー(ダウン症候群)の陽性的中率(PPV)は約82%と報告されています。NIPTは非常に感度が高い検査(99.3%)ですが、確定診断ではないため、最終的な確認には羊水検査などの確定的検査が必要です。また、PPVは妊婦さんの年齢によっても変動し、25歳前後では50%程度にとどまる一方、40歳以上では90%以上に達することもあります。(2)
Q2. 18トリソミーや13トリソミーの陽性的中率はどのくらいですか?
A. 18トリソミーの陽性的中率(PPV)は37%、13トリソミーは49%と報告されており、21トリソミーに比べて低くなる傾向があります。これは疾患の発生頻度が低いためであり、陽性判定が出ても実際には疾患がない(偽陽性)の可能性が21トリソミーよりも高くなります。確定的検査による確認が特に重要な疾患と言えます。(2)
Q3. NIPTの陽性的中率は年齢によってどのくらい変わりますか?
A. 陽性的中率(PPV)は母体年齢に大きく依存します。例えば21トリソミーの場合、25歳前後の若い妊婦さんではPPVが50%程度にとどまるケースがある一方、40歳以上の方ではPPVが90%以上に達することもあります。これは年齢とともに21トリソミーの有病率(事前確率)が上昇するためです。同じ検査結果でも年齢によって解釈が異なるため、遺伝カウンセリングで個別の説明を受けることが重要です。(5)
Q4. 微小欠失症候群のNIPT検査における注意点は?
A. 微小欠失症候群は有病率が非常に低いため、陽性的中率(PPV)が約3〜100%と極めて幅広く、統計的に不安定な側面があります。特に22q11.2欠失症候群のPPVは5〜20%程度にとどまるとする報告もあり、「陽性=確定」とは言えません。常染色体トリソミーよりも慎重な解釈が必要であり、検査を希望される場合は事前に遺伝カウンセラーや専門医と十分に相談することをお勧めします。(6)
Q5. NIPTで陽性と判定された場合、次にどうすればよいですか?
A. NIPTで陽性と判定された場合は、まず遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。その上で、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を受けるかどうかを検討します。確定的検査によって初めて診断が確定しますので、NIPTの陽性結果だけで判断を急がないことが大切です。パートナーやご家族と十分に話し合い、専門家のサポートを活用してください。(5)
Q6. NIPTで偽陽性が起こる原因は何ですか?
A. NIPTの偽陽性の主な原因として、胎盤限局性モザイク(CPM)、母体自身の染色体変化(加齢性モザイクなど)、双胎の一方の消失(バニシングツイン)、まれに母体の腫瘍などが挙げられます。NIPTが解析するcfDNAの大部分が胎盤由来であるため、胎盤にのみ染色体異常がある場合に偽陽性が生じやすくなります。また、胎児分画が低い場合にも結果の信頼性が低下することがあります。
Q7. NIPTの陰性結果は100%信頼できますか?
A. NIPTの陰性的中率(NPV)は99.9%以上と極めて高いため、陰性結果の信頼性は非常に高いと言えます。しかし、偽陰性の可能性がごくわずかに存在することも事実です。また、NIPTで検査できるのは特定の染色体異常のみであり、すべての遺伝的疾患をカバーしているわけではありません。通常の妊婦健診やエコー検査を引き続き受けることが推奨されます。(3)
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著者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。
【参考文献】
(1) J Clin Med, 2022年6月(2) 出生前検査認証制度等運営委員会, 2021年3月
(3) メディカルドック, 2026年3月
(4) BMJ Open, 2016年1月
(5) Diagn Cytopathol, 2016年2月
(6) 妊娠・出産お役立ちコラム, 2025年12月
(7) The American College of Obstetricians and Gynecologists, 2020年2月
(8) Int J Cancer, 2015年7月