DNA鑑定で父子関係が否定された場合、法律上の親子関係はどうなる?

2021.06.16

リライティング日:2025年03月03日

DNA鑑定で父子関係が否定されても、法律上の親子関係は直ちに解消されない場合があります。嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認訴訟など、法的手続きと期限を詳しく解説します。

父子のDNA鑑定を行う上で、知っておくべきこと

父子のDNA鑑定を行う上で、知っておくべきことDNA鑑定で父子関係否定の結果が出た場合、法律上の親子関係はどうなるのでしょうか?男性にとって、血のつながった自分の子どもであるか否かは非常に重大な問題です。近年ではDNA鑑定技術の飛躍的な進歩により、99.99%以上の精度で生物学的な親子関係を判定することが可能になっています。しかし、生物学上の事実と法律上の親子関係は必ずしも一致するとは限りません。

そこで今回は、父子のDNA鑑定を行う上で知っておくべき法律や手続きに関する内容を、判例や民法の規定を交えながら詳しく解説します。

まず結論から説明しますと、不幸にも父子関係が認められないという鑑定結果が得られた場合でも、離婚の有無に関わらず法律上は親子関係が続くことがあります。すなわち、生物学上は親子でなくても法律上は親子ということになるのです。この点は多くの方が驚かれるところですが、日本の民法には子どもの法的安定性を守るための仕組みが設けられており、DNA鑑定の結果だけでは自動的に親子関係が解消されるわけではありません。(1)

嫡出推定制度とは何か

嫡出推定制度とは何か日本の民法には「嫡出推定」と呼ばれる制度があります。これは、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どもは、法律上、夫の子であると推定するという規定です(民法772条)。具体的には、以下のように定められています。

  • 妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定される
  • 婚姻の成立の日から200日を経過した後に出生した子は、婚姻中に懐胎したものと推定される
  • 婚姻の解消(離婚)または取消しの日から300日以内に出生した子は、婚姻中に懐胎したものと推定される

この嫡出推定制度は、子どもの身分を早期に安定させるために設けられた制度であり、子どもの福祉を最優先に考えた法的枠組みです。そのため、たとえDNA鑑定によって生物学的な父子関係が否定されたとしても、嫡出推定が及ぶ子どもについては、所定の法的手続きを経なければ親子関係を解消することはできません。(2)

平成26年7月17日の最高裁判例

平成26年7月17日の最高裁判例嫡出推定とDNA鑑定の関係を理解する上で、極めて重要な判例が平成26年7月17日の最高裁判決です。(1)

この事案では、夫と子の間に生物学上の父子関係が認められないことがDNA鑑定という科学的証拠により明らかであり、既に妻と離婚し、別居したのち、子が妻の下で監護されているという事実がありました。にもかかわらず、最高裁は親子関係不存在確認の訴えを認めませんでした。

これは、DNA鑑定の結果よりも、長い間その夫の子として日常生活を送ってきたという関係性が重要視されたことを意味します。裁判所は、嫡出推定制度の趣旨は子の身分関係の法的安定を保護する点にあり、科学技術の発達によって生物学上の父子関係を高い精度で確認できるようになったとしても、そのことをもって直ちに法律上の親子関係を否定することは相当でないと判断しました。(3)

今までずっと子どもとして育ってきたのに、ある日突然、父子関係が存在しなかったこととなるのは、子どもの精神面、金銭面などを含めての不利益が大きすぎるという考え方が根底にあります。具体的には、戸籍の変更、扶養義務の消滅、相続権の喪失など、子どもの生活基盤を根本から揺るがすおそれがあるためです。

嫡出否認の訴え ― 父子関係を法的に否認する方法

それでは、父子関係を取り消すことはできないのでしょうか?父親が自分の子どもではないと法律的に認めてもらう方法に「嫡出否認の訴え」があります。

嫡出否認の訴えとは、嫡出子(婚姻関係にある男女の子)であると推定された子について、「この子は自分の子ではない」と否認するための法的手続きです。この手続きを行う際に、DNA鑑定の結果は極めて有力な証拠となります。

嫡出否認の訴えに関する重要なポイント

嫡出否認の訴えに関して、特に注意すべき点を以下にまとめます。

  1. 申立権者:原則として父親(夫)から申し立てを行います。なお、令和4年の民法改正(令和6年4月1日施行)により、子や母からの申立ても認められるようになりました。(4)
  2. 申立期間の確認:改正前の民法では、子どもの出生を知った時から1年以内と定められていました。改正後は、夫については子の出生を知った時から3年以内、子については自己が出生した時から3年以内、母については子の出生の時から3年以内と、期間が延長されています。(4)
  3. 管轄裁判所:子の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
  4. 証拠としてのDNA鑑定:DNA鑑定の結果は嫡出否認において非常に強力な証拠となりますが、法的鑑定として認められるためには、適切な試料採取手順や第三者の立会いなど、厳格な手続きが求められます。

すなわち、所定の期限を過ぎてしまいますと、DNA鑑定で親子関係がなかったとしても嫡出否認の訴えを申し立てることができなくなります。子どもの社会生活における法的な安定性を重視するため、限られた期間でしか申し立てができない仕組みになっているのです。

親子関係不存在確認訴訟 ― もう一つの法的手段

また、夫の子を妊娠することができないことが明らかである場合(夫が長期の遠方出張中、別居等で子の母と性的交渉がなかったなど)は、「親子関係不存在確認訴訟」を申し立てることができます。これは、嫡出推定が及ばない場合、すなわち「推定の及ばない子」に該当するケースで利用される訴訟類型です。

嫡出否認の訴えと親子関係不存在確認訴訟の違い

項目嫡出否認の訴え親子関係不存在確認訴訟
申立期間出生を知ってから原則3年以内(改正後)期間制限なし
申立権者父・母・子(改正後)利害関係人(父・母・子など)
適用場面嫡出推定が及ぶ子嫡出推定が及ばない子

親子関係不存在確認訴訟は、嫡出否認の訴えとは異なり、申し立てできる期間に制限がありません。また、父親だけでなく、母親や子どもからも訴えを起こすことができます。ただし、前述の平成26年最高裁判例が示すとおり、嫡出推定が及ぶケースではこの訴訟類型を用いることはできないとされており、適用範囲は限定的である点に注意が必要です。(3)

DNA鑑定を法的に有効なものにするために

裁判や調停でDNA鑑定の結果を証拠として提出するためには、「法的鑑定(裁判用鑑定)」として適切な手順で行われたDNA鑑定であることが重要です。個人的に行った私的鑑定は参考資料としては用いられる場合もありますが、証拠としての信頼性や証拠能力の面で争われる可能性があります。

法的鑑定として認められるためには、以下の要件を満たすことが一般的に求められます。

  • 第三者(弁護士など)の立会いのもとで試料を採取すること
  • 被験者本人の本人確認を厳格に行うこと
  • 試料の採取から鑑定機関への送付まで、改ざんが行われていないことを証明するチェーン・オブ・カストディ(証拠保全の連鎖)が確保されていること
  • 鑑定機関が国際的に認められた品質基準を満たしていること
  • 鑑定報告書に鑑定者の署名および鑑定機関の認証情報が明記されていること

seeDNAでは全国150カ所以上の法律事務所と提携し、法のプロフェッショナルである弁護士の立ち会いのもとで、信頼性の高い法的DNA鑑定を実施しています。鑑定結果は裁判や調停などの法的手続きに利用することが可能です。

令和4年民法改正による嫡出否認制度の変更点

令和4年(2022年)に成立し、令和6年(2024年)4月1日から施行された改正民法では、嫡出否認制度に大きな変更が加えられました。主な変更点は以下のとおりです。(4)

  • 否認権者の拡大:従来は夫のみに認められていた嫡出否認の訴えが、子および母にも認められるようになりました。
  • 否認権行使期間の延長:従来の「出生を知った時から1年」から、「3年」へと延長されました。
  • 再婚後の嫡出推定の見直し:女性の再婚禁止期間が廃止され、子の出生の時点で母が再婚している場合には再婚後の夫の子と推定される規定が新設されました。

この改正により、子ども自身や母親の立場からも嫡出否認を求めることが可能になり、子の利益をより適切に保護する方向へと制度が拡充されました。DNA鑑定を検討されている方は、これらの改正内容を踏まえたうえで、法的な対応を検討されることをお勧めします。

まとめ

今回はDNA鑑定で父子関係否定の結果が出た場合の親子関係について、法律の面から解説しました。DNA鑑定は生物学的な親子関係を極めて高い精度で判定できる科学的手法ですが、法律上の親子関係の解消には別途、適切な法的手続きが必要です。嫡出否認の訴えには申立期間の制限があり、親子関係不存在確認訴訟は適用できるケースが限定されています。

親子の関係を裁判や調停で決着をつけるのは双方にとって辛いことではありますが、真実が明らかになることによって前に進めることもあるのではないでしょうか。

seeDNAではすべての血縁鑑定に対して、法的鑑定のお申込が可能です。全国150カ所以上の法律事務所と提携し、法のプロフェッショナルである弁護士の立ち合いのもとで、信頼のできるDNA鑑定を受けることが可能です。また、鑑定結果については裁判や調停などに利用することが可能です。

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よくあるご質問

Q1. DNA鑑定で父子関係が否定されたら、自動的に法律上の親子関係も解消されますか?

A. いいえ、自動的には解消されません。DNA鑑定はあくまで生物学的な事実を証明するものであり、法律上の親子関係を解消するためには、嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認訴訟といった法的手続きを別途行う必要があります。平成26年の最高裁判例でも、DNA鑑定で父子関係が否定されたにもかかわらず、法律上の親子関係が維持された事例があります。(1)

Q2. 嫡出否認の訴えはいつまでに申し立てる必要がありますか?

A. 令和6年4月1日施行の改正民法では、夫は子の出生を知った時から3年以内、子は出生の時から3年以内、母は子の出生の時から3年以内に申し立てる必要があります。この期限を過ぎると、DNA鑑定で親子関係がないことが証明されても、嫡出否認の訴えを提起することはできなくなります。(4)

Q3. 嫡出否認の訴えと親子関係不存在確認訴訟の違いは何ですか?

A. 嫡出否認の訴えは嫡出推定が及ぶ子に対して用いる手続きで、申立期間に制限があります。一方、親子関係不存在確認訴訟は嫡出推定が及ばない子(夫が長期不在で性的交渉が不可能だった場合など)に対して用いる手続きで、期間制限がなく、父・母・子のいずれからも提起可能です。

Q4. 裁判でDNA鑑定の結果を証拠として使うにはどうすればよいですか?

A. 裁判で証拠として使用するためには、法的鑑定(裁判用鑑定)として実施する必要があります。弁護士など第三者の立会いのもとで試料を採取し、本人確認やチェーン・オブ・カストディ(証拠保全の連鎖)を確保することが求められます。seeDNAでは全国150カ所以上の法律事務所と提携し、法的鑑定に対応しています。

Q5. 令和4年の民法改正で嫡出否認制度はどう変わりましたか?

A. 主に3つの大きな変更がありました。①否認権者が夫のみから子・母にも拡大、②否認権の行使期間が1年から3年に延長、③女性の再婚禁止期間の廃止と再婚後の嫡出推定の見直し、です。これにより子の利益がより適切に保護される制度へと改善されました。(4)

Q6. DNA鑑定の精度はどのくらいですか?

A. 現在のDNA鑑定技術では、父子関係が存在する場合は99.99%以上の確率で肯定され、父子関係が存在しない場合は100%否定されます。seeDNAでは超高精度の親子DNA鑑定を提供しており、信頼性の高い結果をお届けしています。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) 日本経済新聞, 2014年7月
(2) 佐藤栄学園法学レビュー No.11, 2008年7月
(3) 新銀座法律事務所 法律相談データーベース, 2020年1月
(4) 法務省:民法等の一部を改正する法律について, 2022年7月
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