リライティング日:2025年02月28日
優性遺伝と劣性遺伝の仕組みを解説し、遺伝性疾患のリスクを総合的に判定できるDNAスコアとDNAマッチングの意義を紹介する記事です。
「優性遺伝」と「劣性遺伝」とは? ― 遺伝の基本を理解する
遺伝の基本的な考え方に、「優性遺伝」と「劣性遺伝」という2つのパターンがあります。この概念は19世紀にグレゴール・メンデルがエンドウ豆の交配実験によって発見した「メンデルの法則」に由来しており、現代の遺伝学においても最も重要な基礎理論の一つです。(1)
なお、日本遺伝学会は2017年に「優性」「劣性」という用語が一般に誤解を招きやすいことから、それぞれ「顕性(けんせい)」「潜性(せんせい)」という新しい呼称を推奨しています。「優性」は「優れている」という意味ではなく、単に「表面に現れやすい(顕在的な)」性質であることを意味し、「劣性」は「劣っている」のではなく「隠れやすい(潜在的な)」性質を意味するものです。本記事では、より広く知られている従来の用語も併記しながら解説します。(2)
優性遺伝(顕性遺伝)の仕組み
ある病気が優性遺伝(顕性遺伝)の形式をとる場合、その病気に関係する遺伝子変異を1つでも持っていれば、その病気を発症することになります。ヒトは各遺伝子について父親由来と母親由来の2つのコピー(対立遺伝子=アレル)を持っていますが、優性遺伝の場合は2つのうち1つに変異があるだけで形質が表に出てきます。
父親か母親のどちらかがその病気である場合、子供が同じ病気になる可能性は統計的に1/2(50%)になります。代表的な優性遺伝の疾患としては、ハンチントン病、マルファン症候群、家族性高コレステロール血症などが知られています。これらの疾患では、片方の親から変異遺伝子を受け継いだだけで発症のリスクがあるため、遺伝カウンセリングにおいて家族歴の把握が非常に重要です。(3)
劣性遺伝(潜性遺伝)の仕組みと保因者
劣性遺伝(潜性遺伝)の場合はもう少し複雑です。その病気の原因となる遺伝子変異を1つだけ持っているだけでは発症しません。2つのアレル(対立遺伝子)の両方に変異がある場合、つまり「ホモ接合体」の状態になって初めて病気が現れます。
この「遺伝子変異を1つだけ持っていて病気を発症していない」状態の人のことを、その病気遺伝子の「保因者(キャリア)」といいます。保因者は外見上まったく健康であるため、自分が保因者であることに気づかないまま一生を過ごすことも珍しくありません。
問題となるのは、あるカップルが2人とも同じ遺伝子の保因者同士である場合です。この組み合わせでは、子供にその病気が発症する可能性が高まり、その確率は1/4(25%)となります。つまり保因者同士のカップルから生まれた子供は、4人に1人の割合で発症するリスクを持ちます。また、子供の2人に1人(50%)は両親と同じく保因者となり、残りの1人(25%)は変異遺伝子をまったく持たない状態になります。
- 優性遺伝:遺伝子変異が1つあるだけで発症(発症リスク50%)
- 劣性遺伝:遺伝子変異が2つ揃った場合のみ発症(保因者同士の場合、発症リスク25%)
- 保因者:病気の遺伝子変異を1つだけ持つが発症しない人
- 近親婚では同じ遺伝子変異を共有する確率が高くなり、劣性遺伝疾患のリスクが増加する
近親婚と劣性遺伝のリスク
同じ遺伝子変異を持っている可能性が高い、いとこ同士などの親族間での結婚(近親婚)の場合には、劣性遺伝による病気が発症しやすくなるといえます。これは、共通の祖先から同一の遺伝子変異を受け継いでいる確率が、血縁のない者同士と比較して格段に高くなるためです。
代表的な劣性遺伝疾患には、嚢胞性線維症(CF)、フェニルケトン尿症(PKU)、鎌状赤血球症などがあります。例えば嚢胞性線維症は、欧米では約25人に1人が保因者であるとされ、保因者同士のカップルから生まれる子供の約25%がこの疾患を発症します。(3)
遺伝が関係する病気の種類は数千に及び、それぞれについて逐一リスクを検討していくと膨大な手間と時間がかかってしまいます。そこで必要になるのが、病気のリスクを総合的に判断できるわかりやすい指標です。その指標としてもっとも有用なのが、遺伝的な病気の可能性を一度に数多く調べることができる「遺伝子検査」です。
DNAスコアとDNAマッチング ― 遺伝的リスクを「見える化」する

DNAスコアとは
株式会社シードナでは、業界最大数となる1,528か所の遺伝子を検査することで、DNA領域に関わる疾患リスク等を具体的な数値で確認できる「DNAスコア」というサービスを提供しています。従来の遺伝子検査では、特定の疾患に関連するごく少数の遺伝子変異のみを調べるものが主流でしたが、DNAスコアでは多数の遺伝子座を網羅的に解析することで、より包括的な遺伝的リスク評価が可能になります。(4)
近年の遺伝学研究では、ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって数多くの疾患関連遺伝子座が同定されており、それらを総合的にスコアリングする「ポリジェニックリスクスコア(PRS)」という手法が注目を集めています。DNAスコアもこうした最新の遺伝学的知見を基盤として構築されたサービスです。
DNAマッチングとは
さらに、このDNAスコアをパートナー同士で共有することによって、生まれてくる子供の健康状態を推測することができる「DNAマッチング」もシードナが提供するサービスです。DNAマッチングでは、2人のDNAスコアを照合することで、両者が同じ劣性遺伝疾患の保因者であるかどうかを確認し、子供が遺伝性疾患を発症するリスクを事前に把握することができます。
このような「キャリアスクリーニング」は海外ではすでに広く普及しており、アシュケナージ系ユダヤ人コミュニティにおけるテイ・サックス病のスクリーニングプログラムは、発症率を大幅に低下させた成功事例として知られています。(3)
DNAスコア・マッチングを活用するメリット
- 自身の遺伝的特性を把握 ― 1,528か所もの遺伝子座を解析することで、自分がどのような疾患の保因者であるかを網羅的に把握できます。
- パートナーとの遺伝的相性を確認 ― DNAマッチングにより、両者が同じ疾患遺伝子の保因者同士であるかを調べ、子供の遺伝的リスクを推測できます。
- 将来設計への活用 ― リスクを事前に把握することで、遺伝カウンセリングの受診や出産計画の検討など、具体的な行動につなげることができます。
遺伝カウンセリングと合わせた活用を
遺伝子検査の結果は、数値だけで判断するのではなく、遺伝カウンセリングの専門家と一緒に解釈することが推奨されます。遺伝子変異があるからといって必ず発症するわけではなく、浸透率(ペネトランス)や環境要因なども発症に影響を与えるためです。DNAスコアやDNAマッチングの結果を正しく理解し、適切な対応策を検討するためにも、専門家への相談を積極的に活用しましょう。
自身とパートナーとのDNAマッチングで遺伝子的な相性についていち早く確認し、遺伝的な病気が子孫に伝わる可能性を把握することで、二人の明るい将来設計に役立ててみてはいかがでしょうか。
よくあるご質問
Q1. 優性遺伝(顕性遺伝)と劣性遺伝(潜性遺伝)の違いは何ですか?
A. 優性遺伝は、病気の原因となる遺伝子変異を1つ持つだけで発症する遺伝形式です。一方、劣性遺伝は父親由来・母親由来の両方のアレルに遺伝子変異が揃った場合にのみ発症します。劣性遺伝では変異を1つだけ持つ「保因者」は発症しないため、自覚なく次世代に変異を伝える可能性があります。
Q2. 「保因者」とはどういう意味ですか?
A. 保因者(キャリア)とは、劣性遺伝疾患の原因遺伝子変異を1つだけ持っているが、自身は発症していない人のことです。保因者同士のカップルから生まれた子供は、25%の確率でその疾患を発症するリスクがあります。
Q3. DNAスコアではどのくらいの遺伝子を調べるのですか?
A. シードナのDNAスコアでは、業界最大数の1,528か所の遺伝子座を検査します。これにより、多数の疾患に関連する遺伝的リスクを一度に網羅的に評価することが可能です。
Q4. DNAマッチングを受けると何がわかりますか?
A. DNAマッチングでは、パートナー同士のDNAスコアを照合することで、二人が同じ劣性遺伝疾患の保因者であるかどうかを確認できます。これにより、将来生まれてくる子供が特定の遺伝性疾患を発症するリスクを事前に把握し、適切な対策や遺伝カウンセリングにつなげることができます。
Q5. いとこ同士の結婚は遺伝的に問題がありますか?
A. いとこ同士など近親者間の結婚では、共通の祖先から同一の劣性遺伝子変異を受け継いでいる確率が高くなります。そのため、血縁関係のないカップルと比較して、劣性遺伝疾患の子供が生まれるリスクが統計的に高まります。ただし、必ず発症するわけではなく、遺伝子検査やカウンセリングでリスクを正しく評価することが重要です。
Q6. 「優性」は「優れている」という意味ですか?
A. いいえ、「優性」は遺伝子の形質が「表に現れやすい」という意味であり、その形質が生物学的に優れているわけではありません。誤解を防ぐため、日本遺伝学会は2017年に「顕性」「潜性」という用語への変更を推奨しています。
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) 日本進化学会ニュース Vol.16 No.1, 2014年8月(2) 日本経済新聞, 2026年1月
(3) PubMed (PMID
(4) J Am Coll Cardiol, 2018年10月