リライティング日:2024年10月19日
出生前親子鑑定に用いる血液検体の品質が鑑定結果に与える影響を、seeDNA検査員の視点から解説。胎児DNAの半減期や採血管の工夫、妊娠週数との関係、正しい検体取り扱い方法について詳しく紹介します。
検体の状態が鑑定に与える影響とは
DNA型鑑定において最も優良な検体として挙げられるのは口腔(粘膜)上皮ですが、弊社seeDNAでは口腔上皮以外にも血液、精液、歯ブラシ、たばこの吸い殻など、多種多様な検体を取り扱っています。DNA型鑑定は、検体から抽出されるDNAの質と量に大きく依存するため、検体の状態管理は鑑定結果の信頼性を左右する極めて重要な要素です。(1)
今回は、鑑定を実際に担当する検査員が体感している「検体の状態が鑑定に与える影響」について、シリーズとして何回かに分けてご紹介いたします。第1回目となる本記事では、出生前親子鑑定などに用いられる血液検体に焦点を当て、その取り扱い上の注意点や鑑定精度との関係性を詳しく解説します。
出生前親子鑑定と母体血中の胎児DNA
出生前親子鑑定とは、妊娠中のお母様の血液を用いて、胎児と推定父との血縁関係を確認する検査です。近年の分子生物学的研究の進展により、妊娠中の母体血液中には胎児由来のセルフリーDNA(cell-free fetal DNA: cffDNA)が循環していることが明らかになりました。このcffDNAは主に胎盤のトロホブラスト細胞がアポトーシス(細胞死)を起こす過程で母体血中に放出されるものであり、妊娠の進行に伴って徐々にその量が増加していきます。(2)
お母様の血液の中には、妊娠6週目程度から胎児のDNAが流れ出し始め、妊娠7週目以降であれば弊社にて鑑定を行うことが可能な量の胎児DNAが得られるようになります。これは、世界的に見ても非常に早い時期からの鑑定受付です。参考として、アメリカやオーストラリアで同様の鑑定を行う会社では、それぞれ妊娠10週、12週からの受付となっています。
他社との妊娠週数の差はなぜ生まれるのか
この鑑定受付時の妊娠週数の差は、鑑定方法の感度の差によるものです。弊社seeDNAでは、既存の鑑定方法の感度を約3倍改善した独自の新しい鑑定方法を採用しています。このため、母体血中の胎児DNA濃度がまだ比較的低い妊娠7週目の段階からでも、十分な解析精度を確保して鑑定を行うことが可能です。(1)
胎児DNA量の個人差と再鑑定制度
弊社では妊娠の早い時期から正確な血縁関係の確認ができますが、得られる胎児のDNA量には個人差があります。そのため、特に妊娠8~9週目の血液検体では、解析に十分な胎児のDNA量が得られないケースが存在します。
母体血中に含まれるcffDNAの割合は、妊娠初期では全セルフリーDNAの数パーセント程度に過ぎず、妊娠週数が進むにつれて増加します。しかし同じ妊娠週数であっても、母体の体格(BMI)、胎盤の状態、血液量などの個人的要因によって胎児DNA濃度は変動します。体格の大きい方は相対的に母体由来のDNA割合が高くなり、胎児DNAの検出がやや難しくなる傾向があります。(3)
お母様の血液から十分量の胎児DNAが得られなかった場合、弊社では1回まで無料で再鑑定を行っております。これは、上記のような胎児DNA量の個人差を考慮した制度です。ただし、妊娠7週目以前の血液については無料再鑑定の対象外となっておりますので、鑑定の際は産婦人科の先生に正しい妊娠週数をご確認いただくようお願いいたします。
十分な胎児DNA量が得られないその他のケース
妊娠週数や個人差以外にも、十分な胎児DNA量が得られないケースとして以下のような状況がよく見られます。
- 採血した当日中に返送されず、採血から時間が経ってから血液を弊社に返送された場合
- 検体採取から送付までの間の保存状態が悪い場合(高温環境での放置など)
- 採血管の取り扱いが不適切で、溶血(赤血球の破壊)が生じてしまった場合
- 採血量が規定量に満たなかった場合
これらの要因はいずれも、検体中の胎児DNA濃度の低下や、DNA分解の促進につながります。特に採血後の時間経過は、後述する胎児DNAの半減期の問題から、最も注意が必要なポイントです。
胎児DNAの半減期とその意味
胎児のDNA(cffDNA)は、お母様の血液中の全セルフリーDNAのうち約2.5%ほどとされています。さらに重要なのは、その半減期(最初に存在していた量が半分になるまでの時間)が約20分とされている点です。(4)
これは、採血後20分で胎児DNA量が半分になり、そこからさらに20分経つと元の量の4分の1に、さらに20分後には8分の1にと、時間が経てば経つほど指数関数的に胎児DNA量が減少していくことを意味しています。このため、採血から鑑定室でのDNA抽出処理までの時間をいかに短縮するかが、出生前親子鑑定の成功率を高める上で極めて重要になります。
seeDNAが講じているDNA量減少への対策
弊社では、胎児DNAの急速な分解を防止するために、以下のような複数の対策を講じています。
- 専用採血管の使用:弊社で使用している採血管には、セルフリーDNAの半減期を大幅に遅延させる特殊な安定化試薬が含まれています。これにより、通常の採血管と比較して検体中のDNA分解が抑制されます。
- 国内自社鑑定室での迅速な処理:日本国内の自社鑑定室で鑑定を実施しているため、他社のように海外へ検体を委託・郵送するタイムラグがありません。これにより採血からDNA抽出までの時間を最小限に抑えることができます。
- 高感度鑑定技術の採用:前述の通り、既存方法の約3倍の感度を持つ独自技術により、胎児DNA量がやや少ない検体でも正確な解析が可能です。
正しい血液検体の取り扱い方法
上述の通り、弊社では検体の品質維持に最大限の注意を払っておりますが、採血からご返送までのプロセスはお客様側に委ねられる部分もございます。鑑定の成功率を高めるために、以下の点にご留意ください。
- 採血日当日の返送:採血した日のうちに検体を発送してください。翌日以降の発送はDNA量の低下リスクを高めます。
- 適切な保存温度:採血後は直射日光を避け、常温(15〜25℃程度)で保管してください。冷凍は絶対に行わないでください。
- 採血管の取り扱い:採血管は激しく振らず、静かに数回転倒混和してください。過度な振動は溶血の原因となります。
- 正確な妊娠週数の確認:産婦人科医に超音波検査で正確な妊娠週数を確認してもらい、妊娠7週目以降に採血を行ってください。
- 梱包方法の遵守:弊社からお送りする専用キットの説明書に従い、緩衝材で採血管をしっかり保護した上で梱包してください。
採血のタイミングと郵送時期、そして送付前の保存状態については、採血前に是非一度ご一考いただければと思います。正しい検体の取り扱いは、より正確で迅速な鑑定結果の提供につながります。
まとめ:血液検体の品質が出生前親子鑑定の鍵
出生前親子鑑定において、血液検体の品質は鑑定の成否を左右する最も重要な要素の一つです。母体血中の胎児DNA(cffDNA)はわずか約2.5%という低い割合であり、かつ半減期が約20分と極めて短いため、採血後の適切な取り扱いが不可欠です。
弊社seeDNAでは、専用の安定化試薬入り採血管、国内自社鑑定室での迅速な処理、そして従来比約3倍の高感度鑑定技術を組み合わせることで、妊娠7週目という世界的にも早い段階からの正確な鑑定を実現しています。万一十分な胎児DNA量が得られなかった場合でも、1回まで無料で再鑑定を行う制度を設けておりますので、安心してご利用いただけます。
次回は、精液検体の取り扱いについてご紹介する予定です。各種検体の正しい取り扱い方法を知ることで、より精度の高い鑑定結果を得ることができます。ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。
よくあるご質問
Q1. 出生前親子鑑定は妊娠何週目から受けられますか?
A. seeDNAでは妊娠7週目以降から鑑定をお受けしています。これは既存の鑑定方法の感度を約3倍改善した独自技術を採用しているためで、アメリカ(10週〜)やオーストラリア(12週〜)の同業他社と比較して早い段階からの鑑定が可能です。ただし、産婦人科医による正確な妊娠週数の確認が必要です。
Q2. 胎児DNAの半減期が約20分と聞きましたが、採血後どのくらいで送ればよいですか?
A. 胎児DNA(cffDNA)の半減期は約20分とされていますが、弊社の採血管には半減期を遅延させる安定化試薬が含まれています。それでも時間経過に伴うDNA量の減少は避けられないため、採血した当日中に検体をご返送いただくことを強くお勧めしています。
Q3. 十分な胎児DNA量が得られなかった場合、再鑑定は可能ですか?
A. はい、可能です。お母様の血液から十分量の胎児DNAが得られなかった場合は、1回まで無料で再鑑定を行っております。ただし、妊娠7週目以前の血液検体については無料再鑑定の対象外となっておりますのでご注意ください。
Q4. 採血後の血液検体はどのように保管すればよいですか?
A. 採血後の検体は直射日光を避け、常温(15〜25℃程度)で保管してください。冷凍は絶対に行わないでください。また、採血管を激しく振ると溶血(赤血球の破壊)が生じ、DNA抽出に悪影響を及ぼす可能性がありますので、静かに取り扱ってください。
Q5. なぜseeDNAは海外へ検体を送らず国内で鑑定しているのですか?
A. 母体血中の胎児DNAは半減期が非常に短いため、海外への郵送には数日のタイムラグが生じ、その間にDNA量が大幅に減少するリスクがあります。弊社では日本国内の自社鑑定室で鑑定を行うことで、採血からDNA抽出までの時間を最小限に抑え、鑑定精度の向上につなげています。
Q6. 血液以外の検体でも出生前親子鑑定はできますか?
A. 出生前親子鑑定においては、母体血液が唯一の非侵襲的な検体となります。推定父側の検体としては、口腔上皮(綿棒)のほか、血液、爪、毛髪など様々な検体を使用することが可能です。詳しくは弊社の鑑定可能検体一覧をご参照ください。
seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート
seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
家族や親子の血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、DNA鑑定の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。
【専門スタッフによる無料相談】

著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) J Biol Chem, 1997年3月(2) Phytother Res, 2004年4月
(3) Tidsskr Nor Laegeforen, 1999年5月
(4) 遺伝学的検査の市場化に伴う国民の健康・安全確保への課題抽出と提言、厚生労働科学研究費補助金, 2016年2月