正しい検体の取り扱い方②・精液編 ~seeDNA検査員の視点から~

2018.09.04

リライティング日:2024年10月22日

DNA型鑑定における精液検体の正しい取り扱い方を解説。コンタミネーションのリスクが高い採取方法と、再鑑定を防ぐための最適な保存・送付方法について、検査員の視点から詳しく説明します。

精液検体の正しい取り扱い方について ~seeDNA検査員の視点から~

精液検体の正しい取り扱い方について ~seeDNA検査員の視点から~前回は正しい血液検体の取り扱い方について鑑定員の視点からお話しさせていただきましたが、今回はDNA型鑑定に用いる精液検体の正しい取り扱い方についてお話ししたいと思います。

精液検体は、弊社で取り扱っている綿棒以外の検体の中でも選択される頻度が高く、元が液体であるため様々な状況・状態で弊社に送付されてきます。DNA型鑑定において検体の品質は鑑定結果の信頼性に直結するため、精液検体の採取・保存・送付の各段階で適切な取り扱いが求められます。(1)

具体的には以下のような形態で送付されてくることが多くあります。

  1. 口腔内に出された精液をティッシュペーパーに含ませたもの
  2. 皮膚についた精液をティッシュペーパーで拭いたもの
  3. コンドームに出された精液を(弊社指定の)綿棒で拭って乾かしたもの

これらはいずれもDNA型鑑定に使用可能な検体ですが、採取方法や保存状態によって鑑定の成功率に大きな違いが生じます。精液中に含まれる精子細胞は、ヒトの遺伝情報(ゲノムDNA)を保持しており、適切に処理すれば高品質なDNAを抽出することが可能です。しかし、採取の過程で他者のDNAが混入してしまうと、正確な血縁鑑定が困難になるケースがあります。(2)

再鑑定になりやすい検体とその理由

再鑑定になりやすい検体とその理由さて、上記の3つの方法の中で再鑑定になりやすいものはどれだと思われますか?

経験上、①→②の順で再鑑定になりやすく、③はよほどのことがない限り1度の鑑定で鑑定に十分なDNA量を得ることができます。

コンタミネーション(DNA混入)が起こるメカニズム

①や②からも鑑定を行うことが可能なDNA量は十分に得られるのですが、その後の鑑定により、男性のDNA以外に他の人に由来するDNAが混ざっている(コンタミネーション)ことが判明し、血縁鑑定の判定を行うことができないということがしばしば起こります。

コンタミネーションとは、検体中に目的とするDNA以外の遺伝物質が混入してしまう現象を指します。法医学的なDNA鑑定においては、微量の混入であっても鑑定結果に影響を及ぼす可能性があるため、検体の純度は極めて重要な要素となります。(3)

特に①の方法(口腔内に出された精液をティッシュに含ませたもの)は、良質なDNAの検体となる口腔粘膜上皮が唾液中に含まれているため、コンタミネーションにより再鑑定となることが多いように感じます。口腔粘膜上皮細胞は非常に豊富なDNAを含んでおり、精液中の精子DNAと混合した状態では、どちらのDNAプロファイルが精液由来であるかを判別することが困難になります。

②の方法(皮膚についた精液をティッシュで拭いたもの)についても、皮膚表面には皮膚上皮細胞が常に存在しているため、拭き取りの際にこれらの細胞が精液と共にティッシュに付着し、コンタミネーションの原因となることがあります。ただし、口腔粘膜と比較すると皮膚から遊離する細胞数は少ない傾向にあるため、①よりは再鑑定のリスクがやや低いとされています。

③が最も鑑定に適している理由

逆に③の方法(コンドームに出された精液を綿棒で拭って乾かしたもの)は、男性の純粋なDNAが乾燥状態で保存されているので、コンタミネーションのリスクも減り、1度で鑑定が終わるということが多いです。

コンドーム内に採取された精液は、他者の体液や細胞と接触する機会がほとんどないため、男性本人のDNAのみを含む純粋な検体として扱うことができます。さらに、弊社指定の綿棒で拭い取った後、しっかりと自然乾燥させることで、DNAの分解を抑制し、長期保存にも耐えうる良質な検体となります。

精液検体を正しく取り扱うための重要ポイント

精液検体を正しく取り扱うための重要ポイント精液検体からのDNA鑑定を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが大切です。

  • 乾燥状態での保存を徹底する:精液は液体のまま放置すると細菌の繁殖によりDNAが分解されやすくなります。採取後は速やかに室温で自然乾燥させ、直射日光や高温多湿を避けて保管してください。
  • 他者のDNA混入を最小限に抑える:素手で検体に触れないよう注意し、使い捨て手袋を着用して作業してください。ティッシュよりも弊社指定の綿棒を使用することで、コンタミネーションリスクを大幅に低減できます。
  • 密封した容器で送付する:乾燥させた検体は清潔な紙封筒や通気性のある容器に入れて送付してください。ビニール袋など密閉度の高い容器に湿った状態で入れると、カビや細菌が繁殖しDNAの劣化を招くことがあります。
  • 採取後はできるだけ早く送付する:時間の経過とともにDNAは劣化するため、採取後はなるべく速やかに検査機関へ送付することが推奨されます。
  • 採取状況を正確に伝える:どのような方法で検体を採取したか、採取からどのくらいの時間が経過しているかなど、可能な限り詳細な情報を鑑定依頼時にお伝えいただくことで、検査員が最適な鑑定プロトコルを選択できます。

検体の種類別リスク比較

以下に、精液検体の採取方法別の特徴を簡潔にまとめます。

採取方法コンタミリスク再鑑定の頻度
①口腔内→ティッシュ高い比較的多い
②皮膚→ティッシュ中程度やや多い
③コンドーム→綿棒(乾燥)低いほぼなし

この表からもわかるように、鑑定精度を最大限に高めるためには、③のコンドームから綿棒で採取し乾燥させる方法が最も推奨されます。やむを得ず①や②の方法で検体を採取する場合でも、コンタミネーションのリスクを理解した上で、できる限り他者のDNA混入を防ぐ工夫をしていただくことが大切です。

DNA鑑定の信頼性を高めるために

DNA型鑑定は、遺伝子の特定の領域(STR:Short Tandem Repeat)を解析し、個人を識別する技術です。この技術は非常に高い精度を持ちますが、検体に複数人のDNAが混入していると、各個人のプロファイルを正確に分離・判定することが困難になります。特に血縁鑑定では、親子関係を判定するために各遺伝子座のアレル(対立遺伝子)を正確に読み取る必要があるため、コンタミネーションの影響は致命的となりかねません。

弊社では、万が一コンタミネーションが検出された場合、検体の再送付をお願いし、再鑑定を実施する体制を整えております。しかしながら、再鑑定には追加のお時間をいただくことになりますので、最初の段階で適切な検体採取・保存を行っていただくことが、スムーズな鑑定完了への最短経路となります。

他にも精液検体を採取する方法はいろいろあるかと思いますので、ご質問等ございましたら、弊社窓口まで何なりとご質問いただければと思います。

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電話番号:0120-919-097(フリーダイヤル)

よくあるご質問

Q1. 精液検体はどのくらいの量があればDNA鑑定ができますか?

A. 精液検体は微量であってもDNA鑑定が可能です。綿棒に薄く付着した程度でも、PCR増幅技術によりDNAを解析できるケースがほとんどです。ただし、採取量が極端に少ない場合や劣化が進んでいる場合は再鑑定が必要になることもあるため、可能な限り十分な量を採取していただくことを推奨しています。

Q2. コンタミネーション(DNA混入)が起きた場合、鑑定はどうなりますか?

A. コンタミネーションが検出された場合、正確な血縁判定ができないため、検体の再送付をお願いし再鑑定を実施いたします。再鑑定には追加のお時間をいただくことになりますが、正確な結果をお出しするために必要な手順となります。コンタミネーションを防ぐためには、コンドームから綿棒で採取し乾燥させる方法が最も有効です。

Q3. 精液検体を乾燥させずに送付してしまった場合、鑑定に支障がありますか?

A. 湿った状態で密閉容器に入れて送付されると、細菌やカビが繁殖し、DNAの分解が進行する可能性があります。結果として十分なDNA量が得られず、再鑑定が必要になるケースがあります。採取後は必ず室温で自然乾燥させてから、通気性のある容器(紙封筒など)に入れてお送りください。

Q4. ティッシュペーパー以外で精液を採取しても大丈夫ですか?

A. はい、弊社指定の綿棒で採取していただくのが最も推奨される方法です。ティッシュペーパーでも鑑定は可能ですが、繊維に含まれる化学物質や蛍光増白剤がDNA抽出に影響を与える場合があります。綿棒は検体の純度を保ちやすく、コンタミネーションリスクも低いため、鑑定精度の観点から最適です。

Q5. 精液検体の採取から送付まで、どのくらいの期間であれば鑑定可能ですか?

A. 適切に乾燥させた状態で保存されていれば、数日から数週間程度経過した検体でもDNA鑑定は可能です。ただし、DNAは時間の経過とともに劣化するため、採取後はできるだけ早く送付していただくことが望ましいです。高温多湿の環境を避け、涼しく暗い場所で保管してください。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) 遺伝学的検査の市場化に伴う国民の健康・安全確保への課題抽出, 2016年2月
(2) J Am Geriatr Soc, 2012年3月
(3) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol, 2001年3月
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