口腔(粘膜)上皮の採取方法・正しい検体の取り扱い方について解説

2018.09.05

リライティング日:2024年10月25日

DNA鑑定で最も使用される口腔粘膜上皮の正しい採取方法と返送時の乾燥手順を、seeDNA鑑定員の視点から詳しく解説します。綿棒2本による採取の理由やダブルチェック体制についても説明しています。

口腔(粘膜)上皮の採取方法や送付方法について ~seeDNA鑑定員の視点から~

口腔(粘膜)上皮の採取方法や送付方法について ~seeDNA鑑定員の視点から~

前回まで血液、精液の正しい取り扱い方について、鑑定員の視点からお話しさせていただきましたが、今回はDNA型鑑定において最もよく使用される検体である口腔(粘膜)上皮の採取方法や送付方法について詳しくお話しいたします。

DNA鑑定(親子鑑定・血縁鑑定など)では、さまざまな生体試料を検体として利用できますが、その中でも口腔上皮は採取時の痛みがほとんどなく、専門的な器具も不要であることから、最も広く採用されている検体です。採血のように注射針を使う必要がなく、小さなお子さまや赤ちゃんでも比較的容易に採取できるという大きなメリットがあります。(1)

口腔上皮はどこから採取するのか

口腔上皮の検体はいったいどこから取るのかといいますと、口の中の頬(ほお)の裏側の部分から採取していただきます。頬の粘膜は常に新陳代謝が活発に行われており、表面には多数の上皮細胞が存在しています。この細胞一つ一つの中にDNAが含まれているため、綿棒で軽く擦るだけで十分な量のDNAを回収できるのです。(2)

具体的には、弊社の検体採取キットに含まれている鑑定用の綿棒をほおの内側にしっかり当てたまま、タテヨコ10往復擦っていただくだけです。この操作によって綿棒の先端に粘膜上皮細胞が付着し、その綿棒に対してDNA抽出の操作を行うことで、鑑定に必要な純度の高いDNAを得ることができます。

力加減のポイント ― 強く擦りすぎなくて大丈夫

鑑定員である私自身も、実際に綿棒で頬の内側を擦ってみたことがあるのですが、「本当にDNAが取れるのだろうか」と心配になり、つい強い力でゴシゴシ擦ってしまい、頬の内側が痛くなった経験があります。しかし、実際はそんなに強く擦る必要はありません。綿棒をほおの内側にしっかり当てたまま、適度な圧力でタテヨコ10往復擦っていただくだけで、鑑定に必要十分な量のDNAを採取することが可能です。

口腔粘膜の上皮細胞は通常数日ごとにターンオーバー(細胞の入れ替わり)が起こっており、軽い摩擦でも容易に剥離します。そのため、過度な力を入れなくても十分な細胞数を回収できるのです。強く擦りすぎると粘膜を傷つけてしまい、出血を伴う可能性もありますので、優しく丁寧に擦ることを心がけてください。(3)

唾液で綿棒を湿らせるだけではNG

ここで非常に重要な注意点があります。口の中に溜まっている唾液で綿棒を湿らせるだけでは、鑑定に使用できる十分量のDNAは抽出されません。唾液中にもわずかにDNAは含まれていますが、口腔粘膜を直接擦って得られる上皮細胞と比較すると、その量は圧倒的に少なくなります。検体採取の際は、必ず綿棒を頬の内側にしっかり当てて擦るようにしてください。

なぜ綿棒は2本必要なのか ― ダブルチェック体制

弊社ではお一人に対して2本の鑑定用綿棒を送付させていただいておりますが、1本だけ採取すればよいというわけではなく、2本すべての採取とご提出をお願いしております。これは弊社が鑑定結果の間違いを防ぐために実施している品質管理上の重要な措置です。

具体的には、最初に使用した綿棒(1本目)で鑑定を行った後、別の綿棒(2本目)を使って独立したダブルチェックを行っています。2つの検体から得られたDNA型が一致することを確認することで、検体の取り違えや実験上のエラーを排除し、鑑定結果の信頼性を最大限に高めています。

  • 綿棒2本はそれぞれ別々に採取する(同じ綿棒を2回使うのではない)
  • 2本とも同じ方法(ほおの内側をタテヨコ10往復)で採取する
  • 1本だけの提出では鑑定をお受けできない場合がある
  • ダブルチェックにより鑑定精度を担保している

返送方法について ― 乾燥が最も重要なポイント

返送方法について ― 乾燥が最も重要なポイント

採取した検体を弊社へ返送する際に、最も注意していただきたいのが「乾燥」です。ほおの内側をタテヨコ10往復擦った綿棒を濡れた状態のまま返送されますと、雑菌の繁殖が起こってしまう恐れがあります。さらに深刻な問題として、せっかく採取した純度の高いDNAが雑菌の酵素によって分解されてしまうリスクも生じます。(4)

DNAは適切に保存すれば非常に安定した物質ですが、水分が残った環境では微生物が急速に増殖し、DNAを分解する酵素(DNase)を産生します。その結果、鑑定に使用できないほどDNAが劣化してしまうことがあるのです。

正しい乾燥方法

乾燥方法としては、以下の2つの方法をおすすめしております。

  1. 自然乾燥:コップなどに採取済みの綿棒を立てて、1晩(一晩)自然乾燥させます。清潔な場所で、ホコリなどが付着しないよう注意してください。
  2. ドライヤー乾燥:髪を乾かす要領で、ドライヤー(温風でかまいません)を使って乾燥させます。ただし、1か所にずっと当て続けないようにしてください。高温を長時間当て続けるとDNAが熱変性する可能性があるため、綿棒全体にまんべんなく風を当てるようにしましょう。

返送時のその他の注意点

乾燥が完了した綿棒は、キットに同封されている専用の封筒や容器に入れて返送してください。以下の点にもご注意ください。

  • 乾燥後の綿棒は密閉せず、通気性のある状態で保管・返送する
  • 直射日光が当たる場所や高温多湿の環境での保管は避ける
  • 他の方の綿棒と混同しないよう、ラベルや名前の記載を確認する
  • 採取後はできるだけ早く返送する(長期保管はDNA劣化のリスクあり)

採取前の注意事項

より高品質なDNAを得るために、採取前にも以下の点に気を付けていただくとよいでしょう。

  • 採取の30分前には飲食・喫煙・歯磨きを控える
  • 水で軽く口をゆすいでから採取を開始すると、食べかすなどの混入を防げる
  • 赤ちゃんの場合は、授乳後30分以上経過してから採取する
  • 綿棒の先端部分には素手で触れないようにする

これらの注意事項を守っていただくことで、検体の品質が向上し、より正確で信頼性の高い鑑定結果をお届けすることが可能になります。

口腔上皮検体のメリットまとめ

あらためて、口腔上皮がDNA鑑定において最も広く使われている理由を整理しておきましょう。

項目口腔上皮血液
採取の簡便さ非常に簡単専門技術が必要
痛みほぼなし針刺しの痛みあり
DNA品質高品質高品質

上記の通り、口腔上皮は採取が容易でありながら血液と同等の高品質なDNAを得ることができるため、ご自宅での採取が可能な私的鑑定から、厳格な手続きが求められる法的鑑定まで、幅広い場面で活用されています。

以上が、口腔上皮の正しい取り方と返送方法のご説明でした。検体採取の際にぜひ参考にしていただければ幸いです。ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

< 正しい検体の取り扱い方①・血液編 ~seeDNA型鑑定員の視点から~ >

< 正しい検体の取り扱い方②・精液編 ~seeDNA型鑑定員の視点から~ >

よくあるご質問

Q1. 口腔上皮の採取は痛くないですか?

A. ほとんど痛みはありません。綿棒をほおの内側に軽く当ててタテヨコ10往復擦るだけですので、強く擦りすぎなければ痛みを感じることはほぼありません。赤ちゃんや小さなお子さまでも安全に採取可能です。

Q2. 唾液を綿棒に含ませるだけでは駄目ですか?

A. 唾液だけでは鑑定に必要な十分量のDNAを得ることができません。必ず綿棒をほおの内側にしっかり当て、粘膜上皮細胞を擦り取るようにしてください。

Q3. 綿棒が2本ありますが、1本だけの提出でも鑑定できますか?

A. 2本すべてのご提出をお願いしております。弊社ではダブルチェック体制を採用しており、2本目の綿棒で独立した検証を行うことで鑑定結果の信頼性を確保しています。

Q4. 採取した綿棒はどのように乾燥させればよいですか?

A. コップなどに綿棒を立てて一晩自然乾燥させるか、ドライヤーの温風をまんべんなく当てて乾かしてください。濡れた状態で返送すると雑菌が繁殖しDNAが分解される恐れがあります。

Q5. 採取前に食事や歯磨きをしても大丈夫ですか?

A. 採取の30分前からは飲食・喫煙・歯磨きを控えていただくことを推奨しています。採取前に水で軽く口をゆすぐと、食べかすなどの混入を防ぐことができます。

Q6. 赤ちゃんでも口腔上皮の採取は可能ですか?

A. はい、可能です。赤ちゃんの場合は授乳後30分以上経過してから採取してください。口腔上皮の採取は非侵襲的で安全な方法ですので、新生児でも問題なくお使いいただけます。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci, 2007年6月
(2) 日本臨床細胞学会誌 Vol.61 No.4, 2019年1月
(3) Br J Dermatol, 2004年10月
(4) Regul Toxicol Pharmacol, 2006年3月
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