DNA検査のインフォームドコンセントと同意書について

2016.09.06

リライティング日:2024年07月21日

DNA型鑑定におけるインフォームドコンセントの重要性と、2003年ユネスコ「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」に基づく同意取得の義務、シードナの同意書運用について詳しく解説します。

DNA型鑑定とインフォームドコンセント ── ユネスコ国際宣言が求める被検者の権利保護

DNA型鑑定とインフォームドコンセント ── ユネスコ国際宣言が求める被検者の権利保護DNA型鑑定は、親子関係の確認や法医学的な個人識別など、さまざまな場面で活用される極めて高精度な手法です。しかし、遺伝情報は個人の最もプライベートな情報のひとつであり、その取り扱いには国際的に厳格なルールが設けられています。本記事では、DNA型鑑定におけるインフォームドコンセント(説明と同意)の意義や法的根拠、そして株式会社シードナにおける具体的な同意書の運用について詳しく解説します。

2003年ユネスコ総会「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」とは

003年ユネスコ総会「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」とは2003年、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の総会において「ヒト遺伝情報に関する国際宣言(International Declaration on Human Genetic Data)」が正式に採択されました。この宣言は、ヒトの遺伝情報の収集・処理・利用・保存について、人権と基本的自由の尊重を確保するための国際的な倫理枠組みを定めたものです。(1)

同宣言では、DNA型鑑定の利用目的を以下のように限定しています。

  • 法医学的な目的(犯罪捜査、身元確認など)
  • 医療目的(疾患の診断・治療・予防など)
  • 科学研究目的
  • 法的手続き上の目的(親子鑑定、相続手続きなど)
  • その他、人権を侵害しない目的

そして最も重要な点として、「鑑定を実施する際には、必ずインフォームドコンセントを行うこと」が明記されています。これは、被検者がDNA型鑑定の内容・目的・リスク・結果の取り扱いなどを正確に理解し、自らの自由意思に基づいて同意する必要があることを意味しています。(1)

インフォームドコンセントとは何か ── その本質と重要性

インフォームドコンセントとは何か ── その本質と重要性インフォームドコンセント(informed consent)とは、もともと医療分野で発展した概念であり、日本語では「説明に基づく同意」あるいは「十分な説明を受けた上での同意」と訳されます。もともとは1947年のニュルンベルク綱領に端を発し、その後1964年のヘルシンキ宣言を経て、医療・研究倫理の中核的原則として世界中に広まりました。(2)

DNA型鑑定の文脈におけるインフォームドコンセントでは、以下の要素が不可欠とされています。

  1. 鑑定の目的と内容の説明:何のためにDNA型鑑定を行うのか、どのような手法を用いるのかを被検者に分かりやすく説明する。
  2. 結果の取り扱いに関する説明:鑑定結果がどのように利用され、誰がアクセスできるのか、どのように保管・廃棄されるのかを明示する。
  3. リスクと影響の説明:鑑定結果が被検者やその家族に与えうる心理的・社会的影響についても率直に伝える。
  4. 同意の任意性の保証:被検者が自らの自由意思で同意しており、強制や脅迫がないことを確認する。
  5. 本人確認の実施:検体を提供する人物が間違いなく被検者本人であることを確認する。

つまり、ある個人のDNAを調べるためには、その本人に対してDNA型鑑定について十分に説明し、納得の上で合意を得てから検体を採取しなければならないのです。この原則は、法的鑑定・私的鑑定を問わず適用されるべき普遍的な倫理基準です。

なぜインフォームドコンセントがDNA型鑑定で特に重要なのか

遺伝情報は、一般的な個人情報(氏名や住所など)とは本質的に異なる性質を持っています。遺伝情報は生涯にわたって変化せず、血縁者間で共有されるという特性があるため、ひとたび流出すると取り返しがつきません。また、遺伝情報からは疾患リスクや民族的背景など、本人が望まない情報まで明らかになる可能性があります。(3)

こうした遺伝情報固有の特性を考慮すると、検体の採取にあたって被検者の十分な理解と自発的な同意を得ることは、単なる形式的な手続きではなく、個人の尊厳と人権を守るための本質的な要請であるといえます。ユネスコ宣言が「人権を侵害しない目的」のみに利用を限定し、インフォームドコンセントを義務付けている理由もここにあります。(1)

法的鑑定と私的鑑定 ── 同意確認の方法の違い

DNA型鑑定には大きく分けて「法的鑑定」と「私的鑑定」の2種類があります。それぞれの特徴と同意確認の方法について理解しておくことが重要です。

区分法的鑑定私的鑑定
目的裁判資料として使用個人的な確認
検体採取スタッフが立会い被検者が自宅等で実施
本人確認身分証等で現地確認同意書にて確認

株式会社シードナで行う法的鑑定では、弊社のスタッフが直接立ち会って検体採取を行います。この場合、スタッフが被検者本人であることを身分証明書等で確認し、その場でインフォームドコンセントを実施するため、同意確認の面で問題が生じることは基本的にありません。

一方、私的鑑定の場合は状況が異なります。私的鑑定では、被検者がご自宅等で検体を採取し、郵送等でお送りいただく形式をとることが一般的です。この場合、弊社のスタッフがすべての被検者様と直接お会いすることは物理的に困難であり、全員の同意を対面で確認することはほぼ不可能です。

シードナにおける同意書の運用と提出のお願い

上記のような事情から、株式会社シードナでは、DNA型鑑定を実施する際に同意書の提出を必須としております。この同意書は、ユネスコ宣言の精神に則り、被検者の権利と尊厳を守るために設けられた重要な書類です。(1)

同意書の提出にあたっては、以下の手順をお守りいただいております。

  1. 同意書の内容をご確認ください:被検者様全員が、同意書に記載された各項目の内容をきちんとご理解いただきます。
  2. 各項目への同意:すべての項目について、ご理解の上で同意をいただきます。
  3. ご本人様のご署名:被検者ご本人様に直筆でご署名をいただきます。代筆は認められません。
  4. 検体とともにご返送:同意書と検体を一緒にご返送いただきます。

重要なお知らせ:もし同意書の各項目に同意されていない場合や、被検者様ご本人のご署名がない場合は、鑑定に進むことができません。これは被検者様の権利を保護するための措置ですので、何卒ご了承ください。

インフォームドコンセントの国際的な動向と日本の状況

インフォームドコンセントの重要性は、ユネスコ宣言にとどまらず、世界各国の法制度や倫理ガイドラインにも反映されています。例えば、日本では日本人類遺伝学会が「遺伝学的検査に関するガイドライン」を策定し、遺伝学的検査を実施する際には被検者への十分な説明と自発的な同意が不可欠であるとしています。(4)

また、個人情報保護法の改正に伴い、遺伝情報は「要配慮個人情報」として特に慎重な取り扱いが求められるようになりました。DNA型鑑定を行う機関には、単に検体を受け取って結果を返すだけでなく、被検者の情報を適切に管理し、同意の範囲内でのみ利用するという高い倫理基準が求められています。

株式会社シードナでは、これらの国際基準および国内法規を遵守し、被検者様お一人おひとりの権利と尊厳を守りながら、正確で信頼性の高いDNA型鑑定サービスを提供しております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

Q1. インフォームドコンセントとは具体的にどのようなことですか?

A. インフォームドコンセントとは、DNA型鑑定の目的・方法・結果の取り扱い・リスクなどについて十分な説明を受けた上で、被検者ご本人が自らの自由意思に基づいて同意することです。2003年のユネスコ「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」でも、鑑定実施前のインフォームドコンセントが義務付けられています。(1)

Q2. 同意書を提出しなくてもDNA型鑑定は受けられますか?

A. いいえ、同意書の提出がない場合は鑑定に進むことができません。被検者様全員のご署名と各項目への同意が確認できない限り、検体をお預かりしても鑑定を開始することはできませんのでご了承ください。

Q3. 法的鑑定と私的鑑定で、同意の取り方に違いはありますか?

A. はい、違いがあります。法的鑑定では弊社スタッフが立ち会い、対面で本人確認とインフォームドコンセントを行います。一方、私的鑑定では被検者様が自宅等で検体を採取されるため、同意書のご提出という形で同意を確認させていただいております。

Q4. 同意書にはどのような内容が書かれていますか?

A. 同意書には、DNA型鑑定の目的、検査方法、結果の通知方法、個人情報・遺伝情報の取り扱い、検体の保管と廃棄に関する事項などが記載されています。各項目をよくお読みいただき、ご理解とご同意の上でご署名をお願いしております。

Q5. なぜ遺伝情報の取り扱いには特に厳しいルールがあるのですか?

A. 遺伝情報は生涯変わらず、血縁者間で共有されるという特殊な性質を持っています。また、疾患リスクや民族的背景など、本人が意図しない情報まで含まれる可能性があるため、一般的な個人情報以上に慎重な取り扱いが国際的に求められています。(1)(3)

Q6. 未成年者の場合、同意書は誰が署名するのですか?

A. 未成年者の場合は、法定代理人(通常は親権者)が同意書にご署名いただく形となります。ただし、鑑定の種類や状況により対応が異なる場合がございますので、事前にお問い合わせください。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) Legal Affairs, 2026年4月
(2) The World Medical Association, 2024年12月
(3) Legal Affairs, 2026年4月
(4) 個人情報保護委員会, 2023年4月
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