【医師が解説】NIPTの精度が100%にならない理由

2025.07.03

リライティング日:2025年08月15日

NIPTの検査精度が100%にならない理由を、遺伝子の突然変異・キメラ・ヒューマンエラーの3つの観点から医師が詳しく解説。偽陽性・偽陰性の仕組みと確定診断の重要性を網羅的に紹介します。

新型出生前検査(NIPT)とは

新型出生前検査(NIPT)とはNIPT(新型出生前診断)は、妊娠10週目から受けられるダウン症エドワーズ症パトウ症などの遺伝性疾患のリスクを確認できる検査です。流産の危険性が伴う羊水検査や絨毛検査と異なり、妊婦さんの採血のみで行えるため、お腹の赤ちゃんと妊婦さんに安全な検査でありながら、染色体数異常に関わる様々な遺伝性疾患のリスクを効率よく調べることができます。

NIPTの原理は、妊娠中の母体血液中に胎盤由来のセルフリーDNA(cfDNA)が循環しているという発見に基づいています。1997年にDennis Loらによって母体血漿中に胎児由来のDNA断片が存在することが報告されて以来、この技術は急速に発展してきました。現在のNIPTでは、母体血から採取したcfDNAを次世代シーケンシング(NGS)技術を用いて大量に解読し、各染色体に由来するDNA断片の量的な偏りを統計的に分析することで、胎児の染色体数異常のリスクを評価します。

また、国内では女性の妊娠年齢の高年齢化という社会的要因があり、高年妊娠では染色体異常が生じやすいという生物学的な事象もあり、年々実施件数が増加しています。 日本においては2013年に臨床研究として導入されて以来、検査を受ける妊婦さんの数は右肩上がりで増え続けており、社会的な関心の高さがうかがえます。(1)

病院で提供されているNIPTは、胎児の21、18、13トリソミーしか報告されませんが、遺伝子検査の専門機関などが行うNIPTでは、21トリソミー(ダウン症候群)18トリソミー(エドワーズ症候群)13トリソミー(パトウ症候群)だけではなく、ターナー症候群(XO)クラインフェルター症候群(XXY)といった性染色体異常や、染色体の特定の位置の遺伝子が欠失することによって生じる微小欠失症候群(ディ・ジョージ症候群など)の疾患リスクを判定することもできます。

このように検査対象が広がっている背景には、シーケンシング技術の進歩とバイオインフォマティクス解析の高度化があります。特に、微小欠失症候群は年齢に関係なく一定の頻度で発生するため、若年妊婦さんにとっても有用な検査項目として注目されています。

NIPTの検査精度は100%ではない

NIPTの検査精度は100%ではない

一般的に、NIPTの検出精度は高く、21番染色体数異常によるダウン症の場合、NIPT全体における偽陰性率は0.1%未満、偽陽性率は3%程度といわれています。このように、年々NIPTの検査精度は進化していますが、NIPTの位置づけとしては、あくまでもスクリーニング検査であるため、NIPTの検査結果が「高リスク(陽性)」であった場合は、さらに羊水検査や絨毛検査といった確定診断が必要となります。

スクリーニング検査と確定診断の違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。スクリーニング検査とは、特定の疾患のリスクが高い集団を効率的に選別するための検査であり、「確定」を意味するものではありません。一方、羊水検査や絨毛検査は、胎児の細胞そのものを直接分析するため、染色体異常の有無を高い確度で確認できる確定診断として位置づけられています。ただし、これらの確定診断には約0.1〜0.3%程度の流産リスクが伴うため、すべての妊婦さんに一律に実施するのではなく、NIPTなどのスクリーニング検査で高リスクと判定された方が次のステップとして受けることが推奨されています。

NIPTにおける偽陽性・偽陰性とは

NIPTにおける偽陽性・偽陰性とはNIPTの検査精度を正しく理解するためには、「偽陽性」「偽陰性」の概念を知っておく必要があります。偽陽性とは、実際には胎児に染色体異常がないにもかかわらず「高リスク(陽性)」と判定されるケースです。偽陰性とは、実際には胎児に染色体異常があるにもかかわらず「低リスク(陰性)」と判定されるケースを指します。

NIPTの精度を表す指標として、以下のような用語が使用されます。

指標名意味目安
感度異常がある場合に正しく陽性と判定する割合99%以上(21トリソミー)
特異度異常がない場合に正しく陰性と判定する割合99.9%以上
陽性的中率(PPV)陽性と判定された中で実際に異常がある割合母体年齢等で変動

特に注意すべきは陽性的中率(PPV)です。PPVは検査対象集団における疾患の有病率(事前確率)に大きく影響されるため、若年妊婦さんでは母体年齢が高い妊婦さんと比べてPPVが低くなる傾向があります。つまり、同じ「高リスク」の結果が出ても、母体年齢やその他のリスク因子によって、実際に胎児に異常がある確率は異なるということです。このため、NIPTの結果だけで判断するのではなく、必ず遺伝カウンセリングを受けて結果の意味を正しく理解することが大切です。

NIPTの精度が100%にならない理由①「遺伝子の突然変異」

NIPTの精度が100%にならない理由は、現実的にはヒトが行う検査になるため、ヒューマンエラーによるリスクを完全に排除することができないといった理由もありますが、主には遺伝子の突然変異やキメラなどの可能性を完全に排除することができないからと考えられます。

突然変異は、物理的刺激や放射線照射などが一因となって、遺伝子構成に変化を生じて、遺伝する変異のことを指しています。染色体数異常を調べるNIPTとは関連が無いようにも見えますが、母親が特定のガンに罹患している場合も、胎児は正常であってもNIPTの検査結果が偽陽性となった事例も報告されています。 これは、母体の腫瘍細胞から放出される異常なcfDNAが母体血中に混入することで、胎児由来のDNA解析結果にノイズが加わるためです。実際に、NIPTの結果から偶然母体のがんが発見された症例も複数報告されており、NIPTが意図せず母体の健康状態のスクリーニングとしても機能するケースがあることが明らかになっています。(2)

また、お母さんがNIPTの疾患を持っている場合は検査ができません。これは、母体自身の染色体異常によるcfDNAが、胎児由来のシグナルを覆い隠してしまうためです。例えば、母体がモザイク型のトリソミーを有している場合、母体由来のcfDNAに含まれる余剰な染色体情報が解析結果を歪め、正確な胎児のリスク評価が困難になります。

NIPTの精度が100%にならない理由②「キメラ」

生物学の世界において、キメラ(chimera)という言葉は、同一個体内に異なる遺伝子情報を有する細胞が混在している状態を指しています。遺伝子検査の精度はすさまじく向上しているものの、ふたつの異なった遺伝子タイプ、あるいはふたつの違った遺伝子タイプが融合したキメラが存在することで、100%の検査精度は、理論上不可能といわれています。キメラと検査精度の関係性については、遺伝学的検査や法医学的検査、移植医療などの分野で重要な課題となることがあります。

NIPTにおいてキメラが問題となる最も代表的なケースが「限局性胎盤モザイク(CPM:Confined Placental Mosaicism)」です。受精卵から発生した胎児と胎盤の遺伝子タイプがそれぞれ違って、胎児は正常なのに胎盤だけが染色体数異常がある場合、NIPTでは正確な検査結果が得られなくなってしまいます。NIPTにおいて、胎盤がトリソミーの異常を持つ細胞で構成されていて、赤ちゃんは正常である場合、胎盤由来のDNAも母体血から検出されてしまうので、次世代DNA配列分析装置を用いた現状の検査方法では高リスクとして検出されるのが、偽陽性の最も大きな原因であります。 このような場合、赤ちゃんには異常がないため、偽陽性というミスを排除するため必ず確定診断が必要となります。(3)

限局性胎盤モザイクは全妊娠の約1〜2%に発生すると報告されており、決して稀な現象ではありません。CPMにはいくつかのタイプがあり、胎盤の細胞栄養芽層のみに異常がある場合、胎盤の間葉組織のみに異常がある場合、あるいはその両方に異常がある場合があります。NIPTで解析されるcfDNAは主に細胞栄養芽層に由来するため、このタイプのCPMがNIPTの偽陽性に最も直結します。

また、赤ちゃんの体の一部だけにトリソミーのような異常がある場合は、最も精度の高いと言われる微量DNA解析技術による検査でも、検出感度以下となることがあるため、「低リスク(陰性)」と判定されます。つまり検出ができなかったが、赤ちゃんには異常があるため、偽陰性のミス判定となるということです。(3)

このように、キメラの存在は、DNA検査や遺伝子診断の精度や信頼性に大きく影響するため、検査結果に矛盾がある場合や予想外の判定が出た場合には「キメラ遺伝子の存在の可能性を考慮すべきである」と言われています。

NIPTの精度が100%にならない理由③「ヒューマンエラー」

キメラ遺伝子や遺伝子の突然変異などの事象だけでなく、遺伝子検査の鑑定機関におけるヒューマンエラーによっても、検査結果が正しく判定されないケースが起こることがあります。実際に、国内でも病院のヒューマンエラーによりNIPTの結果を確定するために行われた羊水検査でも間違った結果が被検者に報告されてしまった事例がありました。(4)

ヒューマンエラーが発生し得る工程は多岐にわたります。

  1. 検体の採取段階:採血時のラベル貼り間違い、検体の取り違えなど
  2. 検体の輸送・保管段階:不適切な温度管理によるDNAの劣化、輸送中の検体破損など
  3. ラボでの解析段階:シーケンシング装置のキャリブレーション不良、データ入力ミスなど
  4. 結果の報告段階:結果の転記ミス、報告書の取り違え、判定基準の誤適用など

親子DNA鑑定(出生前を含む)では、米国AABBにて定められた「父権(母権)肯定確率:99.9%以上」が国際的な指標と定められていますが、NIPTに関しては、このような国際的な統一基準が正式に設けられていません。検査を行う上での指標を明確に定めて、重大なヒューマンエラーによるミスを少しでも無くすことが今後の課題として捉えられます。

NIPTの品質管理に関しては、各国の学会がガイドラインを公表しています。例えば、米国産婦人科学会(ACOG)や国際出生前診断学会(ISPD)は、NIPTを実施するラボに対して厳格な品質管理体制の構築を推奨しています。日本国内でも、日本医学会が「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)等の情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証に関する指針」を策定しており、検査の質の担保に向けた取り組みが進められています。

NIPTを受ける前に知っておきたいポイント

NIPTを受けるかどうかを検討している妊婦さんは、検査の精度だけでなく、以下のポイントについても事前に理解しておくことが大切です。

  • NIPTはスクリーニング検査であり確定診断ではない:高リスクと判定されても、必ず確定診断を受けてから最終的な判断を行いましょう
  • 陰性(低リスク)でも100%安全とは言い切れない:偽陰性のリスクがわずかに存在するため、「安心材料」として受け止めつつ、通常の妊婦健診も欠かさず受けましょう
  • 検査時期が結果の精度に影響する:母体血中の胎児由来cfDNA量(フェタルフラクション)は妊娠週数とともに増加します。一般的に妊娠10週以降が推奨されており、週数が早すぎるとcfDNA量が不十分で正確な解析ができない可能性があります
  • 検査前後の遺伝カウンセリングが重要:結果の解釈や今後の選択肢について、遺伝の専門家から説明を受けることで、不安を軽減し適切な意思決定につなげることができます
  • 検査機関の品質管理体制を確認する:ISOなどの国際品質規格を取得しているか、検査の実績や精度管理の仕組みが整っているかを確認しましょう

NIPTは義務ではなく、あくまで妊婦さん自身の意思で受けるかどうかを決める検査です。検査を受けることで安心を得られる方もいれば、結果によって新たな不安が生じる方もいます。パートナーやご家族とよく話し合い、必要に応じて専門家に相談しながら、ご自身にとって最善の選択をしてください。

遺伝子検査専門機関seeDNAの「新型出生前検査(NIPT)」

お腹の赤ちゃんの遺伝性疾患リスクがわかる

seeDNAが提供するNIPTは、次世代シーケンシング技術を用いた高精度な解析を行い、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーはもちろん、性染色体異常や微小欠失症候群まで幅広くカバーしています。遺伝子検査の専門機関として長年培ってきたノウハウと厳格な品質管理体制のもと、妊婦さんに安心してお受けいただける検査環境を整えています。

よくあるご質問

Q1. NIPTの検査精度はどのくらいですか?

A. NIPTは非常に高い精度を持つスクリーニング検査です。21トリソミー(ダウン症候群)に関しては、感度99%以上、特異度99.9%以上とされ、偽陰性率は0.1%未満、偽陽性率は約3%程度といわれています。ただし、NIPTはあくまでスクリーニング検査であり確定診断ではないため、高リスク(陽性)の結果が出た場合は、羊水検査や絨毛検査などの確定診断を受ける必要があります。

Q2. NIPTで「偽陽性」が出る主な原因は何ですか?

A. NIPTにおける偽陽性の最も大きな原因は「限局性胎盤モザイク(CPM)」です。これは、胎盤の細胞にはトリソミーなどの染色体異常があるものの、胎児自体は正常であるケースを指します。NIPTは母体血中のセルフリーDNAを解析しますが、このDNAの大部分は胎盤由来であるため、胎盤に異常がある場合は胎児が正常であっても高リスクと判定されてしまいます。その他にも、母体の悪性腫瘍による異常cfDNAの混入が偽陽性の原因となることがあります。

Q3. NIPTはいつ頃受けるのがベストですか?

A. NIPTは一般的に妊娠10週目以降から受けることが可能です。母体血中の胎児由来cfDNA(フェタルフラクション)は妊娠週数が進むにつれて増加するため、10週以降であれば十分な量のcfDNAが確保できるとされています。ただし、あまり妊娠週数が早いとフェタルフラクションが不十分となり、検査結果の信頼性が低下する可能性があるため、検査機関の推奨時期に従うことをおすすめします。

Q4. NIPTで「低リスク(陰性)」と出た場合、赤ちゃんは絶対に大丈夫ですか?

A. NIPTで「低リスク(陰性)」と判定された場合、対象とする染色体異常の可能性は非常に低いと考えられます。しかし、偽陰性のリスクがわずかに存在するため、「100%安全」と断言することはできません。特に、赤ちゃんの体の一部だけにモザイク状の異常がある場合は、NIPTでは検出できないことがあります。また、NIPTで対象としていない遺伝性疾患については判定できないため、通常の妊婦健診を引き続き受けることが重要です。

Q5. NIPTの検査結果が高リスク(陽性)だった場合、どうすればよいですか?

A. NIPTで高リスク(陽性)と判定された場合は、まず落ち着いて遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。NIPTはスクリーニング検査であるため、高リスクの結果が出ても胎児に必ず異常があるとは限りません。確定するためには、羊水検査や絨毛検査などの確定診断を受ける必要があります。結果の意味や今後の選択肢について、遺伝の専門家としっかり相談しながら、ご自身にとって最善の判断をしてください。

Q6. NIPTを受けるかどうか迷っています。義務ですか?

A. NIPTは義務ではなく、妊婦さんご自身の意思で受けるかどうかを決める任意の検査です。検査を受けることで安心を得られる方もいれば、結果によって新たな不安や葛藤が生じる方もいます。検査前にパートナーやご家族とよく話し合い、必要に応じて遺伝カウンセラーや医師に相談しながら、ご自身の価値観に基づいて判断してください。seeDNAでは無料相談も受け付けていますので、お気軽にお問合せいただけます。

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seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
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著者

医師
甲斐沼 孟 先生


■日本外科学会専門医
■専門分野:救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域、産業保健、メンタルヘルス

【参考文献】

(1) Pediatr Surg Int, 1997年
(2) 最近の出生前診断の変化と多様化する倫理的課題, 2020年4月
(3) DSIJ PRESS, 2021年4月
(4) 医療安全推進者ネットワーク, 1999年2月
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