リライティング日:2025年11月16日
NIPT(新型出生前検査)は公的医療保険・自治体助成・民間保険いずれも適用外で全額自己負担です。2025年最新の制度状況と費用目安、相談窓口、海外との比較を詳しく解説します。
妊娠中の母体血を使って、胎児の染色体疾患のリスクを調べるNIPT(新型出生前検査/Non-Invasive Prenatal Testing)。採血だけでダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)などの可能性を高精度に推定できることから、近年利用者が急増しています。(1)
しかし「NIPTは保険が使えるの?」「自治体の助成はある?」「民間の医療保険で少しでもカバーできない?」といった費用面の疑問を持つ方は少なくありません。検査を前向きに検討していても、10万円以上の出費は家計への影響が大きく、踏み出せないという声もよく聞かれます。ここでは、2025年10月時点の最新情報をもとに、保険制度や自治体支援の現状、さらには海外との制度比較や今後の見通しまでを、わかりやすく詳しく解説します。
NIPTとは?まず知っておきたい基礎知識
NIPT(新型出生前検査)とは、妊娠10週以降の妊婦さんから少量の血液を採取し、その中に含まれる胎児由来のセルフリーDNA(cell-free DNA)を分析することで、胎児の染色体異常のリスクを評価するスクリーニング検査です。従来の出生前検査(羊水検査や絨毛検査)と異なり、母体への侵襲がほとんどないことが最大の特徴です。(1)
NIPTの感度(陽性を正しく検出する割合)は、21トリソミーに対して99%以上と非常に高く、偽陽性率も0.1%程度と低いことが多くの臨床研究で報告されています。ただし、あくまで「確率を推定するスクリーニング検査」であり、「確定診断」ではありません。陽性結果が出た場合は、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査で最終判断を行う必要があります。この点は、費用面・保険制度を理解する上でも重要なポイントとなります。(2)
公的医療保険(国民健康保険・社会保険)は使える?

結論から言うと、NIPTは国民健康保険や社会保険の対象外です。理由は、この検査が「病気の診断や治療」ではなく、あくまで「リスクを推定するスクリーニング検査」に分類されているためです。(1)
日本の医療保険制度は「治療を目的とした医療行為」に対して給付される仕組みになっており、予防や健康診断、スクリーニング検査などは原則として保険給付の対象外です。NIPTもこのカテゴリに該当するため、検査費用は全額自己負担となります。
厚生労働省が公表している「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)等の情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」にも、保険適用を明示する記載はありません。この指針では、NIPTの実施体制や遺伝カウンセリングの重要性について言及されていますが、費用に関しては自費診療であることが前提とされています。(1)
なぜNIPTは保険適用外なのか?その制度的背景
NIPTが保険適用されない理由をもう少し深く掘り下げてみましょう。日本の公的医療保険制度における保険適用の判断基準には、大きく以下の3つのポイントがあります。
- 「疾病の診断・治療・予防」を直接の目的とする医療行為であること
- 有効性・安全性・経済性に関する十分なエビデンスがあること
- 中央社会保険医療協議会(中医協)での審議を経て、厚生労働大臣が承認すること
NIPTは胎児の染色体異常の「リスクを推定する」ものであり、母体の疾病を診断・治療するものではありません。また、スクリーニング検査という性質上、結果が陽性であっても確定診断には至らず、追加の検査が必要となります。こうした「確定診断に至らないスクリーニング」という位置づけが、保険適用のハードルとなっているのです。(3)
さらに、出生前検査には倫理的な議論が伴います。「障害の有無で命の選別につながるのではないか」という懸念から、国が積極的に推奨する検査として位置づけることへの慎重な姿勢も、保険適用が進まない背景の一つと考えられます。(4)
NIPTの費用はどのくらい?施設別の相場
NIPTの検査費用は施設によって異なりますが、一般的には10万~20万円程度が相場です。費用に差が生じる主な要因を以下にまとめます。(3)
- 検査項目の範囲(基本3トリソミーのみか、性染色体異常や微小欠失も含むか)
- 遺伝カウンセリングの有無と内容
- 認証施設か非認証施設か
- 陽性時の確定検査費用の補助があるか
認証施設(日本医学会が認証した施設)では、検査前後に遺伝カウンセリングが義務づけられており、その分費用がやや高くなる傾向がありますが、検査の意義やリスクについて十分な説明を受けられるというメリットがあります。一方、非認証施設では価格が比較的抑えられている場合がありますが、カウンセリング体制や陽性時のフォローアップが不十分なケースも報告されています。(4)
なお、NIPTの費用は医療費控除の対象になる可能性があります。税務上、医療費控除は「診療や治療の対価として支払ったもの」が対象ですが、出生前検査が「診療」に含まれるかどうかは個別の判断になるため、確定申告時に税務署や税理士に相談することをおすすめします。
都道府県の支援はある?
「では、自治体による補助制度はあるの?」という点については、47都道府県いずれもNIPT検査費そのものを助成していません(2025年10月現在)。出生前検査に特化した費用助成制度は、国レベルでも自治体レベルでも設けられていないのが現状です。
ただし、自治体はNIPTを含む出生前検査に関して、相談支援や情報提供を行っています。各都道府県の「性と健康の相談センター(旧:女性健康支援センター)」や「保健所」では、検査を受ける前の不安や倫理的な悩み、検査後の対応などを相談できる窓口が整備されています。(5)
厚生労働省およびこども家庭庁が提供する「全国相談窓口一覧」では、都道府県別に問い合わせ先を確認することができます。
このように、自治体の支援は「金銭的補助」ではなく、「情報支援」「心理的サポート」に重点が置かれています。相談窓口では、遺伝カウンセラーや助産師、保健師といった専門職が対応するケースも多く、検査を受けるかどうかの意思決定を支援する重要な役割を担っています。検査前に不安や疑問がある場合は、まずこうした無料の相談窓口を活用されることをおすすめします。
民間の医療保険での取り扱い
民間の医療保険(生命保険や医療保険)でも、NIPTが給付対象になるケースはほとんどありません。多くの保険商品は、「治療行為」または「確定診断された疾患」に関連する医療費をカバーする設計になっており、検査目的の行為は対象外とされています。(6)
例えば、入院・手術・先進医療などに関する給付はあっても、「遺伝子検査」「出生前診断」などは除外されていることが多いのが現状です。また、NIPTは胎児側の検査であるため、母体の疾病治療とはみなされません。
海外の保険では条件付きでNIPT費用の一部~全額までの補助が受けられるケースもあるため、もし海外の保険で補償を検討する場合は、加入中または検討中の保険会社に以下を確認する必要があります:
- 出生前診断や遺伝子検査が給付対象に含まれるか
- 「診断目的でない検査」が除外項目になっていないか
- 過去の支払事例(実際に給付された例)があるか
現時点では、日本国内でNIPTを明確に補償対象とする民間医療保険は公表されていません。ただし、保険商品は年々改定されるため、今後「出生前検査特約」などが登場する可能性はゼロではありません。検査を検討する際は、加入中の保険の約款を改めて確認してみることも一つの手段です。(6)
海外ではNIPTに保険が適用される?各国の状況
日本では自費検査のNIPTですが、海外では公的保険や補助制度の適用が進んでいる国もあります。代表的な例を見てみましょう。
イギリス(NHS):英国国民保健サービス(NHS)では、従来のスクリーニング検査でリスクが高いと判定された妊婦に対し、NIPTを追加検査として無料で提供しています。2018年に試験導入され、その後段階的に全国展開が進みました。(7)
オランダ:2017年からNIPTを公費負担のスクリーニングプログラムに組み込み、妊婦が希望すれば少額の自己負担で検査を受けられる制度を導入しています。
ベルギー:2017年より、NIPTが公的医療保険でカバーされるようになり、全妊婦が少額の自己負担で検査を受けることが可能です。
アメリカ:民間保険が主流の米国では、保険会社によって対応が異なります。35歳以上の高齢妊娠や、過去の妊娠で染色体異常があった場合など、一定のリスク要因がある場合にNIPT費用がカバーされるケースがあります。
このように欧米諸国では、NIPTの有用性が広く認められ、公的支援の枠組みに組み込む動きが加速しています。日本においても今後、同様の議論が進む可能性があります。
今後の制度改正の可能性
2022年に日本医学会が「出生前検査認証制度」を新たに整備し、NIPTを実施する施設の基準を明確化しました。また、こども家庭庁が出生前検査に関する情報提供体制の強化を進めており、国としての関与が徐々に高まっています。(5)
現在のところ、NIPTの保険適用に向けた具体的な議論は公にはなされていませんが、以下のような社会的変化が、将来的な制度改正を後押しする要因になり得ます。
- 晩婚化・高齢出産の増加に伴うNIPT需要の拡大
- 検査技術の進歩と検査コストの低下
- 欧米での保険適用の広がりと国際的な潮流
- 遺伝カウンセリング体制の整備と倫理面の議論の成熟
- 不必要な侵襲的検査(羊水検査等)を減らす医療経済的メリット
特に、NIPTの普及によって不必要な羊水検査が減少すれば、流産リスクの低減という医療上のメリットに加え、医療費全体の削減にもつながる可能性があります。こうした観点から、中長期的には保険適用や一部公費負担の議論が進む可能性は十分にあるでしょう。
費用負担を少しでも軽減するためにできること
現状ではNIPTは全額自己負担ですが、費用面の負担を少しでも軽減するためにできることがあります。
- 医療費控除の活用:確定申告で医療費控除を申請する際、NIPTの費用が対象になる場合があります。領収書は必ず保管しておきましょう
- 施設ごとの料金比較:認証施設・非認証施設で料金体系が異なるため、複数の施設の費用とサービス内容を比較検討しましょう
- 検査項目の選択:基本的な3トリソミー検査のみであれば費用を抑えられる施設もあります。必要な検査項目を医師と相談して絞り込むことも一つの方法です
- 陽性時の確定検査費用補助:一部の施設では、NIPT陽性時の羊水検査費用を負担してくれるプランがあります。トータルコストで考えることが重要です
- 無料相談窓口の活用:自治体の相談窓口を利用すれば、検査の必要性について専門家の意見を無料で聞くことができ、無駄な出費を避けることにもつながります
まとめ
NIPTは、妊婦の年齢上昇や技術の普及とともに急速に広がっていますが、日本の制度面ではまだ「自費検査」という位置づけが続いています。欧米では一部の国で公的保険の適用が進んでおり、今後日本でも制度改正が議論される可能性がありますが、現状では下記のようになっています。
- 公的医療保険(国保・社保):適用外、全額自己負担
- 都道府県の助成:なし(ただし相談支援はあり)
- 民間医療保険:原則カバー対象外
- 費用の目安:10〜20万円前後
検査を検討する際は、費用だけでなく、検査の意義やリスク、結果を受け止める準備についても医師・遺伝カウンセラーと十分に話し合うことが大切です。また、自治体の無料相談窓口を活用し、正確な情報に基づいた意思決定を行うことをおすすめします。費用面については、医療費控除の活用や複数施設の比較検討など、できる範囲での工夫を検討してみてください。(5)
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よくあるご質問
Q1. NIPTの費用は健康保険で3割負担にならないのですか?
A. いいえ、NIPTは公的医療保険の対象外です。NIPTは「リスクを推定するスクリーニング検査」であり、「病気の診断・治療」を直接の目的とする医療行為には該当しないため、国民健康保険・社会保険ともに適用されず、全額自己負担となります。(1)
Q2. NIPTの費用は医療費控除の対象になりますか?
A. 医療費控除の対象になる可能性があります。税務上の判断は個別に異なるため、確定申告の際に税務署や税理士に確認されることをおすすめします。いずれの場合も、検査の領収書は必ず保管しておきましょう。
Q3. 自治体からNIPTの費用補助はありますか?
A. 2025年10月時点で、47都道府県いずれもNIPT検査費そのものを助成する制度はありません。ただし、各自治体の相談センターでは検査前後の不安や悩みについて無料で相談できる窓口が整備されており、情報支援や心理的サポートを受けることは可能です。(5)
Q4. 海外ではNIPTに保険が適用される国はありますか?
A. はい、イギリス(NHS)、オランダ、ベルギーなどでは公的保険や公費負担プログラムの一環としてNIPTが提供されています。アメリカでも民間保険によっては高齢妊娠などの条件付きで費用がカバーされるケースがあります。日本でも今後、同様の制度が検討される可能性はあります。(7)
Q5. 民間の生命保険や医療保険でNIPTの費用をカバーできますか?
A. 現時点では、日本国内でNIPTを明確に補償対象とする民間医療保険は確認されていません。多くの保険商品は「治療行為」や「確定診断された疾患」に関連する費用をカバーする設計であり、スクリーニング検査は対象外となっていることがほとんどです。ただし、保険商品は更新されるため、加入中の保険約款を改めて確認されることをおすすめします。(6)
Q6. NIPTの検査費用の相場はどのくらいですか?
A. 施設や検査項目の範囲によって異なりますが、一般的には10万~20万円程度です。基本的な3トリソミー検査のみであれば比較的安価に、性染色体や微小欠失を含む拡張検査では費用が高くなる傾向があります。遺伝カウンセリングの有無や陽性時の確定検査費用補助の有無もトータルコストに影響します。(3)
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) 厚生労働省「母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する指針」, 1966年2月(2) くらべる保険なび, 2024年3月
(3) NIPTカウンセリング, 2026年4月
(4) 新型出生前診断に保険適用ができるのか
(5) Med J Aust, 2015年7月
(6) 妊娠中の検査に関する情報サイト, 2022年6月
(7) Stem Cells Transl Med, 2016年9月