結果報告書の見方(一般血縁鑑定;STR)

2019.07.30

リライティング日:2024年12月21日

DNA親子鑑定の結果報告書に記載されるSTR(Short Tandem Repeat)型の表の見方を詳しく解説。座位ごとの遺伝子型の共有状況から、父子関係の肯定・否定がどのように判断されるかを具体例とともに説明します。

結果報告書の見方(一般血縁鑑定;STR)

結果報告書の見方(一般血縁鑑定;STR)弊社の一般血縁鑑定では、DNA上の特定の領域(STR座位)を解析し、被験者間の血縁関係を科学的に判定しています。結果報告書の1枚目には、鑑定結果の報告文として以下のような表現が用いられます(父子鑑定を例としています)。

肯定の場合:AはBの生物学的な父として排除されません。
否定の場合:AはBの生物学的な父として排除されます。

この表現は、法科学の国際的な慣例に基づくものであり、科学的に厳密な記述方法です。しかし、初めてこの文章をご覧になるお客様にとっては、「排除されません」「排除されます」という表現がやや分かりにくく感じられることもあるかと思います。実際に、結果報告書の見方に関するお問い合わせは一定数いただいているのが現状です。(1)

そのようなお問い合わせの際には、結果報告書の3枚目にある「テスト結果の解析」の項目に記載されている文章や肯定確率(%)をご覧いただくようにご案内しています。肯定確率は、父子関係が存在する場合と存在しない場合のそれぞれの確率を統計学的に比較した数値であり、99.99%以上であれば「事実上、父子関係が存在する」と判断されるのが国際的な基準です。(2)

また、お問い合わせをいただいていないお客様の中にも、この「テスト結果の解析」の項目だけを見て結果を確認される方が多くいらっしゃるのが実情です。しかし、ご自身の手元にある鑑定結果がどのように導き出されたのかを正確に理解したいというお客様も多くいらっしゃいますので、こちらのページにて結果報告書の理解を補助するための詳しい説明をさせていただきます。

一般血縁鑑定の鑑定結果における正確な理解

一般血縁鑑定の鑑定結果における正確な理解一般血縁鑑定の鑑定結果を正確に理解するためには、結果として添付されているSTR(Short Tandem Repeat)の表の見方を把握することが不可欠です。

STR(Short Tandem Repeat)とは何か

STRとは、DNAの塩基配列のうち、2〜6塩基程度の短い単位配列が連続して繰り返し存在する特殊な領域のことです。この繰り返し回数(リピート数)は個人によって異なり、この違いを利用してDNA型鑑定が行われます。(3)

重要なポイントを改めて強調しますが、STRの繰り返し回数は人によって異なります。これが個人間で異なることにより、血縁関係の調査や、犯罪捜査における犯人の特定などが可能になるのです。(4)

そして、このSTR型は一般的に父親から半分、母親から半分がそれぞれ遺伝します。これはメンデルの遺伝法則に基づく基本原理です。人間の染色体は父由来と母由来の2本が対になっており(常染色体は22対)、各STR座位においても父親由来のアレル(対立遺伝子)と母親由来のアレルを1つずつ受け継ぎます。したがって、DNA親子鑑定ではすべての検査対象座位において、父や母から子に遺伝子型が正しく受け継がれているかどうかを確認します。

鑑定に使用される座位数について

通常、DNA親子鑑定では13個以上の座位を解析対象とします。これは米国FBIが定めた標準的なCODIS(Combined DNA Index System)の基準に準拠しており、検査機関によっては20座位以上を検査する場合もあります。座位数が多いほど鑑定の精度が高くなり、偶然の一致の可能性が極めて低くなります。

以下では、理解を助けるために6個程度の座位を示した簡略化された表を使って、具体的な見方を説明します。

STR鑑定結果の表の見方(具体例)

STR鑑定結果の表の見方(具体例)

座位(loci)父A子B
D3S135815 – 1615
vWA18 – 1918 – 19
D16S5399 – 1210 – 12
CSF1PO12 – 1312 – 13
D8S117911 – 1510 – 11
D21S1129 – 3029

※上記の数値は説明のためランダムに記載したものです。

表の基本構造を理解する

  • 左端の列(座位):検査対象のSTR座位名が記載されています。この列を見ることで、何個の座位を確認したのかを知ることができます。
  • 右側の列(各被験者のSTR型):父A、子B等の各被験者のSTR型の結果が数値で表されています。
  • 数値の意味:各数値はそのSTR座位における繰り返し回数(アレル値)を示しています。例えば「15 – 16」は、2本の染色体上でそれぞれ15回と16回の繰り返しを持っていることを意味します。
  • 数値が1つだけの場合:子BのD3S1358のように「15」と1つだけ記載されている場合、父由来と母由来の両方が同じアレル値であること(ホモ接合体)を示しており、正確には「15 – 15」と表記されるべきものが省略されています。

父子関係が肯定される場合(父Aと子B)

まず、父Aと子Bの関係について見ていきましょう。

  1. D3S1358座位:父Aの遺伝子型は15と16、子Bの遺伝子型は15(=15-15)です。子Bは「15」のアレルを父Aから受け継いでいる可能性があり、STR型を共有しています。
  2. vWA座位:父Aは18と19、子Bも18と19を持っています。いずれかのアレルを父Aから受け継いでいる可能性が確認できます。
  3. D16S539座位:父Aは9と12、子Bは10と12です。「12」のアレルを共有しています。
  4. CSF1PO座位:父Aは12と13、子Bも12と13です。アレルを共有しています。
  5. D8S1179座位:父Aは11と15、子Bは10と11です。「11」のアレルを共有しています。
  6. D21S11座位:父Aは29と30、子Bは29(=29-29)です。「29」のアレルを共有しています。

このように、すべての座位においてSTR型を共有しているとき、父Aは子Bの生物学的な父親であると判断されます。報告書では「AはBの生物学的な父として排除されません」と表現されます。

父子関係が否定される場合(父Aと子C)

次に、否定の例として父Aと子Cの関係を見てみましょう。

座位(loci)父A子C
D3S135815 – 1616
vWA18 – 196 – 11
D16S5399 – 129 – 10
CSF1PO12 – 1310 – 11
D8S117911 – 1518 – 24
D21S1129 – 3015 – 18

D3S1358座位では父Aの遺伝子型は15と16、子Cの遺伝子型は16であり、「16」のSTR型を共有しています。しかし、その下のvWA座位を見ると、父Aは18と19を持っているのに対し、子Cは6と11とまったく異なるSTR型を持っています。

さらに、CSF1PO座位でも父Aが12と13であるのに対し子Cは10と11、D8S1179座位でも父Aが11と15に対し子Cは18と24、D21S11座位でも父Aが29と30に対し子Cは15と18と、複数の座位でSTR型の不一致が確認されます。

このように、STR型が共有されていない座位が複数ある場合、父Aは子Cの生物学的な父親ではないと判断されます。報告書では「AはCの生物学的な父として排除されます」と表現されます。一般的に、3座位以上の不一致がある場合は父子関係が否定されると判断されます。(2)

突然変異(ミューテーション)について

ごくまれに、実際には親子関係があるにもかかわらず、1〜2座位でSTR型が一致しないケースが見られることがあります。これは突然変異(ミューテーション)と呼ばれる現象によるもので、DNAの複製過程でSTRの繰り返し回数が1回分だけ増減することがあります。

このような場合、鑑定機関では追加の座位を解析したり、統計学的な計算(パターニティインデックスの補正)を行うことで、突然変異なのか本当の不一致(非血縁)なのかを慎重に判断します。3座位以上でアレルが完全に一致しない場合は、突然変異ではなく父子関係の否定と判定されるのが一般的です。

肯定確率(CPI)の意味

結果報告書の「テスト結果の解析」セクションに記載される肯定確率は、CPI(Combined Paternity Index:複合父権指数)に基づいて算出されます。これは、各座位ごとに計算されたパターニティインデックス(PI)を掛け合わせた値をもとに、ベイズの定理を用いて確率に変換したものです。

肯定確率が99.99%以上であれば、「父子関係が事実上確実である」とみなされます。一方、否定の場合は肯定確率が0%となり、複数座位での不一致が明確に示されます。

結果報告書の構成

弊社の一般血縁鑑定の結果報告書は、一般的に以下の構成となっています。

  • 1枚目:鑑定結果の報告文(肯定または否定の結論)
  • 2枚目:STR型の解析結果一覧表(上記で説明した座位ごとのアレル値)
  • 3枚目:テスト結果の解析(統計学的な計算結果と肯定確率)

結果を確認される際は、まず1枚目の結論をご確認いただき、その根拠として2枚目のSTR表と3枚目の肯定確率をご覧いただくと、より深い理解が得られます。

DNA鑑定の精度と信頼性

STR型を用いたDNA親子鑑定は、現在の法科学において最も信頼性の高い血縁関係検査法のひとつです。複数の独立した座位を同時に解析することで、偶然の一致が起こる確率を天文学的に低い水準にまで下げることが可能です。(4)

例えば、20座位を解析した場合、血縁関係のない2人が偶然すべての座位でアレルを共有する確率は、数十億分の1から数百億分の1という極めて低い値となります。この高い識別力が、DNA鑑定が裁判所や行政機関においても証拠として広く認められている理由です。(3)

以上が一般的なSTRの表の見方と、結果報告書の読み方に関する解説です。このほか、結果報告書に関するご不明な点やお問い合わせなどがございましたら、弊社カスタマーサポートまでお気軽にご連絡ください。

よくあるご質問

Q1. 「排除されません」という表現は父子関係があるという意味ですか?

A. はい、「AはBの生物学的な父として排除されません」という表現は、すべてのSTR座位で遺伝子型の共有が確認され、父子関係が科学的に肯定されたことを意味します。法科学では「証明する」ではなく「排除されない」という控えめな表現を用いるのが国際的な慣例です。具体的には、肯定確率が99.99%以上であれば、事実上父子関係が確実であると判断されます。

Q2. STR座位の数値が1つしか書いていない場合はどういう意味ですか?

A. 数値が1つだけ記載されている場合(例:「15」)は、父由来と母由来の両方のアレルが同じ値であること(ホモ接合体)を示しています。正式には「15 – 15」と記載されるべきところが省略された表記です。2つの異なる値がある場合(例:「15 – 16」)はヘテロ接合体と呼ばれます。

Q3. すべての座位が一致しなくても親子関係が肯定されることはありますか?

A. ごくまれに、実際に親子関係があるにもかかわらず1〜2座位でSTR型が一致しないケースがあります。これは突然変異(ミューテーション)と呼ばれる現象で、DNAの複製過程でリピート数が変化することにより起こります。このような場合、追加解析や統計学的な補正を行い、総合的に判断されます。3座位以上の不一致がある場合は否定と判断されるのが一般的です。

Q4. 肯定確率(%)はどのように算出されるのですか?

A. 肯定確率は、各STR座位ごとに算出されるパターニティインデックス(PI)をすべて掛け合わせた複合父権指数(CPI)をもとに、ベイズの定理を用いて確率に変換して求められます。各座位のアレル頻度(一般集団における出現率)のデータベースを参照し、「検査対象者が父親である場合」と「無関係の男性が父親である場合」の尤度比を計算します。

Q5. DNA親子鑑定で使用されるSTR座位は何個ですか?

A. 一般的に13個以上のSTR座位が使用されます。これは米国FBIが定めたCODIS基準に準拠しています。検査機関によっては20座位以上を解析する場合もあり、座位数が多いほど鑑定の精度と信頼性が向上します。弊社では十分な数の座位を検査し、高い精度の鑑定結果をお届けしています。

Q6. 結果報告書に関して不明な点がある場合はどこに問い合わせればよいですか?

A. 結果報告書の内容についてご不明な点がございましたら、弊社のカスタマーサポートまでお気軽にご連絡ください。専門スタッフが丁寧にご説明いたします。報告書の3枚目「テスト結果の解析」セクションに記載されている肯定確率と合わせてご確認いただくと、よりスムーズにご理解いただけます。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) 遺伝子検査・DNA鑑定のseeDNA, 2026年2月
(2) Wikipedia
(3) J Biol Chem, 1997年3月
(4) 神戸市立医療センター中央市民病院, 2022年4月
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