リライティング日:2025年02月04日
DNA鑑定では検体の種類によって精度は変わらず、すべての細胞に同じDNAが含まれています。鑑定成功の鍵は検体の量と保存状態にあり、適切な管理が重要です。
『綿棒を用いて採取した口腔上皮』以外の検体
DNA鑑定の検体(検査材料)として、基本的には綿棒を用いて採取した口腔上皮(口内の細胞)が用いられます。口腔上皮は採血のような医療行為が不要で、鑑定成功率がほぼ100%と非常に高いことがその理由です。ほおの内側を綿棒で軽くこするだけで採取できるため、生まれたばかりの赤ちゃんでもDNA鑑定を実施できます。
しかし、さまざまなご事情から口腔上皮以外の検体を希望されるケースも少なくありません。以下が代表的な検体です。
- 血液・血痕
- 精液
- タバコの吸殻
- 紙コップ
- 毛髪(毛根付き)
- 歯ブラシ
- 爪
- 耳垢
- 鼻水
- ガム
- 割り箸
- 歯
これらの検体は口腔上皮と同じ精度で鑑定できるのでしょうか?この疑問について以下で詳しく解説いたします。
検体の種類で鑑定精度は変わらない
結論から述べると、DNA鑑定において検体の種類によって鑑定の精度が変わることはありません。
その理由は、身体のどの細胞にも同じDNAが格納されているためです。口腔上皮細胞、皮膚の上皮細胞、筋肉細胞、神経細胞、白血球など、機能がまったく異なる細胞であっても、含まれるDNA配列はすべて同一です。ヒトの身体を構成する約37兆個の細胞は、すべて1つの受精卵から分裂・分化して生まれたものであり、核内に格納されるゲノム情報は基本的に変わりません。(1)
DNA鑑定で広く用いられるSTR(Short Tandem Repeat)法は、検体の種類ではなく、抽出されたDNAの質と量に依存する解析手法です。 したがって、鑑定に必要な量の正常なDNAを抽出できる検体であれば、ほぼ100%の確率で検査結果が得られます。どの検体から取得したDNAであっても、十分な量と質が確保されていれば同等の鑑定結果を得ることが可能です。(2)
近年の法科学研究でも、微量検体からのDNA型判定においてSTR解析の信頼性が繰り返し確認されており、適切に処理された検体であれば検体間で有意な精度差は認められないことが報告されています。 このことからも、鑑定精度を左右するのは検体の「種類」ではなく「状態」であるといえます。(3)
検体の量と保存状態が鑑定成功の鍵
綿棒以外の検体でもっとも注意すべき点は、検体の量や保存状態によって鑑定の成功率が変動することです。検体量が不足すれば十分なDNAが抽出できず、保存状態が悪ければDNAが分解されて正常な解析結果が得られなくなります。(4)
DNA分子は紫外線・高温・湿度・細菌の作用などにより加水分解や酸化が進行します。特に高温多湿の環境下ではDNAの断片化が急速に進むため、検体の保存方法が鑑定成功に直結する重要な要素です。法科学の分野でも、検体の適切な乾燥処理と低温保管がDNA保存の基本原則として確立されています。(5)
毛髪を検体として使用する場合の注意点
毛髪はDNA鑑定の検体として広く知られていますが、父子鑑定に必要な核DNAは毛幹部分にはほとんど含まれていません。STR解析で用いられるのは核DNAであるため、毛根部の細胞が不可欠です。(1)
毛髪を検体とする際は、以下の手順を守ってください。
- 採取時に毛根(白い半透明の組織)が付着していることを確認する
- 最低でも3〜5本以上を確保する(ヒゲなどの体毛も同様)
- 鑑定対象者以外の体毛が混入しないよう細心の注意を払う
- 採取後は清潔な紙封筒に入れ、乾燥した状態で保管する
自然に抜け落ちた毛髪は毛根が退縮・脱落していることが多く、DNA鑑定には不向きなケースがあります。可能な限り、頭皮から直接引き抜いた毛髪の使用が推奨されます。
唾液付着検体を使用する場合の注意点
唾液そのものには細胞があまり含まれていないうえ、唾液中の細菌が繁殖しやすいため、検体としては注意が必要です。唾液には口腔内から剥離した上皮細胞が少量含まれますが、綿棒で直接こすり取った場合と比べると細胞量はかなり少なくなります。
歯ブラシ、割り箸、タバコの吸い殻、紙コップなどの唾液付着検体は、水分を含んだまま保管すると細菌が急速に繁殖し、DNAの分解が進行します。以下のポイントを守って保管してください。
- 直射日光を避けて風通しの良い場所でしっかり乾燥させる
- 乾燥後は清潔な紙袋や紙封筒に入れて保管する(ビニール袋は結露の原因となるため避ける)
- できるだけ早く鑑定機関に送付する
- 他の人が触れないよう、素手での接触を避けて手袋を使用する
その他の検体における留意点
血液・血痕は白血球を豊富に含むため、比較的DNA含有量が多く成功率は高い傾向にあります。ただし、血痕が長期間放置されたり高温環境に晒されたりした場合はDNA分解が進むため注意が必要です。
爪はケラチンが主成分ですが、爪の裏側や根元に付着した皮膚細胞からDNAを抽出できます。できるだけ根元に近い部分を含む爪片を採取することで成功率が高まります。
耳垢は外耳道の皮膚から剥離した上皮細胞を含んでおり、DNA鑑定の検体として利用可能です。湿性タイプの耳垢のほうが細胞量が多い傾向がありますが、いずれの場合も十分な量の確保が重要です。
検体別の特徴まとめ
以下に代表的な検体の特徴と取り扱いのポイントをまとめます。
| 検体の種類 | DNA含有量の傾向 | 保管時の注意点 |
|---|---|---|
| 口腔上皮(綿棒) | 非常に多い | 乾燥させて常温保管 |
| 毛髪(毛根付き) | 毛根部に依存 | 3〜5本以上、紙封筒で保管 |
| 血液・血痕 | 多い | 乾燥させて冷暗所保管 |
| 歯ブラシ・割り箸等 | 少〜中程度 | 十分に乾燥させてから保管 |
| 爪 | 少〜中程度 | 根元寄りの部分を採取 |
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以上のように、綿棒以外の検体を用いたDNA鑑定では、検体の種類ではなく検体の量と保存状態が鑑定の成功に極めて重要です。どのような検体でも、正常なDNAを十分に抽出できれば口腔上皮と同等の精度で鑑定結果を得ることが可能です。
seeDNAでは、万が一鑑定結果が得られなかった場合、綿棒による口腔上皮を用いて何回でも無料で再鑑定することが可能です。綿棒以外の検体を使用される場合でも安心してご依頼いただけます。
よくあるご質問
Q1. DNA鑑定の精度は検体の種類によって変わりますか?
A. いいえ、検体の種類によって鑑定の精度が変わることはありません。人間の身体を構成するすべての細胞には同じDNAが含まれているため、十分な量の正常なDNAが抽出できれば、どの検体でも同等の精度で鑑定結果を得ることができます。
Q2. 毛髪だけでDNA鑑定はできますか?
A. 毛髪の毛幹部分(髪の毛そのもの)には父子鑑定に必要な核DNAがほとんど含まれていません。鑑定を成功させるためには毛根部分が付着した状態の毛髪が3〜5本以上必要です。自然に抜け落ちた毛髪は毛根が退縮していることが多いため、成功率が下がる場合があります。
Q3. 歯ブラシやタバコの吸い殻はどのように保管すればよいですか?
A. 唾液が付着した検体は細菌が繁殖しやすいため、直射日光を避けてしっかりと乾燥させてから保管してください。ビニール袋は結露の原因になるため避け、清潔な紙袋や紙封筒に入れて保管し、できるだけ早く鑑定機関に送付することが推奨されます。
Q4. 綿棒以外の検体で鑑定結果が得られなかった場合はどうなりますか?
A. seeDNAでは、万が一鑑定結果が得られなかった場合、綿棒による口腔上皮を用いて何回でも無料で再鑑定を行うことが可能です。綿棒以外の検体をご使用になる場合でも安心してご依頼いただけます。
Q5. 爪や耳垢でもDNA鑑定は可能ですか?
A. はい、可能です。爪は裏側や根元に付着した皮膚細胞からDNAを抽出できます。耳垢も外耳道の皮膚から剥離した上皮細胞を含んでいるため、DNA鑑定の検体として使用できます。いずれも十分な量を確保し、清潔な状態で保管することが成功率を高めるポイントです。
Q6. 血液と口腔上皮では、どちらの方がDNA鑑定に適していますか?
A. どちらも精度に差はありません。ただし、血液の採取には医療行為(採血)が必要であるのに対し、口腔上皮は綿棒でほおの内側をこするだけで簡単に採取できます。そのため、手軽さと安全性の観点から口腔上皮が最も推奨される検体となっています。
Q7. 検体を送る際にビニール袋を使ってはいけないのはなぜですか?
A. ビニール袋は通気性がないため、内部に結露(水滴)が発生しやすくなります。結露による湿気は細菌の繁殖を促進し、DNAの分解を加速させてしまいます。検体は必ず通気性のある紙袋や紙封筒に入れて保管・送付してください。
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) J Biol Chem, 1997年3月(2) Angew Chem Int Ed Engl, 2005年12月
(3) Nature, 2011年9月
(4) Vision Res, 2004年12月
(5) Seizure, 2007年6月