DNA鑑定の歴史と次世代のDNA解析方法について解説

2021.04.12

人のDNA解析計画(ヒトケノム計画)

2003年4月、「ヒトゲノム計画」が完了しました。 ヒトゲノム計画とは、1990年にアメリカのエネルギー省と厚生省によって立ち上げられたヒトゲノム(人間の遺伝子情報)の全塩基配列を解析するプロジェクトのことです。
プロジェクトで得られたデータはヒトゲノムの塩基配列の見本となっていますが、13年という長い年月と約10億ドルの費用が費やされました。

DNA鑑定の歴史を解説!パーソナルコンピューターが生み出した進化について

このようにDNAのデータ解析には、膨大な計算処理のため多くの時間を要するため、コンピューター技術の発展が必要不可欠となります。
以前『DNAの暗号解読の歴史』というタイトルで、ワトソンとクリックの暗号発見から、ニーレンバーグとオチェアの暗号競争の歴史までお話しました。
今回はその続きとして、パーソナルコンピューターが生まれることで急激に進化したDNA鑑定の歴史についてお話します。

古い解析方法

ヒトゲノム計画では、サンガー法というDNAの配列を決めるシークエンス方法が採用されていました。 サンガー法は、イギリスのフレデリック・サンガーによって1977年に発表されて以降、改良を加えながら進化した方法です。 一度に小さなDNA断片しか読み取れず、最後に読み取ったDNAを組み合わせていくため多くの時間を要しましたが、2005年頃より登場した次世代シークエンサーは、断片化した大量のDNAを同時に処理することにより高速の解読が可能となりました。

次世代DNA解析方法

次世代シークエンサーは、現在もなお広く使用されている方法で、サンガー法と比べて一日当たり約15,000倍ものデータを検出することができます。 また、大量のデータを検出できたとしても、それだけのデータを解析するには、コンピューターの性能が重要です。 ヒトゲノム計画が完了した2003年当時のコンピューターと現在のコンピューターの大きな違いは、「処理速度とストレージ容量」です。 コンピューターの処理速度の向上により、サンガー法では何年もかかっていたDNA解析を次世代シークエンサーではわずか数日で完了できるようになりました。 さらにストレージ容量の増加により、ゲノム解読で得られたテラバイト単位(1テラバイト=1000ギガバイト)の情報を保存できるようになりました。

DNAにデータを保存する

DNAにデータを保存する!?

次世代シークエンサーが主流の今、DNA鑑定の発展は、コンピューターの処理速度とストレージ容量に依存していると言っても過言ではありません。 そしてストレージ容量に関しては、DNAにデータを保存するという画期的な方法が注目されており、Microsoftをはじめとする一部の企業で開発が進められています。 DNAストレージと呼ばれ、DNAわずか1gで215ペタバイト(1ペタバイト=100万ギガバイト)ものデータを何千年も保存することができ、データ保存の未来を変える可能があると言われています。

このように、DNA鑑定とコンピューター技術は切っても切り離せない関係にあり、この20年の歴史でDNA鑑定の精度やスピードは急激に進化しました。 現在安価で高度なDNA鑑定が受けられるのも、コンピューター技術の発展のたまものと言えます。

コンピューター技術の発展がDNA鑑定の発展を支えてきたように、DNAそのものがDNA鑑定の発展を支えるという新しい時代が到来するのかもしれません。

参考資料