その食事はあなたに合っている?遺伝子検査で健康的な食生活

2022.01.12

リライティング日:2025年04月08日

遺伝子検査を活用して自分に合った食生活を見つける方法を解説。FGF21やALDH2など食嗜好に関わる遺伝子、FTOやANK1など疾患リスクに関わる遺伝子と食事の関連性を詳しく紹介します。

遺伝子検査で健康的な食生活を ― 自分に合った食事を見つけるために

遺伝子検査で健康的な食生活を ― 自分に合った食事を見つけるために近年、コンビニエンスストアやファストフード店、インスタント食品の普及などにより、手軽に食事を楽しめる環境が整いました。忙しい現代人にとって、これらの食品は非常に便利な存在です。しかしその反面、食事の栄養バランスが乱れやすくなり、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす原因となっています。厚生労働省が発表している国民健康・栄養調査でも、日本人の食塩摂取量や脂質エネルギー比率の増加、野菜摂取量の不足が継続的に指摘されており、食生活の改善は国民的な課題といえます。(1)

このような環境の中で健康を維持するためには、自分にとって効果的な栄養素の組み合わせを正しく判断し、日々の食品選びに反映させることが欠かせません。しかし、「何が自分にとって最適な食事なのか」を科学的に知ることは容易ではありません。そこで注目されているのが、遺伝子検査を活用した個別化栄養学(パーソナライズド・ニュートリション)のアプローチです。(2)

今回は、遺伝子検査によって自分の身体に適した食べ物が分かるのかどうかを、遺伝子と食事の関連性をふまえて詳しく解説します。遺伝子検査の結果を食事に活かすには、大きく2通りのパターンから考える必要があります。

遺伝的に自分が好む食事の傾向を知る

遺伝的に自分が好む食事の傾向を知る1つ目のパターンは、遺伝的に自分が好む食事の傾向を知ることです。私たちの食嗜好は、育った環境や文化的背景だけでなく、遺伝子にも大きく影響されていることが近年の研究で明らかになっています。摂取する傾向が高い食事を知ることによって、健康のための適量を知る基準とすることができます。

FGF21遺伝子と炭水化物・甘味の摂取傾向

炭水化物(甘いものを含む)の摂取量には、FGF21(線維芽細胞増殖因子21)という遺伝子が深く関係しています。FGF21は主に肝臓から分泌されるホルモンで、糖代謝やエネルギー恒常性の調節に重要な役割を果たしています。FGF21に特定の遺伝子型(バリアント)を持つ人は、炭水化物の摂取量が多い傾向があることが、複数の大規模ゲノム研究で明らかにされています。(3)(4)

具体的には、FGF21遺伝子の一塩基多型(SNP)であるrs838133やrs838145などのバリアントが、甘味への嗜好性や炭水化物の摂取割合に影響を及ぼすとされています。これらの遺伝子型を持つ人は、無意識のうちにパンやご飯、菓子類などの糖質を多く含む食品を選びやすい傾向があります。

炭水化物に栄養素が偏ってしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 糖尿病発症のリスク上昇:血糖値の急激な上下動が繰り返されることで、インスリン分泌機能が疲弊します
  • 内臓機能や免疫機能の低下:タンパク質が不足することで、臓器の修復や免疫細胞の産生が滞ります
  • 筋肉量の低下:筋タンパク質の合成に必要なアミノ酸が不足し、サルコペニア(筋肉減少症)のリスクが高まります
  • 肌トラブル:ビタミンやミネラルの摂取不足により、肌荒れや乾燥が生じやすくなります

ALDH2遺伝子とアルコール摂取傾向

アルコールの摂取量には、ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)という遺伝子が関係しています。ALDH2は、アルコールが体内で分解される過程で生成される有害物質「アセトアルデヒド」を無害な酢酸に変換する酵素をコードしています。日本人を含む東アジア人の約40〜45%はALDH2の活性が低い遺伝子型(ALDH2*2)を持つとされ、これが飲酒後の顔面紅潮(フラッシング反応)の原因となっています。(5)

一方、ALDH2の活性が正常な遺伝子型を持つ人は、アセトアルデヒドを効率的に分解できるため不快な症状が出にくく、結果としてアルコールの摂取量が多くなる傾向があります。飲酒量が習慣的に多くなると、以下のような健康リスクが高まります。

  • 肝障害:アルコール性脂肪肝から肝硬変、肝がんへの進展リスク
  • 高血圧:慢性的な飲酒による血管収縮・交感神経活性化
  • 脳卒中:高血圧と相まって脳血管障害のリスクが増大
  • 虚血性心疾患:動脈硬化の促進による冠動脈疾患リスク

いずれの場合も、自分の遺伝子のタイプから好きな食事や飲酒の傾向を客観的に知ることで、適切な摂取量を意識するきっかけとすることができます。

遺伝的な疾患リスクの可能性を知り、食生活を見直す

遺伝的な疾患リスクの可能性を知り、食生活を見直す2つ目のパターンは、遺伝的な疾患リスクの可能性を知り、食生活を見直すことです。遺伝子検査によって特定の疾患への遺伝的な素因が判明すれば、食事内容を予防的に調整することで発症リスクを低減できる可能性があります。

FTO遺伝子と肥満リスク

肥満リスクには、FTO(Fat mass and Obesity associated:脂肪と肥満関連)という遺伝子が関係しています。FTO遺伝子は2007年に大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)によって肥満との関連が初めて報告されて以来、最も研究が進んでいる肥満関連遺伝子の一つです。FTO遺伝子に特定の遺伝子型(リスクアレル)を持つ人は、肥満になるリスクが高い傾向があることが分かっています。(6)

このリスクが生じるメカニズムの一つとして、食欲を増進するホルモンであるグレリンの分泌異常が挙げられます。FTOのリスクアレルを持つ人は、グレリンの分泌調節がうまく機能しないことが多く、高カロリーな食事を好む上に、食べてもすぐにお腹が空くという状態になりやすくなります。これにより、エネルギーの過剰摂取が慢性化しやすいのです。(7)

グレリンの分泌を適切にコントロールし、肥満のリスクを回避するためには、以下のような対策が有効です。

  1. 定期的な有酸素運動の実施:ランニングやウォーキング、水泳などの有酸素運動はグレリンの分泌を抑制する効果が報告されています
  2. 筋力トレーニングの導入:筋肉量を増やすことで基礎代謝が向上し、エネルギー消費量が増加します
  3. 高タンパク質の食事:タンパク質は満腹感を持続させるホルモン(GLP-1やPYYなど)の分泌を促進し、グレリンの分泌を抑える効果があります
  4. 十分な睡眠の確保:睡眠不足はグレリンの分泌を増加させ、レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌を低下させることが知られています

ANK1遺伝子・NKX6-3遺伝子と糖尿病リスク

糖尿病リスクには、ANK1(アンキリン1)遺伝子NKX6-3遺伝子が関係しています。ANK1遺伝子は赤血球の細胞骨格に関わるタンパク質をコードしていますが、近年の研究ではインスリン分泌を行う膵臓β細胞の機能にも関連することが示されています。ANK1遺伝子およびNKX6-3遺伝子の特定の遺伝子型を持つ人は、2型糖尿病になるリスクが高い傾向があることが分かっています。(8)

糖尿病リスクを回避するには、血糖値を急激に上げない食事が大切です。具体的な対策としては、以下のポイントが挙げられます。

  • 炭水化物や糖分の多い食品を減らし、食物繊維を豊富に含む全粒穀物や野菜を増やす
  • 食べる順番を工夫し、野菜→タンパク質→炭水化物の順で食べることで血糖値の急上昇を防ぐ(ベジファースト)
  • 白米を玄米や雑穀米に置き換えるなど、GI値(グリセミック・インデックス)の低い食品を選ぶ
  • 摂取した糖質のエネルギーを運動によって効率的に消費する
  • 食後30分〜1時間以内の軽い運動(ウォーキングなど)で食後血糖値のピークを抑える

BCL11B遺伝子と高血圧リスク

高血圧リスクには、BCL11Bという遺伝子が関係しています。BCL11B遺伝子は免疫細胞の分化に関わる転写因子をコードしていますが、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の研究により、食塩感受性高血圧との関連が日本人集団で明らかにされています。BCL11B遺伝子に特定の遺伝子型を持つ人は、食塩の過剰摂取による高血圧のリスクが高い傾向があることが分かっています。(9)

日本人の食塩摂取量は世界的にみても高水準にあり、WHO(世界保健機関)が推奨する1日5g未満を大幅に上回っています。BCL11Bのリスクアレルを持つ人は特に、食塩の摂取量を意識的に減らすことで血圧上昇を回避できる可能性があります。具体的には、味噌汁の回数を減らす、漬物や加工食品の摂取を控える、出汁を効かせて減塩する、カリウムを多く含む食品(バナナ、ほうれん草など)を積極的に摂取するなどの工夫が有効です。

遺伝子検査を活用した食生活改善のステップ

このように遺伝子検査から疾患リスクを知り、逆算して食品を選び食事をすることによって、病気の発症を回避できる可能性が高まります。以下に、遺伝子検査の結果を食生活に活かすためのステップをまとめます。

  1. 遺伝子検査の実施:信頼性の高い検査機関で遺伝子検査を受け、食嗜好や疾患リスクに関わる遺伝子型を確認する
  2. 結果の正しい理解:遺伝子検査の結果は「確定診断」ではなく「リスクの傾向」であることを理解し、過度な不安を持たない
  3. 食生活の見直し:自分のリスクに応じて、摂取する栄養素のバランスや食品の選び方を調整する
  4. 運動習慣の導入:食事だけでなく、適度な運動を組み合わせることで遺伝的リスクの影響を軽減する
  5. 定期的な健康チェック:血液検査や健康診断を定期的に受け、食生活改善の効果をモニタリングする

最近では、カロリーや炭水化物、塩分などの量をメニュー表で確認できるようにしている飲食店も増えており、自分に適した食材を選択しやすい環境が整ってきています。

まとめ ― 遺伝子を知り、食生活を最適化する

今回は、遺伝子検査によって自分に合った食事が分かるのかについて、具体的な遺伝子と食事の関連性を交えて解説しました。どんな食べ物がその人に合っているかは遺伝子が関連しているため、遺伝子検査の結果は健康な食生活を送るための科学的な参考基準として活用することができます。

ただし、遺伝子はあくまで「体質の傾向」を示すものであり、実際の健康状態は日々の食事内容、運動習慣、睡眠、ストレス管理など多くの要素によって左右されます。遺伝子検査の結果を正しく理解し、日常の食生活に無理なく取り入れていくことが、長期的な健康維持への第一歩となるでしょう。

よくあるご質問

Q1. 遺伝子検査で自分に合った食べ物が具体的にわかりますか?

A. 遺伝子検査では、炭水化物への嗜好性やアルコール代謝能力、肥満リスク、糖尿病リスク、高血圧リスクなどに関わる遺伝子型を調べることができます。これにより「どのような栄養素を控えるべきか」「どのような食習慣に気をつけるべきか」といった傾向を科学的に把握することが可能です。ただし、特定の食品名をピンポイントで指示するものではなく、あくまで食生活改善の方向性を示す参考情報となります。

Q2. FGF21遺伝子が甘いもの好きに関係しているとのことですが、この遺伝子型を持っていると必ず糖尿病になりますか?

A. いいえ、FGF21遺伝子の特定の型を持っているからといって、必ず糖尿病になるわけではありません。遺伝子は「リスクの傾向」を示すものであり、実際の発症には食事内容、運動習慣、睡眠、ストレスなど多くの環境因子が関係します。炭水化物を好む傾向があることを知った上で、バランスの良い食事を心がけることが重要です。

Q3. ALDH2遺伝子検査でお酒に弱いとわかった場合、完全にお酒を控えるべきですか?

A. ALDH2の活性が低い遺伝子型(ALDH2*2)を持つ方は、アセトアルデヒドの分解能力が低いため、少量の飲酒でも体に負担がかかりやすいことが知られています。完全な禁酒が望ましいかどうかは個人の健康状態によりますが、無理に飲酒することは避け、飲む場合は少量にとどめることが推奨されます。かかりつけ医にご相談ください。

Q4. 遺伝子検査の結果は一生変わらないのですか?

A. はい、遺伝子の配列そのものは生涯を通じて変わりません。そのため、一度遺伝子検査を受ければ、同じ遺伝子に関する検査を再度受ける必要はありません。ただし、遺伝子の発現(どの程度機能するか)は、食事・運動・生活環境などの後天的要因(エピジェネティクス)によって変化することがあります。したがって、遺伝子検査の結果をもとに生活習慣を改善することには大きな意義があります。

Q5. 遺伝子検査の結果だけで食事を決めても大丈夫ですか?

A. 遺伝子検査はあくまで体質の「傾向」を知るためのツールです。食事の決定には、現在の健康状態、血液検査の結果、アレルギーの有無、持病の有無なども考慮する必要があります。遺伝子検査の結果を参考にしつつ、管理栄養士や医師などの専門家に相談しながら食事計画を立てることをおすすめします。

Q6. 遺伝子検査で判明する疾患リスクは食事だけで予防できますか?

A. 食事は疾患予防の重要な要素ですが、それだけで全てのリスクを回避できるわけではありません。適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理、定期的な健康診断なども組み合わせた総合的な健康管理が必要です。特にFTO遺伝子による肥満リスクに対しては、食事と運動の両面からのアプローチが効果的とされています。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) 東北メディカル・メガバンク機構, 2018年10月
(2) J Exp Med, 2018年9月
(3) 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果を公表します, 2020年10月
(4) note(ノート), 2025年5月
(5) Hum Mol Genet, 2013年5月
(6) Cell Metab, 2017年5月
(7) Alcohol Clin Exp Res, 2005年7月
(8) Science, 2007年5月
(9) 国立研究開発法人日本医療研究開発機構, 2020年5月
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