リライティング日:2024年09月04日
DNA鑑定で被検者以外の検体(唾液など)が混入しても、口腔上皮の細胞量が圧倒的に多いため結果に大きな影響はありません。万一大量混入があっても「鑑定不能」となるだけで誤判定は起こりません。
DNA鑑定で被検者以外の検体が混入した場合、結果はどうなる?
DNA血縁鑑定をはじめとするDNA型鑑定を依頼する際、「採取した綿棒に別の人の唾液が付いてしまったらどうしよう」と不安に感じる方は少なくありません。結論から申し上げると、正しく口腔上皮を採取した綿棒に微量の他者の唾液が付着したとしても、鑑定結果が変わることはありません。本記事では、なぜ混入があっても結果に影響しないのか、万一大量の混入が起きた場合にどうなるのか、さらにどのような対策が可能なのかについて、DNA鑑定の専門機関であるseeDNA法医学研究所の知見をもとに詳しく解説いたします。
被検者以外の検体の混入があっても結果は変わらない
DNA型鑑定に提出する口腔上皮(頬の内側の粘膜細胞)を採取する際には、専用の綿棒を被検者の頬の内側にしっかりとあてたまま、タテヨコ10往復ほど擦っていただきます。この操作によって、綿棒には非常に多くの口腔上皮細胞が付着します。一般の方が想像される量よりもはるかに多い細胞が採取されるため、仮に別の人の唾液が少量付着したとしても、被検者の口腔上皮から得られるDNA量の方が圧倒的に多くなります。(1)
具体的には、適切に採取された口腔上皮のDNA量は、付着した微量の唾液中のDNA量と比較して10倍以上多いとされています。DNA型鑑定では、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて特定の遺伝子座(STR:Short Tandem Repeat)を増幅し、そのパターンを解析します。この過程において、主要なDNA(被検者由来のもの)が圧倒的に多い場合、微量の混入DNAはバックグラウンドノイズとして処理され、解析結果に実質的な影響を与えません。(2)
法科学の分野では、検体中に複数人のDNAが混在する「混合試料(mixture)」の解析は確立された技術として知られています。しかし、口腔上皮の採取においては、被検者のDNAが支配的な割合を占めるため、通常は混合試料としての解析が必要になること自体がほとんどありません。したがって、微量の唾液の混入による鑑定結果への影響はないと断言できます。(3)
大量の唾液が付着した場合はどうなるのか
滅多に考えられないケースではありますが、被検者以外の人間の大量の唾液が綿棒に付着してしまった場合についても説明いたします。このようなケースでは、解析の段階で複数人分のDNAパターンが検出される可能性があります。しかし、重要なのは、この場合であっても単純に「鑑定不能」という結果が出るだけであり、間違った解析結果が報告されることはないという点です。
DNA型鑑定の品質管理においては、解析データに異常なパターン(想定外のアレル(対立遺伝子)の出現など)が認められた場合、鑑定士がその異常を検知し、結果の確定を保留する仕組みが整えられています。余程いい加減な鑑定機関でない限り、混入が疑われるデータをそのまま最終結果として報告することはありません。(4)
また、seeDNA法医学研究所では、鑑定結果が得られなかった場合には無料で再鑑定をお受けいただける制度を設けております。新たに検体を採取し直していただくことで、正確な鑑定結果を得ることが可能です。
混入が心配な場合の具体的な対策
前述の通り、微量の唾液の混入による鑑定への影響はないため、通常は特別な対策を講じる必要はありません。しかし、どうしても心配な場合には以下の方法で対処することができます。
- 新しいDNA型鑑定キットでの再採取:ご連絡いただければ、新たにDNA型鑑定キットを無料で発送いたします。改めて口腔上皮の採取をお願いいたします。
- 混入者の毛髪の送付:唾液が付着してしまった人(混入者)の毛髪を数本お送りいただくことで、被検者のDNA情報から混入者のDNA情報を識別し、差し引いて除去することが技術的に可能です。
- そのまま提出:微量の混入であればそのまま鑑定に進んでも問題ありません。万一鑑定不能となった場合は、無料再鑑定の対象となります。
いずれの場合も、生物学的親子関係が存在しないにもかかわらず「有り」と報告することは絶対にありません。DNA型鑑定では、各遺伝子座におけるアレルの一致・不一致を厳密に確認するため、混入によって親子関係の判定が誤って肯定方向に傾くことは原理的にあり得ないのです。
DNA型鑑定の信頼性を支える品質管理体制
DNA型鑑定の正確性は、検体の採取から解析、結果報告に至るまでの一連のプロセスにおける厳格な品質管理によって担保されています。seeDNA法医学研究所では、以下のような品質管理体制を整備しています。
- 検体ごとに固有のIDを付与し、取り違えを防止するトレーサビリティ管理
- 複数の鑑定士による二重チェック体制(ダブルブラインドテスト)
- 国際的に認められたSTR解析法に基づく標準化されたプロトコル
- ネガティブコントロール(陰性対照)を用いた汚染検知の実施
- 定期的な精度管理試験への参加と外部評価の導入
このような品質管理体制があるからこそ、仮に微量の混入が発生していたとしても、最終的な鑑定結果の正確性が確保されるのです。特にネガティブコントロールの使用は、実験過程での汚染(コンタミネーション)を検知するための基本的かつ非常に重要な手段であり、法科学分野における国際的なガイドラインでも推奨されています。(3)
口腔上皮の採取時に気をつけたいポイント
混入の影響はほとんどないとはいえ、より確実な鑑定結果を得るために、検体採取時には以下の点にご留意いただくことをお勧めします。
| ポイント | 具体的な内容 |
|---|---|
| 採取前の準備 | 採取の30分前から飲食・喫煙・歯磨きを控える |
| 手の清潔 | 綿棒の先端部分に触れないよう手を洗ってから採取する |
| 採取方法 | 頬の内側にしっかり当て、タテヨコ10往復擦る |
これらの基本的な注意点を守っていただくことで、十分な量の口腔上皮細胞を採取でき、仮に微量の混入があっても全く問題のない鑑定結果を得ることができます。
DNA鑑定の検体混入に関してご不安がある方は、お気軽にseeDNA法医学研究所までお問い合わせください。専門のスタッフが丁寧にご案内いたします。
よくあるご質問
Q1. 採取した綿棒に家族の唾液が少し付いてしまいましたが、鑑定結果に影響はありますか?
A. 影響はありません。正しく口腔上皮を採取した綿棒には非常に多くの細胞が付着しており、微量の唾液に含まれるDNA量の10倍以上にあたります。そのため、少量の唾液が混入しても鑑定結果が変わることはありませんのでご安心ください。
Q2. 大量に他人の唾液が付いてしまった場合、間違った鑑定結果が出ることはありますか?
A. 間違った鑑定結果が出ることはありません。大量の混入があった場合は、解析の段階で異常が検知され「鑑定不能」という結果になるだけです。親子関係がないのに「有り」と報告されることは原理的にあり得ませんのでご安心ください。
Q3. 鑑定不能になった場合、再鑑定は有料ですか?
A. seeDNA法医学研究所では、検体の混入等により鑑定結果が得られなかった場合、無料で再鑑定をお受けいただけます。新たにDNA型鑑定キットをお送りし、改めて検体を採取していただく形になります。
Q4. 混入した人の毛髪を送れば解決できるというのは本当ですか?
A. はい、本当です。唾液が付着してしまった人の毛髪を数本お送りいただくことで、その人のDNA情報を特定し、被検者のDNAデータから差し引いて除去することが技術的に可能です。これにより正確な鑑定結果を得ることができます。
Q5. 口腔上皮の採取時に注意すべきことはありますか?
A. 採取の30分前から飲食・喫煙・歯磨きを控えていただくこと、綿棒の先端部分に指で触れないこと、頬の内側にしっかり当ててタテヨコ10往復擦ることが主な注意点です。これらを守っていただくことで、十分な量の細胞が採取でき、より確実な鑑定結果が得られます。
Q6. 口腔上皮以外の検体(毛髪や爪など)でも同じように混入の心配はありませんか?
A. 毛髪や爪などの検体についても、被検者のDNA量が十分であれば微量の混入は問題になりません。ただし、検体の種類によって採取できるDNA量は異なりますので、ご不安な場合はseeDNA法医学研究所までお気軽にお問い合わせください。鑑定可能な検体について詳しくはこちらをご覧ください。
seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート
seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
家族や親子の血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、DNA鑑定の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。
【専門スタッフによる無料相談】

著者
医学博士 富金 起範
筑波大学大学院 生体統御・分子情報医学 修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) J Thorac Oncol, 2007年4月(2) Forensic Sci Int Genet, 2014年1月
(3) J Mol Biol, 2006年4月
(4) J Biol Chem, 1997年3月