リライティング日:2025年10月11日
NIPTの費用は日本で約9万〜25万円と幅があり、認定施設・非認定施設の違いや検査項目数で変動します。海外との比較や公的支援の現状、費用に含まれる内容を詳しく解説します。
はじめに

妊娠中に受けられる検査の中で、近年特に注目されているのがNIPT(エヌ・アイ・ピー・ティー、新型出生前診断)です。NIPTは正式名称を「Non-Invasive Prenatal Testing(非侵襲的出生前遺伝学的検査)」といい、母体の血液から胎児の染色体に関する情報を調べることができ、従来の羊水検査や絨毛検査に比べて母体や胎児へのリスクが極めて低いことから、多くの妊婦さんやご家族が関心を寄せています。(1)
NIPTの仕組みをもう少し詳しく説明すると、妊娠中の母体血液中には胎児に由来するセルフリーDNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)が微量に含まれています。このcffDNAは胎盤から放出されるもので、妊娠10週以降になると十分な量が検出可能になります。NIPTでは、母体の血液を10mL程度採取し、次世代シークエンシング(NGS)技術を用いてcffDNAの量を定量的に解析することで、胎児の染色体に数的異常がないかをスクリーニングします。(2)
しかし、NIPTは保険診療の対象ではなく、基本的に自費での検査となります。そのため、「NIPTの費用はいくらくらいなのか」という点は、検査を検討する上で大変重要な要素です。実際に、費用の問題がハードルとなって検査を断念されるケースも少なくありません。本稿では、NIPTの費用について国内外の実情を整理し、費用が変動する理由や費用に含まれる内容、公的支援の現状、そして費用対効果の考え方まで幅広く、かつ分かりやすく解説します。
日本におけるNIPTの費用の目安

一般的な費用の範囲
日本で実施されているNIPTの費用は、おおむね9万円〜25万円程度と幅があります。この価格帯の幅は決して小さくなく、検査を受ける妊婦さんやご家族にとっては「なぜこんなに差があるのか」と疑問に感じるところでしょう。(1)
この差は、検査を提供する医療機関の種類、検査に含まれる項目の数、付随するサービス内容(遺伝カウンセリングの有無やフォローアップ体制など)によって異なります。例えば、大学病院や日本医学会が認定した施設で行われる標準的なNIPTは10万円前後であることが多い一方、自由診療を行うクリニックでは、検査項目を追加することで20万円以上になる場合もあります。また、同じクリニックであっても、基本プラン・スタンダードプラン・フルセットプランなどの段階的な料金体系を設けている場合があり、選択するプランによって費用が大きく変わることもあります。(3)
認定施設と非認定施設の違い
日本では、厚生労働省の指針に基づき、NIPTを提供できる施設は「認定施設」と「非認定施設」に分かれています。この区分は費用にも大きく影響しますので、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。(4)
- 認定施設:日本医学会連合が定める基準を満たし、遺伝カウンセリング体制が整った病院です。小児科医や遺伝専門医が在籍し、検査前後に十分な遺伝カウンセリングを受けることができます。検査対象は従来35歳以上の妊婦などに限定されていましたが、2022年以降は年齢制限が撤廃される動きもあり、費用はおおよそ10万円前後となっています。認定施設では遺伝カウンセリングが検査費用に含まれているケースが大半であるため、追加費用が発生しにくいという利点があります。
- 非認定施設:年齢制限などがなく、より広い対象者にNIPTを提供しています。検査へのアクセスが容易であることがメリットですが、検査項目が豊富である代わりに、費用が15〜25万円程度と高額になることがあります。非認定施設の中には、遺伝カウンセリングを外部委託している場合もあり、その分の費用が別途必要になるケースもあります。また、検査結果が陽性となった場合に、確定検査(羊水検査など)の費用を負担してくれる施設とそうでない施設がありますので、事前にしっかり確認しておくことが重要です。(1)
認定施設と非認定施設のどちらを選ぶかは、費用だけでなく、検査前後のサポート体制や検査精度の信頼性も含めて総合的に判断することが求められます。費用が安いからといってサポートが不十分な施設を選ぶと、万一陽性結果が出た場合に適切な対応を受けられないリスクがあるため注意が必要です。
費用に含まれる内容

NIPTの費用は単に検査そのものの料金だけではなく、複数の要素が含まれています。「費用の内訳」を正しく理解することで、各施設の料金が高いのか安いのかをより正確に判断できるようになります。以下に主な構成要素を解説します。
1. 検査自体の費用
採血を行い、海外または国内の検査機関にサンプルを送って解析するための費用です。NIPTでは高額な次世代シークエンサー(NGS)を用いるため、機器の導入・維持費用や専門技術者の人件費が反映されています。検査の精度を担保するためには、機器のメンテナンスや品質管理(QC)を徹底する必要があり、これらのコストが検査費用に含まれます。また、検査を海外の検査機関(米国のSequenom社やNatera社など)に外注する場合、国際輸送費や通関にかかる費用も加算されることがあります。
2. 遺伝カウンセリング
検査前に受ける説明や、結果が陽性であった場合の相談を含みます。認定施設では特に、遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医との面談が必須とされています。遺伝カウンセリングでは、NIPTの限界(偽陽性・偽陰性の可能性、あくまでスクリーニング検査であること)や、陽性結果が出た場合の選択肢(確定検査の実施、今後の方針についての相談など)について丁寧に説明を受けることができます。このカウンセリングの質が、NIPTを受ける上で非常に重要な要素となります。(5)
3. 結果報告とフォローアップ
検査結果を医師が説明し、必要に応じて羊水検査などの確定診断につなげるためのサポートが含まれます。NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、陽性結果が出た場合には確定検査を受けることが推奨されています。フォローアップ体制が整った施設では、陽性結果が出た場合の確定検査費用を施設側が負担してくれるケースもあり、これが費用に含まれている場合があります。
4. 追加オプション
性染色体異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)や微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)を調べるオプションを追加する場合、その分費用が上乗せされます。たとえば、seeDNA遺伝医療研究所では基本検査(主要3トリソミー)に加えてオプション検査を選ぶと数万円単位で費用が増加することがあります。微小欠失症候群の検査は、技術的に高度な解析が必要となるため、費用が高くなる傾向にあります。(1)
海外におけるNIPTの費用
参考までに、海外におけるNIPTの費用についても触れておきます。日本との比較を通じて、検査費用に対する理解を深めましょう。
アメリカ
保険適用の有無や州ごとの制度によって異なりますが、自費の場合はおおよそ20万〜30万円程度とされています。ただし、条件を満たせば保険で一部または全額がカバーされるケースもあります。特に35歳以上の高齢妊娠や、過去に染色体異常児の出産歴がある場合などは、保険でカバーされる可能性が高くなります。また、Harmony(ハーモニー)やMaterniT21などのブランドごとに価格設定が異なり、さらに検査会社が提供する患者向け割引プログラムを利用すると数百ドルで受けられる場合もあります。
ヨーロッパ
国ごとの医療制度により大きく異なります。ドイツでは2022年から、NIPT費用が法定健康保険の適用対象となり、リスクが高いと判断された妊婦だけでなく、希望するすべての妊婦が保険適用で検査を受けられるようになりました。イギリス(NHS)でも一定条件下で公的医療制度の中でNIPTが提供されており、自己負担は数万円程度で済む場合もあります。フランスやベルギーなどでも段階的に公的保険の適用が拡大されています。(6)
アジア
韓国や台湾、中国などでもNIPTは広く普及しています。特に中国ではBGI(華大基因)が開発したNIFTYという検査が普及しており、価格帯は日本円換算で5万〜15万円程度と比較的安価です。ただし、検査精度や遺伝カウンセリング体制は施設によって大きく差があるため、費用の安さだけで判断するのは危険です。
このように、海外では公的保険制度の活用が進んでいる国もある一方、日本では基本的に自費診療であるため、負担額が相対的に大きいという特徴があります。日本でも今後、NIPTの社会的な位置づけの変化に伴い、保険適用の議論が本格化する可能性があります。
費用が変動する理由
NIPTの費用が施設間で大きく異なる背景には、いくつかの構造的な理由があります。これらを理解しておくことで、提示された費用の妥当性をより適切に判断できるようになります。
1. 検査の実施体制
大学病院などの認定施設では、研究的な側面や公的な支援が一部あるため比較的低価格で検査を提供できる場合があります。一方、自由診療のクリニックでは、検査の自由度が高く、待ち時間の短縮や土日対応、アクセスの良い立地など利便性に投資しているため、費用も高額になる傾向があります。また、クリニックの立地(都心部か郊外か)によってもテナント料等の固定費が異なり、それが検査価格に反映されるケースもあります。
2. 検査項目の範囲
主要3トリソミー(21トリソミー:ダウン症候群、18トリソミー:エドワーズ症候群、13トリソミー:パトウ症候群)のみを対象とする場合と、性染色体異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)や微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群、1p36欠失症候群など)まで広げる場合とで、費用が数万円〜十数万円変わることがあります。検査項目が増えるほど、解析に必要なデータ量や解析時間が増加し、それに伴ってコストも上昇します。
3. 遺伝カウンセリングやサポートの有無
臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーとの対面での面談が含まれるか、電話やオンライン対応なのかでも料金は異なります。対面カウンセリングは質の高い情報提供が可能ですが、専門人材の確保にコストがかかるため、その分費用に反映されます。また、陽性判定後に確定検査の費用を補助する制度を設けている施設では、その補助費用があらかじめ検査料金に含まれていることもあります。
4. 検査機関の所在地(国内 vs 海外)
採取した血液サンプルを国内の検査機関で解析する場合と、海外(主に米国)の検査機関に送付して解析する場合とでは、輸送コストや解析期間が異なります。海外に送付する場合は国際輸送費や通関費用がかかる一方、海外の大手検査機関は大量処理によるスケールメリットで1件あたりの解析コストを抑えている場合もあります。
公的支援の有無
現時点で日本では、NIPTに対して健康保険の適用はありません。そのため、検査費用は全額自己負担となります。一部の自治体では妊婦健診や出産費用への助成制度はありますが、NIPT自体を直接補助する制度はまだ整備されていません。(4)
ただし、NIPTに関連する間接的な費用軽減策は存在します。例えば、医療費控除の制度を利用すれば、NIPTの費用を含む年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で所得控除を受けることが可能です。NIPTの費用が医療費控除の対象になるかどうかは税務署の判断による部分がありますが、医師の指示のもとで受けた検査であれば対象となる可能性があります。
また、今後NIPTの社会的な位置づけが変化すれば、公的支援や保険適用の議論が進む可能性はあります。実際に海外では保険適用が進んでいる例があるため、日本でも議論が継続されている段階です。2022年に日本産科婦人科学会と日本医学会連合がNIPTの実施体制に関する新しい指針を策定し、検査の適正な普及を目指す動きが加速していることからも、将来的な制度変更の可能性は十分にあると考えられます。(6)
検査費用を考える上での留意点
NIPTを受けるにあたり、「費用が高いか安いか」だけで判断するのではなく、以下の点を総合的に考慮することが大切です。費用が安くてもサポート体制が不十分な場合、結果的に不安が増大したり、適切な確定検査につながらなかったりするリスクがあります。
- 検査の精度と信頼性:検査機関の実績や使用している解析技術、過去の検査件数、そして結果説明を行う医師の専門性を確認すること。特に、陽性的中率(PPV)や感度・特異度などの精度指標を公開しているかどうかも重要な判断材料です。
- サポート体制:万一陽性判定となった場合に、確定診断(羊水検査や絨毛検査)やその後のケア(遺伝カウンセリング、心理的サポート、専門医への紹介など)にしっかりつなげられるかどうか。確定検査費用の補助制度の有無も確認しましょう。
- 自分や家族の価値観:検査の目的や意義を十分に理解し、夫婦や家族で話し合った上で受検することが重要です。NIPTの結果は大きな決断に直結する場合があるため、検査前に「結果をどう受け止め、どう行動するか」についてあらかじめ話し合っておくことが推奨されます。
- 費用の内訳の透明性:提示された費用に何が含まれていて、何が含まれていないのかを明確に確認すること。初回カウンセリング料や結果報告時の面談料が別途請求される場合もあります。
- 検査結果の提供スピード:結果が出るまでの期間も施設によって異なります。早いところで1週間程度、一般的には2〜3週間程度かかります。妊娠週数との兼ね合いもあるため、検査時期の計画も重要です。
NIPTの費用対効果をどう考えるか
NIPTの費用は決して安くはありませんが、その費用対効果を冷静に考えることも大切です。NIPTは非侵襲的な検査であり、採血だけで胎児の染色体異常のリスクを高精度にスクリーニングできます。主要3トリソミーに対する感度は99%以上、特異度も99%以上と報告されており、極めて高い精度を持つスクリーニング検査です。(2)
一方、従来のスクリーニング検査であるクアトロテスト(母体血清マーカー検査)は感度が約80%程度であり、NIPTに比べると偽陰性(見逃し)のリスクが高くなります。また、確定検査である羊水検査は約0.1〜0.3%の流産リスクを伴います。NIPTを先に受けることで、不必要な侵襲的検査を回避できる可能性があるという点は、費用に見合う大きなメリットと言えるでしょう。(7)
ただし、NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではないことを忘れてはなりません。陽性結果が出た場合には確定検査が必要であり、陰性結果であっても100%の保証ではありません。この点を正しく理解した上で、検査の費用と得られる情報の価値を天秤にかけて判断することが重要です。
まとめ
日本におけるNIPTの費用は、おおよそ9万〜25万円程度と幅があります。認定施設では10万円前後、非認定施設では検査項目が豊富な分、15〜25万円程度になることが一般的です。費用には検査自体の料金に加えて、遺伝カウンセリングや結果説明、追加オプション検査などが含まれます。
海外では保険適用が進んでいる国もあり、日本と比べて自己負担額が小さい場合がありますが、日本では現状すべて自己負担です。ただし、将来的には保険適用の議論が進展する可能性もあり、制度の動向を注視しておくことが大切です。
費用を検討する際には、単に金額の大小ではなく、検査を受ける意義やサポート体制の充実度、検査精度の信頼性を総合的に考慮することが大切です。NIPTは大きな決断を伴う検査であるため、信頼できる医療機関で十分な説明を受け、家族で納得した上で受けることをおすすめします。検査費用だけに目を奪われることなく、自分と家族にとって最善の選択ができるよう、事前に十分な情報収集と話し合いを行いましょう。
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よくあるご質問
Q1. NIPTの費用は保険適用されますか?
A. 現時点で日本ではNIPTに健康保険は適用されておらず、全額自費負担となります。ただし、医療費控除の対象になる可能性があるため、確定申告時に税務署に相談することをおすすめします。また、一部の施設では分割払いやクレジットカード払いに対応しているところもあります。(4)
Q2. 認定施設と非認定施設ではどちらが費用が安いですか?
A. 一般的に認定施設の方が費用は安く、10万円前後が目安です。非認定施設は検査項目が多く利便性も高い分、15〜25万円程度と高額になる傾向があります。ただし、費用の安さだけで選ぶのではなく、遺伝カウンセリングの質やフォローアップ体制も含めて総合的に判断することが重要です。
Q3. NIPTの費用の内訳には何が含まれていますか?
A. NIPTの費用には、①採血と検体の解析費用、②遺伝カウンセリング料(検査前後の説明・相談)、③結果報告とフォローアップ、④追加オプション(性染色体異常や微小欠失症候群の検査)が含まれます。施設によって含まれる項目が異なるため、事前に内訳を確認しておきましょう。
Q4. 海外ではNIPTの費用はどのくらいですか?
A. アメリカでは自費の場合20〜30万円程度ですが、保険適用されるケースもあります。ヨーロッパではドイツやイギリスなどで公的保険の適用が始まっており、自己負担が数万円程度で済む場合もあります。日本は自費診療のため、海外と比べて相対的に負担が大きい状況です。
Q5. NIPTの費用が施設によって大きく異なるのはなぜですか?
A. 費用の差は、①検査の実施体制(認定施設か自由診療クリニックか)、②検査項目の範囲(基本3トリソミーのみか、性染色体や微小欠失も含むか)、③遺伝カウンセリングやサポートの内容、④検査機関の所在地(国内解析か海外委託か)、⑤確定検査費用の補助の有無などが主な要因です。
Q6. NIPTの費用を少しでも抑える方法はありますか?
A. 費用を抑えるためには、必要な検査項目を絞って基本プランを選択する方法があります。また、医療費控除を活用したり、分割払い対応の施設を選んだりすることで、一時的な経済的負担を軽減できます。ただし、費用を抑えることだけを優先せず、検査の信頼性やサポート体制を必ず確認してください。
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
【参考文献】
(1) 遺伝子検査・DNA鑑定のseeDNA, 2026年5月(2) 厚生労働省, 2026年5月
(3) 国立成育医療研究センター, 2026年3月
(4) Curr Opin Neurobiol, 2011年12月
(5) TEN LABO All Right Reserved., 2023年2月
(6) 毎日新聞, 2026年4月
(7) Eur J Pediatr, 2015年4月