【医師が解説】NIPTとNIPPTの違いとは

2025.10.22

リライティング日:2025年11月07日

NIPTは胎児の染色体異常リスクを調べる出生前スクリーニング検査、NIPPTは胎児と父親候補の親子関係を確認する鑑定検査です。NGSと母体血cfDNAを用いる非侵襲的検査という共通点がありますが、目的・分析内容・医療上の位置づけが全く異なります。

妊娠中の出生前検査について調べていると、「NIPT」や「NIPPT」といった似たような名前の検査を目にすることがあるかもしれません。アルファベット一文字違いのこの二つの検査は、実は全く異なる目的と内容を持つものです。

NIPTは「Non-Invasive Prenatal Testing(無侵襲的出生前遺伝学的検査)」の略で、胎児の染色体異常のリスクを評価するスクリーニング検査です。一方、NIPPTは「Non-Invasive Prenatal Paternity Testing(非侵襲的出生前親子鑑定)」の略で、胎児と父親候補の間の生物学的な親子関係を確認するための鑑定検査です。どちらも母体の血液から胎児由来のDNA断片を分析するという技術的基盤は共通していますが、検査で何を調べるのか、その結果がどのように活用されるのかは根本的に異なります。

出生前検査を検討されている妊婦さんにとって、これらの検査の違いを正しく理解することは、適切な選択をするための第一歩となります。本記事では、医師の視点からNIPTとNIPPTの違いについて分かりやすく解説します。(1)

NIPTとは ― 胎児の染色体異常リスクを調べる出生前スクリーニング検査

NIPTとは ― 胎児の染色体異常リスクを調べる出生前スクリーニング検査

新型出生前診断:NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)は、「無侵襲的出生前遺伝学的検査」と呼ばれ、胎児の染色体異常のリスクを調べる検査です。母体血中の胎児由来cell-free DNA(cfDNA)を、次世代シークエンス技術(NGS)を用いて分析し、染色体異常を検出します。

cfDNAとは、細胞が自然に分解される過程で血液中に放出されるDNA断片のことです。妊娠中は、胎盤の細胞が壊れることによって胎児由来のcfDNAが母体の血液中に流れ込みます。このcfDNAは妊娠が進むにつれて量が増加し、妊娠10週頃には検査に十分な量に達します。NIPTではこの胎児由来cfDNAの割合(胎児分画、fetal fraction)を測定し、一定以上の割合が確認された場合にのみ検査結果を報告します。

検査の特徴として、妊娠10週から実施可能であり、母体の血液採取のみ(約20mL)で行えるため、羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査と比較して流産のリスクはほぼありません。従来の母体血清マーカー検査(クアトロテストなど)と比べても格段に高い精度を有しており、出生前スクリーニングの在り方を大きく変えた検査と言えます。(2)(3)

NIPTで検出できる主な染色体異常

一般的な検査対象は21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)などの染色体数的異常です。これらは常染色体トリソミーの中でも出生後に生存が確認される頻度の高い疾患であり、NIPTの主要な検査対象として世界中で標準的に調べられています。

さらに、検査機関によっては以下の項目も追加で検査可能です。(2)

  • 性染色体異常:ターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)、トリプルX症候群(XXX)、XYY症候群など
  • 全染色体異数性:1~22番染色体すべての数的異常
  • 微小欠失症候群:ディジョージ症候群(22q11.2欠失)などの特定領域の欠失
  • 性別判定:胎児の性染色体構成から性別を推定

検査対象の範囲は検査機関や使用するプラットフォームによって異なるため、検査前に確認しておくことが重要です。

NIPTの精度と限界

NIPTは感度99%以上、特異度99%以上と非常に高い精度を誇ります。特に21トリソミーの検出感度は99.7%以上とされ、従来のスクリーニング法を大幅に上回ります。

ただし、NIPTはあくまでもスクリーニング検査(非確定検査)であるという点を理解しておく必要があります。陽性結果が出た場合でも、それが必ずしも胎児の染色体異常を確定するものではありません。偽陽性(実際には異常がないのに陽性と判定される)の可能性があるため、陽性結果が出た場合には確定診断のための羊水検査や絨毛検査が必要となります。

偽陽性が生じる原因としては、限局性胎盤モザイク(胎盤の一部のみに染色体異常がある状態)、母体の染色体モザイク、双子の一方が初期に消失するバニシングツイン、母体の悪性腫瘍などが挙げられます。検査結果の解釈には専門的な知識が必要なため、遺伝カウンセリングを併せて受けることが推奨されています。(2)(4)

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NIPPTとは ― 胎児と父親候補の親子関係を確認する鑑定検査

NIPPTとは ― 胎児と父親候補の親子関係を確認する鑑定検査

出生前DNA鑑定:NIPPT(Non-Invasive Prenatal Paternity Testing)は、「非侵襲的出生前親子鑑定」と呼ばれ、胎児と父親候補の生物学的な父子関係を確認する検査です。

NIPTと同じく母体血中のcfDNAを利用しますが、NIPPTの場合はNGSで多数のSNP(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)を解析し、父親候補のDNAと比較するという点が大きく異なります。SNPとは、DNAの配列の中で個人によって異なる一塩基の違いのことで、ヒトゲノム全体に数百万か所以上存在します。NIPPTではこのSNPのパターンを数千~数万か所にわたって解析し、胎児と父親候補のDNA間の一致度を統計的に評価します。

妊娠6週頃から検査可能で、母体の血液と父親候補の検体(口腔粘膜、毛髪、歯ブラシなど)で実施できます。NIPTよりも早い妊娠週数から対応可能な点も特徴のひとつです。(5)

NIPPTの精度と判定基準

NIPPTの判定精度は非常に高く、父子関係が肯定される場合は父権肯定確率99.9%以上、否定される場合は0%という明確な判定が得られます。親子の血縁関係を認めるための最低父権肯定確率は検査機関によって異なりますが、国内では99.99%を基準とする検査機関もあります。

なお、日本産婦人科学会は、医療目的でない親子鑑定のために羊水検査や絨毛検査などの侵襲的医療行為を行うことを推奨していません(法的措置の場合を除く)。このため、出生前親子鑑定を希望する場合、非侵襲的な母体血液を用いたNIPPTが現実的な選択肢となります。

40%以上の出産が非婚姻状態で行われるアメリカでは、米国産婦人科学会も認める一般的な検査として広く普及しています。日本においても、養育費や相続権などの法的問題、あるいは個人的な疑問解決のために利用される事例が増えてきています。(1)(5)(6)(7)

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それぞれの検査の類似点と異なる点

それぞれの検査の類似点と異なる点

類似点

NIPTとNIPPTには以下の重要な共通点があります。

検査方法:どちらも少量のDNAサンプルから膨大な遺伝情報を読み取ることが可能な次世代DNA配列分析装置(NGS)を用います。2010年頃、検査が開発された当時はマイクロアレイという検査方法を用いる場合もありましたが、現在は微量DNA解析に優れるNGSが標準的に使われています。NGS技術の急速な発展とコスト低下により、これらの検査はより多くの方が利用できるようになりました。

検査対象:母体血中の胎児由来cfDNAを分析対象とします。胎盤から母体血中に流出したcfDNAは妊娠週数とともに増加しますが、非常に壊れやすく採血後1時間程度で分解されるため、特殊な保存剤入り採血管(Streck管など)を用います。cfDNAの断片サイズは約160塩基対と非常に短く、通常のDNA抽出法では扱いが困難なため、専用の解析プロトコルが必要です。

検査に伴う侵襲度:非侵襲的検査のため胎児・母体へのリスクが極めて低く、従来の羊水検査(約0.1~0.3%の流産リスク)と比較して流産リスクがほとんどありません。採血による軽度の内出血やめまいが生じることはありますが、胎児に対するリスクは実質ゼロとされています。

異なる点

一方で、NIPTとNIPPTの間には以下のような重要な違いも存在します。

検査目的:NIPTは胎児の染色体異常の有無を評価しますが、NIPPTは親子関係の確認が目的で、胎児の健康状態に関する情報は一切提供しません。この目的の違いが、二つの検査の最も本質的な相違点です。

分析内容:NIPTは各染色体由来のDNA断片量を測定して、特定の染色体に由来するDNA断片の数が通常よりも多いか少ないかを調べることで、染色体数の異常の可能性を判定します。たとえば21番染色体由来のcfDNA断片が統計的に有意に多い場合、21トリソミーの可能性が示唆されます。対してNIPPTは多数のSNPを比較分析し、父親候補のDNAと比較することで、親子の血縁関係を判定します。

医療での位置づけ:NIPTは医療行為として位置づけられ、国際的に推奨される出生前スクリーニング検査です。日本医学会による認証制度も設けられ、胎児の健康状態を医学的に評価する目的で実施されています。 対してNIPPTは、医療行為ではなく親子関係の確認を目的とした鑑定サービスであり、法的・個人的理由で利用される検査です。

検査開始可能時期:NIPTは一般的に妊娠10週以降から検査可能です。これは胎児分画が検査精度を保証するのに十分な量に達するためです。一方NIPPTは妊娠6週頃から検査可能であり、より早い段階で結果を得ることができます。(1)(3)

NIPTとNIPPTの比較一覧

以下に、NIPTとNIPPTの主要な違いを一覧でまとめます。

比較項目NIPTNIPPT
検査目的胎児の染色体異常リスクの評価胎児と父親候補の親子関係確認
検査開始時期妊娠10週以降妊娠6週頃から
医療上の位置づけ医療行為(スクリーニング検査)鑑定サービス(非医療行為)

上記に加え、さらに詳しい違いを以下にまとめます。

  • 分析対象:NIPTは染色体ごとのDNA断片量の偏り、NIPPTはSNP(一塩基多型)のパターン一致度
  • 必要な検体:NIPTは母体の血液のみ、NIPPTは母体の血液+父親候補のDNA検体(口腔粘膜等)
  • 結果の報告形式:NIPTは陽性/陰性(リスクの有無)、NIPPTは父権肯定確率(%表示)
  • 確定検査の要否:NIPTは陽性時に羊水検査等が必要、NIPPTは結果自体が高い確度を持つ
  • 遺伝カウンセリング:NIPTは推奨される、NIPPTは通常不要

検査を受ける前に知っておきたいこと

NIPTまたはNIPPTの受検を検討される際には、以下のステップを参考にしてください。

  1. 検査の目的を明確にする:胎児の健康状態を知りたいのか、親子関係を確認したいのかによって、選ぶべき検査が異なります。
  2. 信頼できる検査機関を選ぶ:ISO認証やプライバシー保護体制(Pマーク等)を取得しているか確認しましょう。
  3. 検査内容と限界を理解する:NIPTはスクリーニング検査であり確定診断ではないこと、NIPPTは胎児の健康情報を提供しないことを事前に把握しておきましょう。
  4. 専門家に相談する:不安や疑問がある場合は、遺伝カウンセラーや医師に相談し、十分な情報を得たうえで判断することが大切です。
  5. 結果を受けての対応を考えておく:検査結果がどのようなものであっても、次のステップを冷静に判断できるよう、パートナーやご家族と事前に話し合っておくことをお勧めします。

まとめ

NIPTとNIPPTは、名称こそ似ていますが、目的も内容も全く異なる検査です。

NIPTは胎児の染色体異常を検出するスクリーニング検査であり、胎児の健康状態を医学的に評価することを目的としています。21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーを中心に、感度99%以上・特異度99%以上という高い精度と安全性を兼ね備え、多くの妊婦さんに選択されている検査です。

一方NIPPTは、医療行為ではなく生物学的な親子関係を確認するための鑑定サービスです。父子関係が肯定される場合は99.9%以上、否定される場合は0%という明確な結果が得られますが、胎児の健康に関する情報は提供されません。法的・個人的な理由で親子関係を明らかにする必要がある場合に利用されます。

どちらもNGSを用いた非侵襲的検査という点では共通しており、母体の血液採取のみで実施できるため流産リスクがほぼない安全な検査です。しかし、それぞれが全く異なるニーズに応えるものであることを正しく理解しておくことが重要です。

NIPTやNIPPTを検討される際は、まずご自身が何を知りたいのか、その目的を明確にすることが大切です。胎児の健康状態を知りたいのであればNIPT、親子関係を確認したいのであればNIPPTというように、目的に応じた適切な検査を選択していただければと思います。

本記事が、皆様の検査選択の一助となれば幸いです。(2)(5)

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よくあるご質問

Q1. NIPTとNIPPTは同じ検査ですか?

A. いいえ、全く異なる検査です。NIPTは胎児の染色体異常(ダウン症候群など)のリスクを調べるスクリーニング検査であり、NIPPTは胎児と父親候補の生物学的な親子関係を確認する鑑定検査です。どちらも母体の血液から胎児由来のcfDNAを分析しますが、検査目的・分析内容・医療上の位置づけが根本的に異なります。

Q2. NIPTで陽性と判定された場合、胎児は確実に染色体異常があるのですか?

A. いいえ、NIPTはスクリーニング検査であり確定診断ではありません。陽性結果が出ても偽陽性の可能性があるため、確定診断には羊水検査や絨毛検査が必要です。ただし、NIPTの精度は感度・特異度ともに99%以上と非常に高いため、信頼性のある検査であることに変わりはありません。(2)

Q3. NIPPTはいつから検査できますか?

A. NIPPTは妊娠6週頃から検査可能です。NIPTの妊娠10週以降と比べて、より早い段階で検査を受けることができます。母体の血液と父親候補のDNA検体(口腔粘膜スワブ、毛髪、歯ブラシなど)があれば実施でき、採血のみの非侵襲的な方法のため、胎児や母体へのリスクはほぼありません。

Q4. NIPPTの結果は法的に有効ですか?

A. NIPPTの結果は非常に高い精度(父権肯定確率99.9%以上または0%)で判定されますが、法的な有効性は検査機関の認証体制や各国の法制度によって異なります。法的に利用する場合は、ISO認証を取得した信頼性の高い検査機関を選び、必要に応じて法的手続きに対応した鑑定プランを利用することをお勧めします。

Q5. NIPTとNIPPTを同時に受けることはできますか?

A. 技術的にはどちらも母体の血液を用いる検査であるため、同じ時期に受けることは可能です。ただし、NIPTは妊娠10週以降、NIPPTは妊娠6週頃から対応可能と検査開始時期が異なります。また、それぞれ目的が異なる独立した検査ですので、ご自身のニーズに合わせてご判断ください。詳しくはseeDNA遺伝医療研究所の専門スタッフにご相談いただけます。

Q6. NIPTやNIPPTの費用はどのくらいですか?

A. 費用は検査機関や検査プランによって異なります。NIPTは検査対象の染色体の範囲(基本3染色体のみか、全染色体+微小欠失を含むかなど)によっても価格が変わります。NIPPTも鑑定の種類(個人確認用か法的利用目的かなど)によって料金体系が異なります。具体的な費用については、seeDNA遺伝医療研究所のウェブサイトまたはフリーダイヤル(0120-919-097)にてご確認ください。

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seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
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著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。

【参考文献】

(1) 日本産婦人科学会, 1999年2月
(2) N Engl J Med, 2015年4月
(3) Genet Med, 2013年6月
(4) 日本産婦人科医会, 2018年7月
(5) Nat Methods, 2010年12月
(6) Genet Med, 2016年8月
(7) J Hematol Oncol, 2016年9月
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