私たちは今も進化の最中である。
2024.10.03
著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発
「ルカ(LUCA)」という名前を聞いたことがありますか?
人はサルから進化したことが知られていますが、そのサルとヒトだけではなく、微生物と植物も含めた全てが共通の生命体から進化して現在に至っています。
地球上に存在する全ての生命体の祖先が、「ルカ(LUCA)」という微生物です。
生命の共通祖先
新型出生前診断や出生前親子鑑定に用いられるDNA解析技術の進歩により、46億年前に地球が形成されてわずか4億年後に初めての生命体が誕生したことが分かりました。
その生命体が「最後の普遍的共通祖先(LUCA:Last Universal Common Ancestor)」と呼ばれる微生物「ルカ」です。
ルカは、鉄や硫黄が豊富な海底の熱水噴出孔で、地中深く隠れて生活をしていたと考えられています。酸素を必要としない嫌気性で、周囲が暗い金属に富んだ環境から栄養源を作り出す独立栄養生物でした。この小さな微生物こそ、地球上のすべての生命が属する長い系譜の始まりであると言われています。
私が、約5億3千万年前のカンブリア期の様々な原始生物の存在を勉強した時に、地球上の生命の歴史はそんなに長いのかと驚いた記憶がありますが、生命の起源はそれよりもはるかに長く42億年前から始まっていたのです。
全ゲノム解析により示された生命の進化
ヒトを火星に送るのと比較されるぐらい難しいとされたヒトのDNA配列が全て解析されるなど、過去20年間で全ゲノムを解析する技術が大幅に進化し、巨大な遺伝子ライブラリが構築されました。この進展により、生物の遺伝的な関係と進化の歴史を明らかにする系統学も著しく進んで、生命のスタートについて深遠な教訓をもたらしています。
かつては、生命の系統樹は真核生物、細菌、古細菌、3つの主要な枝(ドメイン)で構成され、根元にルカが位置すると考えられていました。細菌と古細菌はどちらも単細胞で核を持たず、化学的および代謝的な違いで区別されます。一方、真核生物は、膜で覆われた細胞からなり、細胞核に遺伝情報が含まれ、細胞の代謝を担うミトコンドリアという小器官も持つ、複雑な多細胞生物であることから、近年の系統学では真核生物が古細菌と細菌の共生から進化したという「2ドメイン系統樹」が支持されるようになりました。この共生の過程で、細菌は古細菌の内部で生き残り、やがてミトコンドリアへと進化したと考えられています。私たちを含む、自然界の様々動植物が真核生物から由来しているので、その進化のプロセスは42億年もの長い時間を経て進んできた自然現象なのです。
42億年前と共通する生き方
このような複雑な進化の過程があったにも関わらず、42億年たった今でも変わらないことがあります。ルカが持っていた355個の遺伝子の一部は、現在も海底の熱水噴出孔に生息し、水素をエネルギー源として利用している「リバースジャイレース」という高温環境に生息する極限環境微生物と共通することが判明したのです。
更に、ルカは単純な原核生物でありながら、免疫システムを持っていた可能性が高いと推測されています。これは、人がコロナウイルスと戦ったのと同様に、ルカがすでに原始的なウイルスと戦っていたことを意味します。42億年も前の生命の生き方が、現在も共通して引き継がれているとは驚きです。
ヒトの進化の未来
現代を生きる多くの人々は、私たちがヒトこそが進化の最終段階に入っている最終型であると勘違いしています。日常の生活で我々がルカと同じく、進化中であることに気づくことはあまりないでしょうが、ルカだけではなくヒトも複雑な進化の中に存在しています。これから4万年後の人類はどのように進化しているか想像すらできません。
ひょっとしたら現生人類であるホモサピエンスが4万年前に先代人類であるネアンデルタール人を絶滅させたように、進化の過程で現れた新しい人類により現生人類のホモサピエンスが絶滅の危機に陥るかも知れません。
我々が絶滅させた多くの生物種同様に・・・。
参考文献
[1] 「Last universal common ancestor」『ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典』。最終更新 2024年9月30日 (火) 07:26、URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Last_universal_common_ancestor
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