新型出生前診断で見つかる疾患⑤:クラインフェルター (Klinefelter) 症候群

クラインフェルター症候群とは、精巣発育不全や女性化乳房などの臨床症状が現れる疾患です。
1942年にクラインフェルター(Klinefelter)によって初めて記載され、その後1959年にこの疾患の原因が性染色体異常であることが明らかにされました。核型は47, XXYで、X染色体が1本以上の性染色体異常疾患です。クラインフェルター症候群は男性1,000人に1人の割合で比較的多く発生します。※1男性の性腺機能低下症の最も一般的な原因の一つです。

胎児のクラインフェルター症候群のリスクが分かる

原因

クラインフェルター症候群の原因は47, XXY核型の性染色体異常です。47, XXYの核型はモザイクの有無によって2つに分類されます。※2

1.非モザイク型
クラインフェルター症候群の80%〜85%は47, XXY核型を持っています。その原因は親の生殖細胞の減数分裂時に性染色体が非分離を起こすことです。父親よりも母親から遺伝された場合が56%とやや多いです。

2.モザイク型
残りの約15%は46, XY/47, XXY、46, XX/47, XXY、46, XX/46, XY/47, XXY、46, XY/48, XXXYなどのさまざまなモザイク型があります。体の一部の細胞は正常な核型を持っているため、非モザイク型よりも臨床的所見が軽度であることが多いです。

症状

クラインフェルター症候群の症状は、知能、成長、性腺機能などに現れます。※3

知能

クラインフェルター症候群の人の平均IQは一般の平均IQよりやや低い85〜90ほどになることが多いですが、重度の知的障害はほとんど見られません。
日常生活に大きな支障がないことが多いですが、言語に関わる能力(話す・聞く・読む・書く)で弱さが目立つ傾向があります。たとえば、言葉の理解が遅かったり、作文や会話で表現するのが難しかったりします。これにより、国語や英語などの教科で苦労することが多く、学習に時間がかかる場合があります。

成長

クラインフェルター症候群の人は、身長が高くなる傾向があります。
特に手や足が長く、全体的に細長い体つきになることがよくあります。これは、成長期にテストステロンという男性ホルモンが少ない影響で、骨の成長が長く続くためです。そのため、普通の男性よりも背が高くなることがあり、人で180cm以上になる人が多いと言われています。
ただし、個人差があるため、クラインフェルター症候群の全ての人が高身長になるわけではありません。

性腺機能低下

精巣や陰嚢がやや小さいことが確認されるケースが多く、ほとんどの患者さんは不妊となります。
およそ30%の方は、胸がふくらむ「女性化乳房」が見られます。
まれに肘の関節の異常、生殖器の形の異常、背骨のゆがみ(側弯症)、骨粗しょう症、糖尿病、乳房の腫瘍、生殖細胞の腫瘍などがあらわれることもあります。

診断方法※4

クラインフェルター症候群は、思春期以降に見られる身体の変化から診断されることが多い病気です。
診断には、細胞の遺伝子検査を行い、精子の染色体の状態(47,XXY型かどうか)を調べます。
また、血液検査でホルモンの量を調べると、FSH、LH、エストラジオールといったホルモンが多くなっていることがよく見られます。ただし、検査結果が正常でも、精子の数が少ない「精巣性無精子症」や精巣の萎縮などがあれば、診断の判断材料となります。
さらに最近では、口の中の細胞(口腔上皮細胞)を使って診断する方法もあります。染色体検査(核型解析)のほか、FISH法、PCR法、NGSなどの遺伝子検査を使って、より詳しく調べることも可能です。
特に、口の中の細胞を使う方法は、精度が高く、身体への負担も少ないため、クラインフェルター症候群のスクリーニングに役立っています。

治療※4

クラインフェルター症候群の治療では、社会生活への適応力の評価や精神的なサポートが重要です。思春期以降には、男性ホルモン補充療法が行われる場合があります。
また、陰茎のサイズを大きくする目的で、より若い年齢から短期間のホルモン治療が行われることもあります。
定期的に、甲状腺機能、性腺機能、骨密度などを検査することも一般的です。
妊娠については、従来は不妊とされることが多かったものの、近年はホルモン治療の進歩により、自然妊娠や出産が可能となったケースが増えています。
そのため、妊娠を希望する場合は、専門医に相談することが勧められます。