微小欠失症候群
微小欠失症候群とは、染色体の一部が欠失することで発症する先天性疾患です。
微小欠失症候群は、その名の通り極めて小規模な遺伝的変化によって起こります。この変化は、最小で50万塩基の範囲に及ぶことがあり、一般的には200万から300万塩基ペアの配列が欠落することで発生すると言われています。
この欠失の大きさと位置によって、発達遅延や精神的な遅れを含むさまざまな症状や重症度が決定されます。微小欠失症候群のほとんどは偶発的に生じるもので、母親の年齢とは関係なく発生すると考えられています。
微小欠失症候群の診断は、 染色体検査によって行われます。
近年では、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析によって大幅に精度が改善された、 微小欠失症候群のスクリーニング検査としてよく行われるようになってきました。
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原因
微小欠失症候群の原因は、染色体の非常に小さい部分の欠失にあります。
この小さな遺伝的欠損は、通常の染色体数は保持されているものの、特定の染色体領域に存在する一つまたは複数の遺伝子が失われることにより起こります。このような欠失は、次のような原因によって生じることがあります。
<偶発的な変化>
多くの微小欠失症候群は、親の生殖細胞の形成中や受精後の初期の細胞分裂の際に偶発的に発生します。遺伝的なものではなく、偶発的に発生します。
<親からの遺伝>
親が同じ欠失を持っている場合、まれに子どもに欠失が遺伝させる場合があります。
ただし、親が同じ欠失を持っていても無症状の場合もあります。
微小欠失症候群は、遺伝子の失われた領域によって、様々な症状や発達障害を引き起こす可能性があります。
症状
欠失する部分の遺伝子によって異なります。
軽度の症状から重度の症状まで、幅広くみられます。
代表的な例
1p36欠失症候群
<症状>
・重度の知的障害、発達遅延
・特徴的な顔貌
・心臓疾患
<原因>
染色体1の短腕(p腕)の末端部分が欠失することによって発生
4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)
<症状>
・特徴的な顔貌
・発達遅延、知的障害、成長の遅れ
・心臓病
<原因>
染色体4の短腕(p腕)の末端部分が欠失することで発生
5p欠失症候群(クリ・デュ・チャット症候群)
<症状>
・低い出生体重
・発達遅延、知的障害
・特徴的な顔貌
<原因>
染色体5の短腕(p腕)の末端部分が欠失することで発生
プラダー・ウィリ症候群
<症状>
・過食、肥満
・筋肉の低緊張
・成長障害
・知的障害
<原因>
15番染色体の特定領域における父親由来の遺伝子の欠失または機能不全により発生
アンジェルマン症候群
<症状>
・重度の知的障害
・言語発達の遅れ
・運動の調整障害
<原因>
15番染色体の特定領域における母親由来の遺伝子の欠失または機能不全により発生
22q11.2 欠失症候群
(ディ・ジョージ症候群)
<症状>
・心臓疾患
・免疫系の疾患
・低いカルシウム血症
・特徴的な顔貌
・発達遅延
<原因>
22番染色体の長腕(q腕)の11.2領域が欠失により発生
治療法
微小欠失症候群の治療法はありませんが、症状に応じてリハビリテーションや薬物療法などが行われます。