新型出生前診断(NIPT)に関するお話し

2024.07.31

リライティング日:2025年06月19日

新型出生前診断(NIPT)は妊娠10週以降の母体血液から胎児DNAを解析し、ダウン症候群等の染色体異常リスクを99%以上の精度で判定できる非侵襲的検査です。仕組み・利点・倫理的課題・将来性を詳しく解説します。

非侵襲的出生前検査:新型出生前診断(NIPT)

非侵襲的出生前検査:新型出生前診断(NIPT)近年の分子生物学や次世代シーケンシング(NGS)技術の飛躍的な発展によって、お母さんとお腹の赤ちゃんにほとんどリスクを与えずに赤ちゃんの健康を詳しく調べることができるようになりました。それが非侵襲的出生前検査「新型出生前診断(NIPT)」と呼ばれる検査です。NIPTは、妊娠初期に妊娠中のお母さんの血液を調べることで、赤ちゃんの先天的な異常や染色体異常のリスクが99%の精度で分かる画期的な検査として、世界中で急速に普及が進んでいます。(1)

従来の出生前スクリーニング検査(母体血清マーカー検査や超音波検査など)では、検出感度にばらつきがあり、偽陽性率も比較的高いことが課題でした。NIPTはこうした従来検査の限界を大幅に克服し、より正確かつ安全に胎児の染色体情報を得られる手法として、産婦人科領域で標準的なスクリーニング検査の選択肢となりつつあります。(2)

今回のブログでは、NIPTの仕組みや利点、倫理的な問題、そしてこの技術の未来について詳しく説明していきたいと思います。

「新型出生前診断(NIPT)」とは

「新型出生前診断(NIPT)」とはNIPTは、妊娠中に胎盤を通して母親の血液中に流れてくる「胎児由来のセルフリーDNA(cffDNA:cell-free fetal DNA)」を解析する検査です。cffDNAは主に胎盤の栄養膜細胞(トロホブラスト)がアポトーシス(細胞死)を起こす過程で母体の血液中に放出されるDNA断片であり、母体の血漿中に存在する全セルフリーDNAのうち約10〜20%を占めるとされています。(3)

この胎児のDNAを次世代シーケンシング技術で網羅的に解析することで、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)などのリスクの有無を確認することができます。NIPTは妊娠10週目以降の母親の血液を使って検査を行います。妊娠10週目ごろになるとcffDNAの濃度が検査に十分なレベルに達するため、この時期が検査開始の目安となります。

具体的な検査の流れは以下のとおりです。

  1. 採血:妊婦から10〜20mL程度の末梢血を採取します
  2. 血漿分離:採取した血液を遠心分離にかけ、血漿(けっしょう)を分離します
  3. DNA抽出:血漿中からセルフリーDNA(cffDNAを含む)を抽出します
  4. ライブラリ調製・シーケンシング:抽出したDNAをNGSで大量並列解析します
  5. バイオインフォマティクス解析:各染色体由来のDNA断片数を統計的に比較し、トリソミーの有無を判定します
  6. 結果報告:血液がラボに届いてから通常6〜8営業日以内に結果が得られます

このように、NIPTは母体からの採血のみで完結する検査であるため、子宮に針を刺す羊水検査や絨毛検査と異なり、流産などのリスクが一切ありません。

NIPTの利点と応用

NIPTの利点と応用NIPTは、羊水検査や絨毛膜検査(CVS)などの侵襲的な手法とは異なり、非侵襲的な検査であるため、胎児へのリスクを与えずに遺伝的健康を確認できる胎児と妊婦に100%安全な検査です。羊水検査やCVSでは約0.1〜0.3%の確率で流産のリスクがあるとされていますが、NIPTは採血のみで行われるため、こうした合併症のリスクを完全に回避できます。(4)

NIPTは100%精度と言われる臨床の確定診断ではありませんが、既存の血清マーカー検査やエコー検査に比べると染色体異常の検出精度は非常に高く、例えばダウン症候群の検出率(感度)は99%を超えており、偽陽性率も0.1%未満と極めて低い水準を実現しています。この高い精度により、現在はNIPTが出生前スクリーニング検査として優先的に選ばれています。(2)

NIPTの主な利点をまとめると以下のとおりです。

  • 非侵襲的であり、流産リスクがゼロ
  • 妊娠10週目から検査可能で、早期にリスクを把握できる
  • ダウン症候群の検出感度99%以上、偽陽性率0.1%未満
  • 従来の血清マーカー検査に比べて不必要な確定検査を減らせる
  • 性染色体異常や微小欠失症候群の検出にも対応可能
  • 検査結果が比較的短期間で得られる

NIPTでは、主に下記の遺伝的疾患や染色体異常を検出することができます。

21トリソミー(ダウン症候群)

21番染色体の3番目のコピーの全部または一部が存在することによって引き起こされる遺伝性疾患です。知的発達の遅れや特徴的な身体所見が見られ、出生前検査で最も多く検出される染色体異常の一つです。発生頻度は約700〜1,000出生に1人とされ、母体年齢の上昇とともにリスクが高くなることが知られています。

18トリソミー(エドワーズ症候群)

18番染色体が余分に存在することで、重篤な発達異常を引き起こす疾患です。心疾患や消化器系の異常など多臓器にわたる合併症を伴うことが多く、出生後の生存率が低い重篤な染色体異常です。発生頻度は約3,000〜8,000出生に1人とされています。

13トリソミー(パトウ症候群)

13番染色体が余分に形成されることで、重度の知的障害や身体の異常を呈します。口唇口蓋裂、多指症、脳の構造異常などが特徴的であり、エドワーズ症候群と同様に予後が厳しい疾患です。発生頻度は約10,000〜20,000出生に1人程度です。

性染色体異数性

ターナー症候群(モノソミーX:45,X)、クラインフェルター症候群(XXY:47,XXY)、トリプルX症候群(47,XXX)、XYY症候群(47,XYY)などが含まれます。これらは性染色体の数的異常によって生じ、身体の発達や生殖機能に影響を与える可能性があります。

微小欠失症候群

22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群)など、染色体の小片の欠失によって引き起こされる状態です。心臓の先天性異常、免疫不全、特徴的な顔貌、学習障害などの症状が複合的に現れることがあります。通常の核型分析では検出が困難な微細な欠失を、NIPTの高精度解析で検出できるようになっています。

さらに、NIPTでは、妊娠初期に胎児の性別を正確に確認することもできるため、特定の性染色体に関連する遺伝性疾患(血友病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどのX連鎖性遺伝疾患)が懸念される場合に特に有益です。

NIPTの臨床的有用性は遺伝性疾患の検出だけに留まりません。赤ちゃんが生まれる前に出産後のケア方法の決定を導くことができる貴重な情報を提供します。例えば、染色体異常を早期に発見することで、親は特別な特性を持つ子供の誕生の準備や、重度の異常の場合、妊娠管理について十分な情報に基づいた選択をすることができます。遺伝カウンセリングを通じて、検査結果の意味や今後の選択肢について専門家から丁寧な説明を受けることが推奨されています。(5)

倫理的な考慮事項と課題

NIPTには明確なメリットがある一方で、重要な倫理的配慮や課題も提起されています。

例えば、NIPTの結果が、性選択といった目的で中絶に使用される可能性です。これは、遺伝情報の責任ある使用とジェンダー平等への影響について倫理的な問題を提起しています。日本においても、NIPTの結果をどのように解釈し、どのような意思決定に活用するかについては、慎重な議論が求められています。(6)

また、NIPTは一般的なトリソミーに対して非常に正確ですが、あくまでも特定疾患のリスクを調べるためのスクリーニング検査であり、確定診断ではないことに注意する必要があります。NIPTで陽性のリスクが出た場合は、羊水検査や絨毛膜検査などの侵襲的な検査で確認する必要があります。スクリーニング検査としてのNIPTの位置づけを正しく理解しておくことが、不必要な不安や誤った判断を避けるために重要です。

NIPTの結果解釈における注意点は以下のとおりです。

  • NIPTはスクリーニング検査であり、陽性結果は確定診断を意味しない
  • 陽性的中率(PPV)は対象疾患の有病率や母体年齢によって変動する
  • 母体のモザイク(母体の染色体異常)や胎盤限局性モザイクが偽陽性の原因となることがある
  • 双胎妊娠や体外受精による妊娠では精度に影響が出る場合がある
  • すべての遺伝的疾患や先天性欠損症が検査対象になっているわけではない

このように、NIPTでは検査項目以外の疾患を持っている可能性もあり、検出される疾患の重症度を把握することはできません。そのため、検査前後に遺伝カウンセリングを受け、結果の正しい理解と適切な意思決定支援を受けることが非常に重要です。

NIPTの将来性

現在は、NIPTの検査範囲を拡大し、一般的なトリソミー以外の遺伝的疾患や胎児の異常に対する検査もできるよう研究が精力的に進められています。(3)

例えば、嚢胞性線維症や鎌状赤血球症などの単一遺伝子疾患(モノジェニック疾患)を検出するNIPTの研究も進められており、これらが臨床応用されればNIPTの有用性がさらに飛躍的に高まることが期待されています。単一遺伝子疾患のNIPTでは、cffDNA中の特定の遺伝子変異を高精度で検出する技術が鍵となりますが、ターゲットシーケンシングやデジタルPCR技術の進歩によって実現が近づいています。

また、解析技術としては、特に小さな染色体異常やモザイク現象(異なる遺伝子構成の細胞が混在する状態)の検出において、精度と信頼性を向上させる開発も進められています。全ゲノムシーケンシング(WGS)ベースのアプローチやAI・機械学習アルゴリズムの導入により、これまで検出が困難だった微細な異常をより高い感度で捉えることが可能になると考えられています。

さらに、NIPTのコスト削減も重要な課題の一つです。シーケンシング技術のコストは年々低下しており、将来的にはより多くの妊婦がNIPTを受けられるようになり、出生前スクリーニングの標準検査としての地位がさらに確固たるものになると予想されています。日本においては、2013年に臨床研究として始まったNIPTが施設基準の見直しなどを経て対象施設が拡大しており、今後さらにアクセシビリティが向上していくことが期待されます。(1)(7)

seeDNAの新型出生前診断

seeDNAの新型出生前診断(NIPT)は、妊娠初期(10週以降)の母親の血液を使って検査することができるため、安心、安全、安価にお腹の中の赤ちゃんの染色体異常を調べることができる検査です。

年齢制限なし、紹介状も不要なため、手軽に世界最高レベルのNIPT検査を受けることができます。検査項目は基本的な13・18・21トリソミーに加え、性染色体異数性や微小欠失症候群まで幅広くカバーしており、妊婦さんの多様なニーズに応える検査プランを提供しています。

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よくあるご質問

Q1. NIPTはいつから受けられますか?

A. NIPTは妊娠10週目以降から受けることができます。妊娠10週ごろになると、母体血液中の胎児由来セルフリーDNA(cffDNA)の濃度が検査に十分なレベルに達するため、この時期以降が検査可能な目安です。seeDNAでは妊娠10週以降であればいつでも検査をお受けいただけます。

Q2. NIPTの結果が陽性だった場合、どうすればよいですか?

A. NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、陽性結果は確定診断ではありません。陽性判定が出た場合は、羊水検査や絨毛膜検査(CVS)などの確定診断検査を受けることが推奨されます。検査結果の解釈や今後の対応については、遺伝カウンセリングを通じて専門家に相談されることをお勧めします。

Q3. NIPTを受けるのに年齢制限はありますか?

A. seeDNAのNIPTには年齢制限がありません。従来は35歳以上の高齢妊娠の方を対象とする施設もありましたが、seeDNAでは妊娠10週以降であれば年齢を問わず検査をお受けいただけます。紹介状も不要です。

Q4. NIPTで分かる疾患にはどのようなものがありますか?

A. NIPTで主に検出できるのは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の3大トリソミーです。さらに、検査プランによっては性染色体異数性(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)や微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)も検出対象に含まれます。ただし、すべての遺伝的疾患を網羅するものではないことにご留意ください。

Q5. NIPTの検査結果はどのくらいで届きますか?

A. 検体(血液)がラボに届いてから通常6〜8営業日以内に結果をお知らせいたします。検査状況や混雑具合によって多少前後する場合がありますが、迅速な結果報告を心がけております。

Q6. NIPTの偽陽性・偽陰性はどのくらいの確率でありますか?

A. NIPTのダウン症候群(21トリソミー)に対する偽陽性率は0.1%未満と非常に低く、偽陰性率も極めて低い水準です。ただし、胎盤限局性モザイクや母体の染色体異常がある場合には、まれに偽陽性や偽陰性が生じることがあります。そのため、陽性結果が出た際には必ず確定検査を行うことが推奨されます。

Q7. NIPTは双胎妊娠(双子)でも受けられますか?

A. 双胎妊娠でもNIPTを受けることは可能ですが、一部の検査項目では精度に影響が出る場合があります。特に性染色体異常の判定や個々の胎児の判別については制限がある場合がありますので、双胎妊娠の方は事前にご相談ください。

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seeDNA検査部で出生前の胎児DNA鑑定(NGS)担当のTイメージ 著者

出生前の胎児DNA鑑定(NGS)担当T

所属:株式会社seeDNA 検査部

【参考文献】

(1) PMC, 2022年12月
(2) PMC, 2021年1月
(3) PMC, 2023年11月
(4) Australian Family Physician, 2017年3月
(5) 厚生労働省, 1999年2月
(6) DSIJ PRESS, 2021年4月
(7) ヨミドクター(読売新聞), 2026年1月
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